ページの本文へ

WEBニュース特集 愛媛インサイト

  1. NHK松山
  2. WEBニュース特集 愛媛インサイト
  3. 「えひめふる里山歩き」その(3)経ヶ森

「えひめふる里山歩き」その(3)経ヶ森

  • 2023年07月04日

愛媛県内の身近な里山の魅力を紹介するシリーズ「えひめふる里山歩き」。3回目は松山市の経ヶ森です。古くは飛鳥時代にまでさかのぼるという歴史ある道を歩いてきました。 

(NHK松山放送局 松田利仁亜)

経ヶ森は、標高203m。松山市中心部からみると、前回登った小富士の方に目がいってしまいがちですが、その右に2つピークがあり、並んだ高い方の山が経ヶ森です。今回は、松山観光港をスタートし、経ヶ森を経てもう1つのピークである、岩子山へ。その後、四国霊場52番札所太山寺を目指します。

案内してくださるのは、仲矢文和さん、74歳。
生まれも育ちも経ヶ森のふもとの高浜地区で、地区のまちづくり協議会副会長を務めています。子どものころからこの山に親しんできて、さらに趣味のトライアスロンのトレーニングの一環として、これまで数えきれないほど登ってきたそうです。

まず仲矢さんが紹介してくれたのは「太山寺高浜道由来」の碑。
ここから太山寺へと続く道は、由来碑によると西暦586年、豊後の国の真野長者が航行中に嵐にあったものの、経ヶ森から光明が差してきたおかげで難を逃れ、そのお礼に太山寺のお堂を一夜にして建てた際の資材を運んだという伝説があるそう。その道をこれから歩きます。

歩き始めてすぐ。住宅の間に石碑がありました。太山寺と記してあります。

仲矢さん

「遍路道がずっと太山寺まであったので。高浜港の開港は明治39年ですから、結構中国地方の方も太山寺から回られたりとか、結構この遍路道は昔から活用されたみたいです」

この道は、お遍路の始まりの道でもあるそうなんです。今は歩く人が減ったものの、仲矢さん、今も小倉からのフェリーで九州からやってきたお遍路さんに尋ねられ、道を案内することもあるんだとか。

歴史ある遍路道を進むと、海越しに興居島が見えました。少し上がるだけでもいい景色です。しかし5年前、その風景を一変する出来事が。

仲矢さん

「5年前、集中豪雨のときは(この下を通る)高浜トンネルが土砂で通行止めになった。私のおふくろが当時93歳だったんやけど、こんなん生まれて初めてやいうて」

西日本豪雨で、高浜地区では約150棟の住宅やかんきつ畑に大きな被害が出ました。その影響は遍路道にもおよび、土砂崩れで道が流され今なお復旧していない所もあります。
う回路を進みますが、この時期草木が生い茂り、道を覆わんばかりです。

ここで山歩きのワンポイント。
これからの暑い時期、少しでも涼しさを求めたいところですが、登山では長袖・長ズボンが基本です!

経ヶ森の道中では「とげのある植物」も見かけました。
茂みを歩く際は注意が必要です。

日本山岳ガイド協会の武川俊二さんによると、

●登山は草木や岩に接触しやすい
→皮膚を傷つけやすくなる ウルシなど毒性の植物に触れるとかぶれる恐れも
●高山になると紫外線も強くなる
→思わぬ日焼けをすることも 
●ハチやブヨ・カ・ダニ・毒性のあるガなどから身を守る効果

武川さん

夏山には明るい色の服が良いでしょう。黒だとカやハチなどを寄せ付け、ダニなどがついた際に発見しにくくなってしまいます」

ちなみに私は半袖Tシャツにアームカバーを着用しました。長袖より涼しく、おすすめです。

元の遍路道に合流。

人の手が加えられて、周囲より一段低くなっている道を歩くと、往時の人の行き来がしのばれます。

残り200メートルの看板を過ぎ、急斜面を登ると経ヶ森山頂です。

十一面観音像が祭られています。
奈良時代、聖武天皇が写したお経をこの山頂に埋めたことが経ヶ森の由来だそうです。

この観音様の裏側からは松山の堀江海岸が見えました。葉の生い茂る夏場は厳しいのですが、冬の時期には360度視界が広がり、いい眺めが広がるそうです。

「さらに眺めのいい場所がある」という仲矢さんのおすすめに従って、岩子山へ。
10分ほど歩くと、松山市内が一望に見渡せました。

四国一の人口を誇る松山。この街に多くの人が暮らしているんだなと改めて実感しました。

そして、最終目的地、四国霊場52番札所、太山寺です。

お参りするお遍路さんの姿もありました。私は初めて訪れたのですが、1305年に建てられた本堂は、国宝に指定されているだけあり、実に風格ある立派なお堂でした。

仲矢さん

「高浜地域言ったらその、前はね自然に囲まれた海があって、で後ろは、山ですけど、こういう歴史ある太山寺遍路道があるということは、高浜にとって、よその地域に自慢できるすごい宝ですよね」

一句詠んでみました。

梅雨晴れに私も刻む遍路道

梅雨の晴れ間に遍路道を歩き、かつて多くの人がここを歩いてそれが道になった、それを感じながら、今私も道を造るひとつの要素になっているのだなぁ。という心境を詠んだつもりです。

経ヶ森(きょうがもり)について

所在地:愛媛県松山市
標高 :203m
備考:
今回は松山観光港から登り始めましたが、太山寺側や伊予鉄道高浜駅、または梅津寺からのルートもあります。
また、経ヶ森までのルートのうち、草木が茂って道が不明瞭な部分もあるのでお気を付けてください。太山寺から伊予鉄道三津駅やJR三津浜駅までバスも出ています。


「えひめふる里山歩き」のコーナーでは皆さんおすすめの里山の情報を募集しています。
その理由と、あれば画像も下記のリンクからお送りください。

  • 松田利仁亜

    松田利仁亜

    2002年入局。2014-2017年以来2度目の松山局勤務。公私共にさらに愛媛の良いところを探し求めています。 夏には松野町でキャニオニングを初体験、気持ちよかったです。

ページトップに戻る