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柔道 原沢 久喜選手

2016年リオ五輪決勝で、王者テディ・リネール(フランス)に屈して悔しさが残る銀メダル。あれから5年、東京で頂点に立つためだけに重ねた日々は決して平坦な道のりではなかったが、苦境を乗り越えた経験も糧にして強さを増した原沢選手が、覚悟を決めて金メダルを獲りに行く。

原沢 久喜選手

前回は代表になるまでが無我夢中で、気づくと五輪は目の前でした。若さもあり勢いという点では前回の方があったと思いますが、様々な経験を積み、柔道の幅も視野も広がり、前回より強い自分に成長していると感じます。ですから、東京五輪の代表内定になった時も、目標はあくまで“五輪での優勝"なので、特に喜びはなく、むしろ覚悟が決まりました。1年延期されたことも、「準備期間がさらに増える」とポジティブな思考にすぐに切り替え、自分のやるべきことに集中してきました。


コロナ禍で試合ができないことや、外国人選手との練習の機会がなかったことに不安はありましたが、今ある状況でできることを常に探しながら『鍛錬』を重ねてきました。相手と組み合うことができない分、主に体力トレーニングに時間を割いたので、いい下地づくりができたと思っています。


2021年1月に出場したワールドマスターズ(ドーハ)は、1年以上試合から遠ざかっていたので、海外選手と対戦ができる貴重な機会でしたが、初戦で敗れて、その機会を最大限生かせず非常に残念でした。ただ、そこから今の課題や今後やるべきことが明確に見えたという点では収穫がありました。試合の雰囲気や外国人選手の仕上げ具合も体感でき、より強い覚悟で日々の稽古やトレーニングに取り組まなければと改めて思いました。


4月のグランドスラム・アンタルヤ大会は前回初戦敗退ということで少し慎重になりすぎたかなと思いますが、国内選手との練習ではどうしても得られない、外国人選手のサイズ感や力強さを肌で感じることができ、結果以上の収穫があったと思います。直後のアジア・オセアニア選手権(キルギス)も、中4日のタイトなスケジュールでしたが、その中でも最後に優勝できたことは自信に繋がりました。


本番まであと2ヵ月、より実戦に近い稽古を意識し、早い組手と早い技出しに重点を置いて取り組んでいきます。また受けの強化や返し技にも取り組み、隙のない柔道を作り上げていきます。心技体を充実させ、できることは全てやったと言える状態で大会当日を迎えるつもりです。東京五輪は私の柔道人生の1つの集大成になると考えているので、本番まで悔いのない日々を過ごし、「金メダルを獲る」という覚悟を持って戦い抜きます。

Profile

Hisayoshi HARASAWA ​[はらわさ・ひさよし]

1992年生まれ。山口県出身。早鞆高卒。2015年法学部卒。百五銀行所属。'15年に全日本選手権初優勝ほかグランドスラム(GS)3大会で金メダルを獲得。'16年もGSパリと全日本体重別選手権を制し、100kg超級代表として出場したリオ五輪で銀メダルを獲得。その後オーバートレーニング症候群により試合から遠ざかるが、'18年全日本選手権で復活優勝。'19年はGSデュッセルドルフで3年ぶりの国際大会優勝。'20年2月、これまでの実績が評価されて東京五輪代表に選出された。