荒木由美子さんが語る「介護する覚悟と死ぬ覚悟」義母の壮絶介護を経て芸能界復帰

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荒木由美子さん(女優・タレント/63歳)

 10代でアイドルとしてデビューし、主演ドラマ「燃えろアタック」では小鹿ジュンを演じた荒木由美子さん。歌手・湯原昌幸との結婚直後から義母の介護生活を送り、芸能活動復帰後は講演などで活躍の場を広げ、おしどり夫婦としても知られる。これまでの経験をもとにした荒木由美子流生きる知恵、覚悟……。

■湯原昌幸さんと結婚直後に義母が介護状態に

 10代でデビューし、23歳で湯原昌幸さんと結婚し、その後すぐに湯原のお母さんの介護をするようになりました。その間20年。その介護のピリオドは2003年の20年後のことです。その後、芸能活動を再開してもう20年。こんなに長く仕事が続くとは思ってもいませんでしたね。

 お義母さんの介護についてお話ししますと、20代から40代の、女性にとってはもっとも潤いのある時期に芸能界から離れて専業主婦をやりました。この時は子育てもありましたから、介護とで息をつく暇がないほどの忙しさでした。息抜きも必要でしたが、誰かと会う時間もないほどでした。お義母さん、子供と繰り返しの毎日、そこから抜け出すこともできない。子供とお義母さんを湯原さんに預けて出かけたことは一度もありませんでした。だから支えは湯原さんとの会話だけ。苦しくなった時は「今、15分だけ大丈夫かな。ちょっと話を聞いてほしい」と声をかけました。

 湯原さんはお義母さんのその時の状況を伝えると「そうなんだ」と何も言わないでただゆっくりと話を聞いてくれ、たわいのない会話が大切なんだとつくづく思いましたね。相手に何かを期待しているわけじゃないから、右から左に聞き流してくれてもいい、「大変だよな、本当にありがとう」って言ってくれるだけで、ホッとした気持ちになれました。

 でも、タイミングの悪い時ってあるでしょ。自分がイライラして疲れていて、当たっちゃうような時。そんな時ほど相手も忙しかったり、重い話だったりして、「あなたのお母さんのことなのに」って始まっちゃうわけです。だから、深刻な時ほど、頃合いをみながら「重い話なんだけどいいかな」と笑顔で断ってから話をしました。それが大切だと思います。私の場合は「湯原さん、15分だけお茶しない?」と言ったこともありましたね。

 03年にお義母さんが亡くなって、さて、私はどうする……。20年間のブランクもあるし。仕事を再開するかどうか考え、1年くらい断っていました。なので、息子にはそんな断っている姿しか見せていませんでしたね。

 私としてはまたテレビに出たら、「23歳で引退したんだってね」とか「太った」「シワが……」「老けた」と面白がって言われるに決まっている……そう思っていました。湯原さんにその話をしたら「そんな小さいことにこだわっているのか」と言われ、「小さくない!」って言い返したけど、「10代でデビューして結婚して子供を産んで、おばあちゃんを見送った由美子の姿をそのまま見せればいいんだよ」と言われてハッとしました。「一回やってみて、それで失敗してもいいじゃん。後ろを振り向いたら、俺がいるんだから」って。

 この時期はいろんなことが重なりました。ひとつは介護の本を出す話。「20代から介護をやったといっても40代で介護の本を出すのは早くないか」という声もありました。でも、60代、70代だから介護を経験するというわけじゃないし、「一番リアルな話なら年齢は関係ない」というので「覚悟の介護 介護20年 愛と感動の家族物語」を出すことになりました。

■介護本のきっかけになった「アリババ」創業者ジャック・マーとの出会い

 それを後押しする出会いもあったんです。お義母さんが亡くなって何カ月かして中国の「アリババ」創業者、ジャック・マーさんから何度か連絡をいただき、会うことになりました。マーさんは「燃えろアタック」の大ファンで、中国のテレビ番組に出てほしいという依頼でした。主人公の小鹿ジュンは悩んだ時は逆立ちするのですが、マーさんも仕事などの悩みがあると逆立ちをして考えてたんです。オフィスには逆立ちルームもありました。そんな縁があって広州から帰る飛行機の中で「私の運命が動き出しているのかもしれない」と感じたんですね。「やっぱり本を出そう、仕事を始めよう」と決断することができた。

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