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外国ルーツの子へ学習支援 元教師の女性が受験生へ託す思いは

  • 2024年02月29日
外国ルーツの子どもを学びで支援 香川・丸亀の女性の思いとは

香川県に暮らす外国人の数は去年6月時点で過去最高を更新しました。そんな中、家族とともに来日し、日本語がわからないまま学校に通う子どもたちがいます。そうした子どもたちを支援するため、去年丸亀市のNPO法人が学習を支援する教室を開きました。彼らの将来のため支援にあたる元教師の女性の思いとは。

外国ルーツの子の学習を支援「オアシスこくさい教室」

元教師やスクールソーシャルワーカ-が協力して支援する

外国人を親に持つ子どもたちの学びを支援する「オアシスこくさい教室」です。子育て支援を行うNPO法人が去年10月に開きました。子どもたちの出身地はフィリピンやペルーなどさまざま。毎週金曜日の放課後に子どもたちが10人ほどが集まり、日本語の学習や学校の授業で学んだ内容のおさらいをします。

日本語を教える池内道子さん

この教室を運営する、池内道子さんです。池内さんは勉強への苦手意識を減らし、楽しんで学んでもらいたいと、一人ひとりに合った教材を選んだり、参加する子どもたちのレベルに合わせて授業の内容を変更するなど、子どもたちに寄り添った支援をしています。

池内さん

親が日本語を話せても、読めない、書けないためにこの子たちは頼る人がいない。困ったときに相談できる場所として、ここがあるんじゃないかと思います。

教室設置の背景に…香川県の外国人増加

香川県の在留外国人数(出入国在留管理庁 公表資料より)

香川県に暮らす外国人はコロナ禍を経て増えていて、去年は6月末までの半年間で16,319人となり、過去最高を更新しました。丸亀市では入国管理法の改正により、1990年代以降移住する外国人が増えました。造船業などの仕事に就き、家族で暮らす外国人が多く、この30年あまりで丸亀市の外国人の人口はおよそ14倍に増えています。

池内さんは小学校教諭を退職後 外国ルーツの子どもたちの支援を始めた

長年、教師や日本語の講師として、香川県内の小中学校で働いてきた池内さんは、日本語の授業の内容がわからず周囲からのサポートも受けられないことで、進学や就職を諦めざるを得ない子どもたちの姿を目にしてきました。学力以外にも、自分に合った高校の情報が手に入れられなかったり、入学資金の準備が整わないなどの要因はいくつもありました。そんな中で、子どもたちが日本の社会で自立していくためには、学習面で支援し、高校進学に導くことが必要と考えました。

池内さん

高校に進学した子は、その後の高校生活の中でさらに日本語を身につけ、大学や専門学校に行き、就職へと可能性を広げている一方で、高校に行かなかった子は、日本語を必要としない仕事に就くなど、限られたコミュニティの中でしか仕事を得られず、日本の社会とのつながりが薄くなっています。高校進学するのとしないのとでは、将来の幅や選択肢は全く異なります。

池内さんに学んで今がある 夢に向かう男性

両親がフィリピン出身の曽川快翔さんは、小中学校で池内さんに学び県内の高校に進学して、今はビジネス関連の専門学校に通っています。小学生のころクラスになじめず、いつしか勉強についていけなくなってしまいました。小学校6年生のときに池内さんと出会ったことが曽川さんにとって大きなきっかけになったといいます。

曽川さん

小学校で勉強ができていないところもあって、漢字を書くとか文章を書くとか、作文とかもすごく大変で、池内先生に大変お世話になりました。高校進学や卒業のときにも、試験勉強や書類の書き方、出し方まで、池内先生が一番相談しやすくて、助けになりました。

今、曽川さんの将来の夢は航空関連の仕事に就くことです。池内さんは曽川さんの変わりようを実感していました。

池内さん

あの子は変わりました。自分の将来を考えながら、今を頑張っていると思います。

簡単にはいかない外国ルーツの子の受験勉強

カリエド プリンセスさん

小学4年生のときに家族でフィリピンから来日したカリエド・プリンセスさんです。家では日本語を全く使わずに生活しています。中学3年生になり、高校進学を目指しこの冬試験に臨みます。オアシスこくさい教室は毎週欠かすことなく熱心に通っています。

日本語が話せても、問題の意味を十分理解できるとは限りません。受験勉強には日常会話でなじみのない言葉が次々と現れます。「絶対値」といった授業などで使われる言葉は「学習言語」といい、習得には時間がかかるといわれています。池内さんは丁寧に言葉を尽くして、問題の意味を理解するという最初のハードルを一緒に乗り越えます。

池内さん

絶対値はゼロからの距離。プラス、マイナスは関係ない。

「日本で活躍してほしい」池内さんの願い

オアシスこくさい教室ではこの冬、7人の受験生が高校入試に臨みました。結果は全員合格。プリンセスさんはほっとした様子で笑みを浮かべ、池内さんに合格を報告しました。

プリンセスさん

うれしいです。高校で友達いっぱいできる。

池内さんは、進学後の生徒たちに社会で活躍する道を自分で切り開いていってほしいと願っています。そのためには、池内さんも卒業した生徒たちをいつでも迎え入れ、サポートをしていくつもりです。

池内さん

無事生徒たちが合格して、まずはひとつ乗り越えたかなと。
彼らが独り立ちして日本の社会でちゃんと生きていって税金も納めて、そういうふうになるまでは、支援は必要だと思っているので、困ったときには助ける。助けるまではいかないにしても、力になれるようにしていきたい。

  • 相良 アンナ

    高松放送局 カメラマン

    相良 アンナ

    2020年入局。自身も外国人の母を持つ。

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