芸能

津川雅彦さん、溝口健二監督に5歳で出会ったときの思い出

存在感がある役者だった(撮影/藤岡雅樹)

 映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづった週刊ポスト連載『役者は言葉でできている』。今回は、先日亡くなった俳優の津川雅彦さんが、子役として出会った溝口健二監督について語った言葉を紹介する。

 * * *
 先日、津川雅彦が亡くなられた。本連載には昨年ご登場いただいているが、その取材は大いに盛り上がり、連載史上で最も長時間のインタビューとなった。そのため、未掲載のエピソードも多い。そこで今回と次回はその中の一部をご紹介することで、追悼の意を表したい。

 津川は一九四〇年生まれ。日本で最初の映画監督である祖父・牧野省三をはじめ、親族の多くに役者や映画監督をもつ芸能一家に育つ。当人も五歳で子役としてデビュー、五四年には巨匠・溝口健二監督の『山椒太夫』に出演している。

「溝口監督は子どもの扱いに慣れてないのか、とにかく厳しかったんだ。覚えてるのは、たき火にあたっているシーンだな。

 田中絹代さんと浪花千栄子さん、それに姉役の人と四人で火を囲んで談笑をしているって芝居で、僕は背中しか映っていないんだけどさ。そうしたら監督が『加藤君(津川の本名)、笑いなさい』とおっしゃるんだよ。それから監督は『反射しなさい』ともおっしゃってきて、これもどういうことか分からない。

 そしたら、田中先生が『溝口先生が思っている想いを俳優は反射して表現するものなんだ』と説明くださったんだ。でも、子どもにそんなことを言ったって分からないよね。監督が言いたかったのは、『肩が笑ってない』ということなんだよ。顔が映っていないから、肩で『笑っている』ことを表現しないといけない。でも、どうしたら肩で笑えるのか分からなかった。

 そしたら、また田中先生が助けてくれてね。『マー坊ね、はっはっはっはって笑うと、肩が動くでしょう。そういうふうに肩を動かせばいいのよ』って教えてくれたんだよ」

関連キーワード

関連記事

トピックス

氷川きよしの白系私服姿
【全文公開】氷川きよし、“独立金3億円”の再出発「60才になってズンドコは歌いたくない」事務所と考え方にズレ 直撃には「話さないように言われてるの」
女性セブン
AKB48の元メンバー・篠田麻里子(ドラマ公式Xより)
【完全復帰へ一直線】不倫妻役の体当たり演技で話題の篠田麻里子 ベージュニットで登場した渋谷の夜
NEWSポストセブン
5月場所
波乱の5月場所初日、向正面に「溜席の着物美人」の姿が! 本人が語った溜席の観戦マナー「正座で背筋を伸ばして見てもらいたい」
NEWSポストセブン
”うめつば”の愛称で親しまれた梅田直樹さん(41)と益若つばささん(38)
《益若つばさの元夫・梅田直樹の今》恋人とは「お別れしました」本人が語った新生活と「元妻との関係」
NEWSポストセブン
パリ五輪への出場意思を明言した大坂なおみ(時事通信フォト)
【パリ五輪出場に意欲】産休ブランクから復帰の大坂なおみ、米国での「有給育休制度の導入」を訴える活動で幼子を持つ親の希望に
週刊ポスト
被害男性は生前、社長と揉めていたという
【青森県七戸町死体遺棄事件】近隣住民が見ていた被害者男性が乗る“トラックの謎” 逮捕の社長は「赤いチェイサーに日本刀」
NEWSポストセブン
学習院初等科時代から山本さん(右)と共にチェロを演奏され来た(写真は2017年4月、東京・豊島区。写真/JMPA)
愛子さま、早逝の親友チェリストの「追悼コンサート」をご鑑賞 ステージには木村拓哉の長女Cocomiの姿
女性セブン
被害者の平澤俊乃さん、和久井学容疑者
《新宿タワマン刺殺》「シャンパン連発」上野のキャバクラで働いた被害女性、殺害の1か月前にSNSで意味深発言「今まで男もお金も私を幸せにしなかった」
NEWSポストセブン
NHK次期エースの林田アナ。離婚していたことがわかった
《NHK林田アナの離婚真相》「1泊2980円のネカフェに寝泊まり」元旦那のあだ名は「社長」理想とはかけ離れた夫婦生活「同僚の言葉に涙」
NEWSポストセブン
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
大谷翔平の妻・真美子さんを待つ“奥さま会”の習わし 食事会では“最も年俸が高い選手の妻”が全額支払い、夫の活躍による厳しいマウンティングも
女性セブン
広末涼子と鳥羽シェフ
【幸せオーラ満開の姿】広末涼子、交際は順調 鳥羽周作シェフの誕生日に子供たちと庶民派中華でパーティー
女性セブン
林田理沙アナ。離婚していたことがわかった(NHK公式HPより)
「ホテルやネカフェを転々」NHK・林田理沙アナ、一般男性と離婚していた「局内でも心配の声あがる」
NEWSポストセブン