アホでもヘボでもありません!【学芸員自然と歴史のたより】

 アーボヘーボをご存じですか?漢字では粟穂稗穂と書きます。「あわほひえほ」がなまって、アーボヘーボになったんですね。どんなものなのかということで、写真をご覧ください。
 

アーボヘーボ(横須賀市衣笠)

 
 不思議な形をしていますが、これは粟や稗が実っている様子を表しています。それではなぜこんなことをするのでしょうか?それはアーボヘーボを行う時期に関係します。
アーボヘーボは、1月14日・15日の小正月(こしょうがつ)に見られる行事で、予祝儀礼(よしゅくぎれい)とも呼ばれます。先ほど粟や稗が実っている様子といいましたが、それを予め表現してお祝いし、現実になることを願ったのです。畑に飾ったアーボヘーボは、「17日の風に当てるな」とされ、16日のうちに片づけてしまったようです。
 アーボヘーボの材料には、ヌルデやニワトコの木を使いました。ヌルデはカツノキとも呼ばれ、正月にヌルデで作った箸をカツバシといい、雑煮を食べるときに使ったり、神棚に備えたりしました。なぜ、アーボヘーボやカツバシなど正月に作るものにヌルデやニワトコを使うのかは諸説あります。ヌルデもニワトコも成長が早いので、その生命力にあやかろうとしたのかもしれません。一見すると「何をやっているんだろう、なんでそんなことを…」と思ってしまうことも、理由や理屈が隠れていることがあります。
 三浦半島でもアーボヘーボは昭和40年ころまで行われていました。しかし、三浦半島の海沿いにはほとんど見られず、内陸部に多く見られました。その理由は定かではありませんが、海沿いは生業のなかで漁撈が占める割合が高いことから、アーボヘーボは農事に関する予祝儀礼であったのではないかと考えられます。三浦半島のアーボヘーボを網羅的に調査したのは、三浦半島の考古学を牽引した赤星直忠氏です。赤星氏は三浦半島の民俗調査も行っており、その成果は当館の初期の研究報告にも「赤橋尚太郎」名義で掲載されています。今回お話しした内容は、赤星氏の調査記録をもとにしています。詳しくは『横須賀市博物館研究報告(人文科学)65号』(2021年3月発行予定)をご覧ください。また、当館にもアーボヘーボが展示されています。(民俗学担当:瀬川)

 

博物館で展示されているアーボヘーボ

 

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