作品紹介
第5章
「睡蓮」とジヴェルニーの庭
Water-Lilies and the Garden in Giverny
ジヴェルニーの自宅はモネの創作にとって最大の着想源となりました。「花の庭」と「水の庭」を本格的に整備し、花壇の草花や、睡蓮のある池を描いています。次第に制作の大半は〈睡蓮〉となり、池の水面に映る色と光の抽象的なハーモニーが次々に誕生します。晩年のモネは、後妻のアリスや家族に支えられ、視覚障害に悩みながらも86歳で亡くなるまで制作を続けました。本章ではモネがジヴェルニーで描いた村の様子や、モネが愛した庭のさまざまな情景をご紹介します。
睡蓮
ジヴェルニーでモネが情熱を注いだのは絵の制作とガーデニングでした。池の水面を間近に捉え、まるで大画面の一部のような作品です。赤みを帯びた白い睡蓮が豊かな花弁を広げ、切れ込みのある円い葉とともに池に浮かんでいます。クローズアップした構図を素早く粗い筆致で捉え、青や紫などさまざまな色を使って活き活きと描かれています。
ジヴェルニーの風景、雪の効果
睡蓮の池
睡蓮の池の片隅
睡蓮の池
庭の樹々や空の雲が、まるで鏡像のように池の水面に映し出され、その色と形が睡蓮の花や葉と交ざり合い、明るく暖かな色彩の見事な調和が構成されています。遠景になるほど光の量は増し、池の片隅に立って制作するモネの眼と、絵を見る私たちの眼が重なります。視覚障害を患いながらも制作に打ち込んでいた晩年の大作の一つです。