より多くの個人投資家に株主になってもらおうと、株式分割をして投資の最低購入額を引き下げる企業が急増したことが8月15日、分かった。東京証券取引所の集計によると、2023年1〜7月に株式分割を決めた企業は87社に上り、前年同期の46社からほぼ倍増した。来年に少額投資非課税制度(NISA)が拡充されるのを控え、投資環境の整備を進める狙いがある。

 国内株式は100株単位で取引される。株式分割をすれば、最低購入額となる「投資単位」を引き下げられる。大和総研によると、株式分割には株主数を平均約6%増やす効果があるという。東証は昨年10月、投資単位が50万円以上の企業に株式分割を検討するよう要請していた。

 NTTは今年7月に1株を25分割し、40万円を超えていた投資単位が今月15日時点で2万円弱になった。担当者は「若年層を含む幅広い世代に投資してもらいたい」と話している。

 半導体製造装置大手の東京エレクトロンは今年4月に1株を3分割した。分割前に500万円弱だった投資単位は、今月15日時点でも200万円程度と高額のままだ。

 日経平均株価が7月に約33年ぶりの高値水準に上昇し、投資単位がつり上がった企業もある。東証を傘下に持つ日本取引所グループの山道裕己最高経営責任者(CEO)は株式分割について「継続的な働きかけを行いたい」と話す。

 企業には、株主数が増えると株主総会の招集通知など資料の印刷費や郵送費が増えるという課題があるが、大和総研の瀬戸佑基研究員はウェブサイトでの資料開示が進んでいることなどから「コストには低下圧力がかかっている」と指摘した。