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映画「ら・かんぱねら」 監督 鈴木一美さん インタビュー

佐賀ののり養殖業の男性をモデルにした映画で初めて監督を務める鈴木一美さんにインタビュー。
  • 2024年02月20日

のり養殖業を営みながら、10年以上前から独学で練習を重ね、リストの難曲と言われる「ラ・カンパネラ」を習得した徳永義昭さんをモデルに、佐賀県を舞台にした映画が制作されています。
タイトルは『ら・かんぱねら』。メガホンを取るのは、長年映画プロデューサーを務めてきた鈴木一美さんです。監督として映画を撮るのは今回が初めてという鈴木さんに、映画に込める思いを伺いました。

着ているジャンパーはオリジナル!
猪原アナ

映画の撮影は先月(2024年1月)から始まっていると伺いました。
有明海の様子はいかがでしたか?

鈴木一美
監督

のり漁というのが、丁寧にこまめにやっていかないといけない仕事だというのが分かりました。季節のこともあって、俳優さんがいない部分でまずしっかり実景撮りということで、のり産業の部分を撮りました。

有明海ののり養殖の撮影する鈴木さん(左)
泥の海が質の高いのりを育むと実感
猪原アナ

まずは舞台の背景となる基本の部分を撮っているんですね。

鈴木一美監督

のり養殖は季節によって作業が限られます。いま撮っておかないと1年延びてしまいますので。

映画は、ことし(2024年)の秋、全国での公開を予定しています。ビジュアルポスターがこちらです。

平仮名のタイトルは、ミステリー?
猪原アナ

映画のタイトルは、平仮名で『ら・かんぱねら』。このイラストは佐賀県ならではの意味が込められているんですよね?

鈴木一美監督

のりに鍵盤を入れてデザインしてもらいました。映画の旗印にしようかなと思っています。

猪原アナ

グランドピアノかと思ったら、佐賀県の有明海ののりでもあるんですね。
タイトルも、当初は違ったそうですね。

鈴木一美監督

『夢があれば』という、希望を前面に出したタイトルにしたかったんですけれども、打ち合わせで、古い!昭和だ!ということで全面拒否されまして『ら・かんぱねら』に変わったんです。
平仮名にしたということで、ちょっとしたミステリーにして、これは音楽のことを知らない人からすれば「何だ?」ということですが、実は...ということで説明していく流れにしたいと思っています。

猪原アナ

今回は、3つの質問に答えていただきます。

ここが聞きたい!
猪原アナ

1つ目です。なぜ佐賀を舞台に徳永さんをモデルにした映画を撮ろうと思われたんですか?

モデルとなった徳永義昭さん
鈴木一美監督

のり漁師がクラシックのピアノを弾くという、それも最難関の曲を弾く、弾き切ったということですよね。誰にでもできるようでできない実話ということで、これ自体が映画のモデルにはもってこいと、直感的に思いました。そこから始まっています。

猪原アナ

徳永さんの姿勢に共鳴されたということですか?

鈴木一美監督

完璧に弾けるようになるということは、その間にどれだけの練習があって、過酷なのり漁もちゃんとやった上でやり切ったということは、尊敬するもの以外の何ものでもないと。
それは映画の主人公としてはもってこいということで、徳永さんがやったことを記録したいと強く思いました。

鈴木さんは、これまでおよそ40年間、映画やドラマのプロデューサーとして作品作りに携わってこられました。監督としてメガホンを取るのは初めてです。

猪原アナ

どうして、今回は監督としてご自身で映画を撮ろうと思われたんですか?

鈴木一美監督

これまでプロデューサーとしていろいろ企画・制作してきたんですけれども、徳永さんに関しては、僕以外に他の監督には渡したくない、自分で撮って、その中で佐賀県というのを一回描いてみたいという思いから、監督を名乗り出たという次第です。

猪原アナ

佐賀の人からしたら嬉しいお話です。

鈴木一美監督

そこに住んで作るというのが僕の今までの主義でやってきてるものですから、当然今回も半年前から佐賀県に住んで、支援する会の皆さんと一緒に、この映画の準備を進めています。

猪原アナ

2つ目の質問です。佐賀の印象はどうですか?

鈴木一美監督

私は秋田県出身なんですが、小学校の社会の時間に、九州の地図は、佐賀県の左に長崎県があって、右に福岡県があって、下に熊本県があると習いました。
地図ではわかるんですけど、実際佐賀県の漁港に降り立ってみると、目の前には長崎県の雲仙岳が見える。その前には有明海がある。この位置関係は、自分の想像と実際の風景がまるっきり落差がある衝撃的な地形でした。
ましてや有明海という海が透明度の高いきれいな海だと思っていたら、泥の海だった。ところがその泥の海がのりを作るのに最適な海だということがとても面白いし、佐賀県、有明海沿岸の人たちにとっては常識でしょうけれども、多分ほとんどの人が知らない有明の海のことを映画で紹介してみたいなと思っています。

猪原アナ

映画の視点、そして県外からの視点というところで、佐賀の魅力を感じていただけたんですね。
作品を作るときは舞台となる土地に移り住むというのはどうしてなんでしょうか。

鈴木一美監督

その土地の文化や歴史、住んでいる人の息づかいなど実像や背景をできるだけ深く知らないと、良い映画は撮れないと思うんです。今回も早めに佐賀に入って良かったです。

猪原アナ

3つ目の質問です。どんな映画にしたいですか?

鈴木一美監督

私はこれまでホームドラマの中での家族愛をテーマに映画を制作してきました。今回に関しては夫婦愛、その夫婦の絆の中に親子3代の家業の継続とか、友情とか様々な関係がある。その中で葛藤する主人公一人がピアノを弾き切ったのではなくて、支える妻がいて、それを見てる子がいて、見守る父がいて、見守る人と見守られる人との関係をホームドラマの中で描いてみたいということが一番の思いです。

猪原アナ

最後に、意気込みを聞かせて下さい。

鈴木一美監督

この題材自体がとても素晴らしいし、佐賀県の風光明媚を撮るわけじゃなくて、現実の豊かな漁業と豊かな有明海の中で働く人たちを映します。
「映画の寿命10年説」というのが自分の中であるんですが、未知の人たちに、ホームドラマという形で、全国津々浦々まで、映画館を含めて、そしてゆくゆくは佐賀県の小学校・中学校・高校といった学校上映も含めて、映画を作るだけじゃなくて上映まで関わっていきたいと思っています。

猪原アナ

息の長い映画になるといいですね。

鈴木一美監督

長寿映画にしたいと思っています。

インタビューに先立ち、取材のため「映画『ら・かんぱねら』を支援する会」の事務所に伺いました。
この先のスケジュールが書き込まれたホワイトボードには予定がびっしり書かれていて、いよいよ本格的に撮影が始まるんだなという雰囲気がびりびりと伝わってきました。
元来、映画やドラマが大好きな私。『ら・かんぱねら』の取材だというのに、山田洋二監督の『男はつらいよ』や向田邦子原作のNHKドラマ『阿修羅のごとく』などの名作の話に脱線し、かなり盛り上がりました。
映画のキャストも発表され、物語の鍵となる女性役は浅丘ルリ子さんに決まっています。浅丘ルリ子さんといえば、寅さんのマドンナの代表格。鈴木監督が全てのキャスティングにこだわっているのがよくわかるお話も聞けました。
佐賀県がどんな風にホームドラマとして描かれるのか、とても楽しみです。映画『ら・かんぱねら』はことしの秋に全国公開される予定です。ご期待ください!

  • 猪原智紀

    佐賀放送局アナウンサー

    猪原智紀

    映画などエンタメなくして
    生きていけません。

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