台本は全部燃やしてしまった「もういつお迎えがきたっていい」
若林さんには22歳を筆頭に合計7人の孫がいる。話題が孫に及ぶと、若林さんの目尻が下がった。
「一番下の子はまだ5歳。ひたすらかわいい! 何にもしなくてもいい。そばで見ているだけで幸せな気分になる。孫の存在が、私が今、生きている一番の喜びですね」
若林さんは東京都下のマンションに夫婦2人で暮らしている。最近は日課の散歩に加え、終活を始めていることを打ち明けた。
「引っ越しが好きで、これまで千葉のイノシシが出るような山奥や長野県の蓼科、静岡の三ヶ日や伊豆などいろんなところに住んできました。自然豊かなところが好きなんです。庭がある家に住んでいたときは庭木を剪定するのが趣味でしたが、今は庭もなく、毎日、とりたてて言うほどのことはしていませんよ(笑)。5000~6000歩ウォーキングをするくらいです。
ただ、荷物の整理はずいぶんしました。昔のブロマイドや台本は全部燃しました。オシャレが大好きだから洋服をたくさん持っていましたが、バーバリーのコートなどは『赤い霊柩車』シリーズで部下役だった松永(博史)クンにあげたりして。まだ四畳半の部屋がいっぱいになるぐらい残っているから、徐々に始末しないと。私が死んだら、子どもらは誰も見ないでしょ。子どもにとって親の遺したものなんて、そういうものだし、それでいい。死ぬのは怖くない。もう、いつお迎えがきたっていいと思っています。女房とどっちが先かなぁ……最後まで看てやらないといけないな、と思っていますよ」
そう、笑顔で語った若林さん。赤い霊柩車のお世話になるのはまだ早い。
後編では、30年刑事役で出演したドラマ『赤い霊柩車』シリーズへの思い、三島由紀夫との意外な関係、60年の俳優人生について語っている。
(後編に続く)
取材・文/中野裕子(ジャーナリスト) 撮影/山口比佐夫
(告知)7月8日(土)、千葉市文化センター3階アートホールで視覚障害者支援チャリティー公演『声の花束 吉成庸子作品朗読と歌の会2023』の舞台に立つ。