いま、若い世代を中心に一人の映画監督に注目が集まっている。没後10年を迎えた岡本喜八。戦時下に生きる人々の生きざまを描くことにこだわり続け『肉弾』や『独立愚連隊』が、1960年代若い世代に圧倒的な支持を受けた。今年、各地で、岡本を特集した上映会が開催され、明治大学では学生が自主上映会を主催するなどの動きが広がっている。「声高に反戦を訴えずに、静かにユーモアを交えながら描いていることがリアル」などと若者は受け止めている。こうした中、ことし自宅から、未公開手記が発見された。空襲によって同僚の兵士が目の前で死ぬ姿を目の当たりにした岡本が、“庶民の目線”で戦争を描くことを決意した原点が記されていた。軍幹部や政治家の終戦に至る日々を描いて大ヒットした『日本の一番長い日』(1967年)が「庶民の出てこない“大作”だった」と自省し『肉弾』制作を決意。“青年は二度とそんな小銃弾になってはならない”“青春の色は多彩な色でなければならない”と若者が兵士として駆り出される戦争の理不尽さを訴えようとしていたのだ。若者たちから再び注目される岡本喜八と現代へのメッセージをひもとく。
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