市川海老蔵(43)による「海老蔵歌舞伎」が29日、東京・明治座で開幕した。「実盛物語」では長男堀越勸玄君(8)と共演。56年に海老蔵の祖父11代目市川團十郎さん(当時9代目海老蔵)と父12代目團十郎さん(当時市川夏雄)が、87年に父團十郎さんと海老蔵(当時7代目新之助)が共演しており、34年ぶりに成田屋親子の「実盛物語」での共演が実現した。

知勇を備えた平家の武将実盛を海老蔵が、いずれ実盛と戦うことになる太郎吉を勸玄君が演じた。実盛の器の大きさや、母親を思う太郎吉のけなげさ、実盛が太郎吉を馬に乗せる場面などが見どころだ。

2人が見えをするたびに拍手が起こり、馬上の2人には温かく大きな拍手が送られた。海老蔵演じる実盛が、勸玄君演じる太郎吉の頭をなでると、2人とも顔をほころばせていた。

海老蔵は「勸玄は8歳になりましたので太郎吉をやるにはぎりぎりの年齢。今回が最初で最後になるかもしれませんが、勸玄とともに体現させていただけることはとてもうれしい」と話している。

ほかに新作歌舞伎舞踊「KABUKU」。公演は30日まで。新型コロナウイルスの緊急事態宣言の延長とイベント開催に関する規制緩和を受け、販売途中で売り止めとなったが、約1100人の観客が2人を見守った。

海老蔵は「先が見えないこのご時世だからこそ演劇にある希望というものを追い続けるべきだと思います。歌舞伎役者の『傾(かぶ)く』という精神が希望を照らす起爆剤になる」と前向きに語っている。

6月4~13日は京都南座で上演。