美空ひばりさんの生前、ひばり御殿と呼ばれた都内の自宅には、住み込みで身の回り世話をする3人の女性がいた。

今は「記念館」となっているそのお宅に開館直前の取材でうかがったのは8年前のことだ。驚いたのは、すでに亡くなってから25年たっていたその時も3人の女性が「住み込みスタッフ」としてそこで働いていたことだ。その1人、辻村あさ子さん(当時63歳)に、ひばりさんの好物だったところてんをごちそうになったことを良く覚えている。

女性たちの「ひばり愛」と、3人を「雇用」し続ける長男でひばりプロダクション社長の加藤和也さん(50)のおおようさにも感服した。

3人の平均年齢は当時71歳。間もなく80歳になろうとしているはずの今はどうしているのだろうか。

「ひばりさんへのオマージュ」というアルバムを発売したクラシックの鮫島有美子(70)の公演が先日都内で行われ、会場に訪れた和也さんが、その8年越しの疑問に答えてくれた。

「3人とも青葉台(記念館)にいらっしゃいますよ。実はそのうちお2人は介護が必要になっているんですけどね」

通いのヘルパーさんの助けをかりながら、今も3人は住み慣れたひばり御殿で心安らかな老後を送っているという。

ひばりさんが生きていれば今年5月で85歳。まだまだ元気でいてもおかしくない年齢だ。昨年が三十三回忌だったことを思うと、改めてあまりにも早い死である。

生の姿を取材したのは88年の東京ドーム公演が最後だ。体調が思わしくないと言われながら、完璧に歌いきったステージ上の「大きさ」が焼きついている。だから当時、記念館の玄関にあった等身大(加藤さんによれば155センチ)の本人像の小ささに驚いたことも覚えている。その「差」こそが「女王のオーラ」ということなのだろう。

3人の女性の老後を心身から支えているのもその「大きさ」のような気がしている。【相原斎】