このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー
はじめよう 竹のある暮らし

1 身近で不思議なタケの生態に迫る!

『古事記』や『竹取物語』にも記されているように、古来より、竹は日本人にとって身近な植物であり、さまざまな用途に利用されてきました。ここでは生物としての「タケ」に焦点を当て、国内で生育しているタケの種類や特徴、さらにはタケの不思議な生態に迫ります。

写真:竹林

タケはどんな植物?

日本国内にはどのような種類のタケが生育しているのでしょうか。タケや竹林を研究対象にしている東京大学大学院農学生命科学研究科の久本洋子先生にお話を伺いました。

タケの生態

タケはイネ科タケ亜科に属する常緑性の多年生植物です。日本に生育するタケ亜科(タケ類とササ類)の植物は約130種類、そのうちタケ類は種としては20種ほど、変種・品種なども含めると50種ほどではないかといわれています。タケには草のような特徴もあれば樹木のような特徴もあり、草とも木とも違う生態を持っています。
毎年地下茎の節にある芽からタケノコが生じ、半年もすると立派な若竹に成長します。樹木で幹に当たる部分を「稈(かん)」と呼びますが、稈には節があり、中は空洞になっています。著しく成長する稈同様、地下茎も生命力が旺盛で、横にぐんぐん伸長していきます。最大で1年に5メートルから8メートルも地下茎が伸びた記録があるほど、タケは繁殖力が強いことが特徴です。

イラスト:タケの生態

聞いてみたい!「タケの不思議」

Q.タケとササの違いとは?

A.タケノコの成長に伴い、稈から皮が自然と脱落するのがタケで、成長しても稈に皮が張りついたまま残っているのがササといわれています。稈の高さでいうと10メートルまで大きくなるササはありませんが、高さ5メートルを超える種類もあります。

Q.七夕飾りはササ?

A.「笹の葉さらさら」という歌詞どおりなら、七夕飾りはササということになりますが、実際には稈の先の細い部分を使っていることがほとんどだそうです。部位として枝が細く、葉がたくさんついているため、「ササ」のように見えたことから、「ササ」と呼んでいるものと思われます。

Q.タケ類の材には、どんな特徴がある?

A.横方向には柔軟性があってしなやかですが、縦方向には割裂性があり、割れやすいのが特徴です。この特徴を活かして、さまざまな竹製品が作られています。

Q.タケに「節」があるのはなぜ?

A.タケがイネ科の植物であるためです。イネ科の植物には茎に節があります。また、イネ科の中でもタケは木のように硬くなるのが特徴です。

Q.なぜタケは成長が早い?

A.タケには節ごとに、細胞が分裂して成長する「成長点」と呼ばれる部分があります。一般の樹木だと成長点は根や茎の先端にしかありません。ところがタケはすべての節に成長点があるため、仮に節が40個あってそれぞれの成長点が1日に1センチメートルずつ伸びれば、稈は1日で一気に40センチメートル成長することになります。これがタケの成長が早い理由です。

Q.竹藪にほかの木が生えないのはなぜ?

A.タケは成長が早いため1年で10メートルくらい伸びることがあります。そうなると枝葉がうっそうとして地面に日光が届きにくくなり、日光を必要とするほかの樹木はなかなか生育することができないというわけです。

タケの種類、いろいろ

日本に生育している代表的な種は、マダケ、モウソウチク、ハチクの3種類です。いずれも成長は早く、マダケ、モウソウチクは1日に1メートル以上伸びたという記録があります。マダケとハチクは古くから日本に自生していたと考えられています。モウソウチクの導入時期については諸説ありますが、1736年に中国から鹿児島に導入されたものが株分けされ、全国に広がったとされています。

代表的な3種類

マダケ(真竹、苦竹)

稈は高さ20メートル、直径15センチメートルにもなる大型種です。節間が長く通直(樹幹の元と末の大きさの差が少なく真っ直ぐな形状)で弾力性にも富んでいるため、工芸品や建築材料など幅広い用途に用いられています。マダケのタケノコは春季が旬ですが、苦みやあくが強いため、市場に出回ることは多くありません。

写真:マダケ
写真:マダケの節

マダケの節には環が2つあり、環が1つのモウソウチクとは節で見分けることができます。

モウソウチク(孟宗竹)

中国が原産で、日本には江戸時代に渡来したとされています。稈は高さ20メートル、直径は20センチメートルにもなる大型種で、国内最大のタケといわれます。節の環は1つで節間は比較的短く、材質が肉厚で硬いのが特徴です。一般に春にタケノコ掘りを楽しむのはこの種類のもので「春の味覚の王様」といわれています。

写真:モウソウチク
写真:モウソウチクの節

モウソウチクの節にある環は1つ。材質が硬いため、古くからさまざまな資材として利用されてきました。

ハチク(淡竹、甘竹)

高さ20メートル、直径15センチメートルにもなる大型種。マダケに似ていますが、表皮全体が粉をふいているように白っぽく見えるのが特徴で、耐寒性があります。材質は柔らかく、細かく割りやすいことから茶せんや提灯、簾などに利用されています。

写真:ハチク
写真:ハチク

ハチクのタケノコはえぐ味がなく美味といわれていますが、店頭で見かけることは少ないようです。(写真提供:久本洋子先生、三ツ又沼ビオトープにて撮影)

こんな種類もある!特徴のあるタケたち

キッコウチク(亀甲竹)

モウソウチクの変種で、上下の節の一部が接合して、亀の甲や仏様の顔のように見えることから「亀甲竹」、「仏面竹」と呼ばれます。庭園の植栽や飾り床柱、花器などとして珍重されています。

写真:キッコウチク

(富士竹類植物園にて撮影)

キンメイチク(金明竹、あるいは錦明竹)

マダケの園芸品種。枝が伸びる稈の窪んだ部分「芽溝部」に緑の縦縞がありますが、全体的には鮮やかな黄金色に見えることから、「金明竹(あるいは錦明竹)」と名付けられたといわれています。

写真:キンメイチク

(森林総合研究所樹木園にて撮影)

クロチク(黒竹)

2年目以降は表皮や地下茎が黒く変色するため、この名があります。稈の美しさからさまざまな竹細工や観賞用として好まれています。

写真:クロチク

(森林総合研究所樹木園にて撮影)

ホテイチク(布袋竹)

稈の下方部では節と節の間がつまって、節の下側が膨れて布袋様のお腹のように見えることから「布袋竹」と呼ばれています。しなりがあり、折れにくいことから釣り竿に利用されてきました。

写真:ホテイチク

(東京大学千葉演習林にて撮影)

シホウチク(四方竹)

秋にタケノコが生える品種。稈の形が方形状で、横に切ると断面が四角く、しかも下方部の節にはとがった気根(幹から空中に伸びた根)が多数あるなどの外観が独特なため、庭園材料として珍重されています。

写真:シホウチク

(東京大学千葉演習林にて撮影)

「特徴のあるタケたち」写真提供:久本 洋子先生

タケの開花研究の最前線

数十年から100年に一度の頻度でしか開花しないタケの開花の仕組みは、現在も謎に包まれています。タケの開花に関する研究に取り組む久本洋子先生にお話を伺いました。

タケの花の不思議

写真:ハチクの花

120年ぶりに咲いたハチクの花(撮影:久本洋子先生)

タケの開花メカニズムはいまだに謎に包まれています。モウソウチクのように開花した後に地下茎まで枯れるタケもありますが、ハチクのように地下茎は枯れないものもかなりあり、地上部分は枯死しても再び地下からタケノコが出てくるのだそうです。
モウソウチクは花が咲けば種(たね)をつくるのですが、花はめったに咲きません。日本に導入されて以来、全国的に開花したという記録はありません。ただ小さな株が開花した事例はいくつか報告されています。開花後、その株は死んでしまいましたが、種(たね)ができ、それが発芽して新しい株になったということです。
マダケとハチクの開花は120年周期といわれています。文献によると、マダケは1950年から1960年頃に全国的に開花しています。その開花後マダケの竹林が一斉に枯死したため竹材が不足し、プラスチック製品に置き換わったといわれています。マダケとハチクは開花しても種(たね)ができず、代わりにタケノコが伸びることで、竹林が再生されるのです。

相次ぐハチクの開花情報

ハチクは1908年前後に開花したことがわかっています。地上部分の稈はいったん枯死しましたが、地下茎からまたタケノコが生まれて再生しました。120年周期の開花だとすれば、全国的な開花ピークは2028年頃といわれてきましたが、竹林ごとに多少のズレがあるため、10年ほど前からすでに開花が始まっているといいます。タケの一斉開花はめったにない現象であるため、研究の機会を得るのも困難です。久本先生が関わっている、タケ研究者などで構成される竹林景観ネットワークでは、開花が確認された地域や年、開花の規模などさまざまなタケの開花情報を収集しており、120年ぶりのハチクの一斉開花というこの貴重な機会を逃さずに、記録を残し、開花の研究を行っています。

写真:開花したハチクの竹林

2018年に開花したハチクの竹林(撮影:久本洋子先生)。

写真:開花の研究のための標本

開花の研究のため採取して標本にしている。写真は2020年のもの。

開花メカニズムの解明に挑む

まだまだ謎の多いタケの生態。久本先生が在籍する東京大学千葉演習林にはモウソウチクの開花周期実証試験地があり、この試験地では67年周期で開花するというモウソウチクの観察が1934年から300年計画で続いているそうです。

今回教えてくれたのは

監修者プロフィール

東京大学大学院
農学生命科学研究科附属演習林助教

久本 洋子先生

専門分野は森林分子生態学。主にタケや竹林を研究対象にし、植物の開花メカニズムなどに関する基礎的研究やタケ類における一斉開花現象の分子機構の解明、放置竹林の拡大といった社会問題の解決を目指した応用的研究に取り組んでいる。

写真:久本 洋子先生

編集後記

竹を特集するのにあたって、近所にある竹林を散策してみました。竹林に入ると、静かで幽玄な雰囲気に包まれ、なぜだか非日常的な時間を味わうことができました。特集で紹介した竹の見分け方も参考にして、1本1本の竹をじっくり観察してみるのも楽しいと思いました。これから暖かくなってきて、散歩日和の日も多くなってきますので、ご近所に竹林があれば、ぜひ周辺を散策してみてはいかがでしょうか。(広報室AY)

記事の感想をぜひお聞かせください!

お問合せ先

大臣官房広報評価課広報室

代表:03-3502-8111(内線3074)
ダイヤルイン:03-3502-8449
FAX番号:03-3502-8766