阪神が宿敵巨人を下して、18年ぶりのリーグ制覇を決めた。03年の9月15日を1日上回り球団史上最速V。9月は負けなしで破竹の11連勝で飾った。阪神は6度目リーグ制覇となった。

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岡田は“名将”になった。阪神ファンには大変お待たせしました。素晴らしい優勝だった。愛弟子が宙を舞う姿は感慨深く、年がいもなく目頭が熱くなった。

必ず古巣を再建し、夢をかなえてくれると信じていた。監督は孤独な生きものだ。常に厳しい決断を迫られるから、心身ともにしんどかっただろうが、熟練した手腕を存分に発揮した。

チームスローガン「A・R・E」(Aim Respect Empower)は陽子夫人の発想で、特に伝統を重んじる“R”には阪神で育った岡田の強い気持ちがにじんだ。

とにかく岡田色に終始したペナントレースだったように思う。ブランクを感じさせず、投打に選手の能力を引き出した起用、独特の勝負勘を生かした采配で、相手ベンチを手玉にとった。

岡田らしいのはセンターライン確立に固執したことだ。現役時代に平田と“ノックの雨”で追い込んだ猛練習が結果に表れたから、投手を含めた「守りで攻める」は岡田の体にしみ込んだ真骨頂だった。

的確な戦力の見極めを尽くし、全体像をつかみ、中野の二塁転向で、木浪と二遊間コンビを組ませた。中堅に近本、捕手は梅野と坂本が貢献し、一塁の的になった大山の好守も評価が高い。

適材適所にコマを配した。打順、ポジションを動かすフレキシブル起用が球界の流れだが、大山、佐藤輝ら主力を固定した戦いは安定感があった。

私が3度目の監督だった当時、オリックスにいた岡田の阪神復帰を訴えたが電鉄本社の反対にあって2人でショックを受けた覚えがある。08年に優勝を逃した苦い経験も味わったし、苦労もしてきた。

球界最年長の采配には、一日の長を感じたし、長年勝てない阪神を救った勝負師だった。アレから日本一、そして伝統を継承しながらの常勝チームへ--。「吉田超え」に期待したい。

阪神対巨人 18年ぶりにリーグ優勝を決めナインに胴上げされる阪神岡田監督(撮影・上田博志)
阪神対巨人 18年ぶりにリーグ優勝を決めナインに胴上げされる阪神岡田監督(撮影・上田博志)