このページの本文へ移動

農林水産省

メニュー

四国地方 高知県

高知県

山と海に育まれ、独自に進化した高知県の食文化

高知県は、豊かな森林と青い海の国で、この恵まれた自然環境が調和し、豊かで変化に富んだ風土がつくられている。

北は四国山地で愛媛県、徳島県に接し、南は太平洋に面している。面積は約7,104km2で四国四県では一番広く、このうち森林面積が84%を占める。温暖多湿な気候のため、足摺岬や室戸岬ではアコウ、ビロウといった亜熱帯植物が自生し、高知平野では早場米が収穫される。また古くから野菜のハウス栽培が行われ、園芸王国でもある。

動画素材一部提供元:JA 高知県、日本の食文化情報発信サイト「SHUN GATE」
取材協力店舗:とさのさとAGRI COLLETTO、土佐料理 司

"食"で際立つ地域独自の文化

高知県は、大きく分けて平野部山間部沿岸部で構成されている。

それぞれの地域で気候も違えば、暮らしも異なるが、共通しているのは「おきゃく」文化が根づいていること。おきゃくとは土佐弁で"宴会"を指す。高知県では神事に祭事、誕生祝いから還暦祝いまで、なにかとおきゃくが催される。遠縁、近縁分け隔てなくもてなされる。

おきゃくには「皿鉢(さわち・さはち)料理」が欠かせない。刺身やすし、煮物や甘味が隙間なく盛り付けた大皿料理である。卓上を彩る食材は地域によって多種多様。皿鉢料理には地域独自の食文化が現れる。

ごはんが一番のごちそうだった当時は、お客をもてなすために、多種多様なすしがつくられた。なかでも「さばの姿ずし」は神祭や婚礼の席には欠かせない。背開きにしたサバの中に頭から尾までぎっしりすし飯を詰め盛り付けられ、威勢がいい。ひと昔前までは、おきゃくの翌日には、準備から片づけを手伝ってくれる人々の慰労を兼ねて「残(ざん)」と呼ばれる小宴がおこなわれた。その時、残った姿ずしの頭と尾を焼いて食べた。

「かいさまずし」は、通常の押しずしと異なり、魚の身の部分を表側にしたユニークな逸品。会費の安い宴や日常食には、ウルメイワシが使われる。そのほか、昆布でまいた「こぶずし」や山の幸をのせた田舎ずし「ひっつけずし」なども。すし一つとっても様々なバリエーションがある。
皿鉢料理

そんな高知県の食文化の一部を紹介しよう。

<平野部>
山の幸・海の幸が集まる、県内最大の平野

県中央部に広がる高知平野は、物部川、仁淀川の下流部に挟まれた県内最大の平野である。その中でも物部川流域の香長平野では、弥生時代から稲作がおこなわれていたという。土佐藩家老・野中兼山によって水利が整備されてから、一大穀倉地帯へと発展した。

「土佐はよいとこ南をうけて年にお米が二度獲れる」とよさこい節にもあるように、かつては二期作地帯であった。
高知県
山間部と沿岸部に挟まれているため、山の幸、海の幸も手に入れやすい。

初夏、川エビが旬を迎える。川エビはハサミの長さが体長ほどもある手長エビ。現在でもエビ専用の網「エビ玉」を使った伝統漁法が続けられている。川エビは、皮がついたまま煮物や炒め物にする。バリバリと豪快に噛みしめると、清らかな川の流れが脳裏によみがえる。
姿ずし

画像提供元:土佐伝統食研究会

地元民から「ツガニ」「ガネ」と呼ばれるモクズガニは、「つがに汁」になる。モクズガニを生きたままミキサーや石臼ですり潰して、そのすり身を水でこして味噌汁風に仕立てる。インパクトのある調理法ながら、口当たりはやさしく、滋味に富む。
つがに

高知県農漁村女性グループ研究会の会長、隅田るり子さんが南国市で営む、農家レストラン「まほろば畑」でも、「つがに汁」は人気メニューである。

「『つがに汁』は、観光施設はもちろん一般家庭でも馴染みのある料理。私も子どもの頃からよく食べていました。昔は、親にいわれて、ツガニ潰しを手伝った人も多かったと思いますよ。素材の味をダイレクトに活かすところが高知料理らしい。独特のクセが気になる人は、しょうがをたっぷり入れてみてください」。
郷土料理

<山間部>
清らかな川の流れに育まれた食文化

厳寒期は積雪することもある山間部。全長196kmに及ぶ大河、四万十川や「仁淀ブルー」と評される青く澄んだ仁淀川の恩恵を受けて、川の幸が食べられてきた。

ツガニや川エビはもちろんのこと、四万十川、仁淀川でとれるアユは、川魚の代表格。漁期は5月中旬から10月中旬まで。12月には、産卵を終えた落ちアユ漁が解禁する。川魚は鮮度が落ちやすいため、昔はとれたらすぐに塩焼きや串焼きにした。川の流域に建つ飲食店に、アユの塩焼きを名物にしているお店は多い。

高知県は温暖多湿で、昼夜の温度差が大きいことなどから霧が立ちやすく、良質な茶葉の生育に適しており、仁淀川や四万十川など大型河川の上・中流域は、古くから品質の高い土佐茶の産地として栽培がおこなわれてきた。苦みが少なく味と香りの豊かな土佐茶は、全国でも評価されている。また、茶葉ではないが、高知県には「茶」と呼んで飲まれてきた「きしまめ茶」や「はぶ茶」といった野草茶がある。
仁淀川

仁淀川の支流、柳瀬川流域にある佐川盆地

盆地の周囲は、標高400m~900mの山々に囲まれ、春日川、伏尾川などの流域に耕地がつくられた。低地には水田、河岸段丘には畑地が分布する。低地部は冠水害に悩まされることが多く、河岸段丘や山の緩傾斜地を畑地として利用するようになった。

全国的に見て、納豆の購入量が少ない高知県において、佐川盆地周辺だけは約300年以上前から「塩納豆」がつくられてきた。塩納豆とは、蒸した大豆を数日寝かせて発酵させたのち、塩を混ぜて乾燥させたもの。静岡県の郷土料理「浜納豆」のレシピと共通点が多く、遠州掛川から移付された土佐藩筆頭家老深尾の領地であった佐川に製造技術が持ちこまれたと伝わる。

<沿岸部>
消費量日本一を誇る、カツオの産地

東西に長くのび、海の幸を運ぶ黒潮が流れる沿岸部では、古くから漁業が営まれてきた。メヒカリ、キンメダイ、イサキ、ウツボ、ウルメイワシなど魚種を挙げれば枚挙にいとまがない。なかでも、カツオは全国一の消費量を誇っている。昭和63年(1988年)には、県魚に指定。いかに地元民の舌に馴染んでいるかがうかがえる。

春の上りカツオは脂が少なく、下りカツオは脂がのっている。刺身、腹の部分を焼いた「はらんぼ」、「ちちこ(心臓)」を煮付けたり、焼いたり、さらに内臓(主に腸)の部分は酒盗(塩辛)にするなど料理のバリエーションは数多いが、「かつおのたたき」は特に有名だ。

3枚におろしたカツオの表面に塩をして、わらで炙って、そのまま分厚く切り分ける。仕上げに塩またはタタキのタレをたっぷりかけ、その名の通り、手で"叩いて"味を馴染ませたらできあがり。野趣あふれる味わいは、しょうがやにんにく、青ねぎともよく合う。当然ながら、皿鉢料理の必需品である。

「かつおのたたき」の発祥は諸説ある。"漁師が船上のまかない飯として食べていたため"という説や、"土佐国の戦国大名である長宗我部元親(ちょうそかべもとちか)がカツオを半焼きて食べており、衛生面を気にした土佐藩主の山内一豊がカツオの生食を禁じたため"という説。他にも、"明治時代に高知県を訪れた西洋人にステーキの代用として振る舞ったことがはじまった"という説なども存在する。こうした逸話の多さは、カツオがそれだけ高知県の暮らしに定着し、親しまれていることの現れなのかもしれない。
かつおのたたき
山林を流れる清流に育まれた川の幸と山の幸、そして黒潮が運ぶ多彩な海の幸によって支えられる高知県の食文化。それは、四国山地にへだてられ、近県との交流が少なかったがゆえに独自に進化した。"高知県の味覚"を味わうときは、味はもちろん、その裏側にある歴史的背景も噛みしめたい。
四万十川

画像提供元:日本の食文化情報発信サイト「SHUN GATE」

高知県の主な郷土料理

  • 田舎ずし

    田舎ずし

    「田舎ずし」とは、全国的に見ても珍しい野菜を使ったすし。高知県の山間地帯に伝わ...

  • さばの姿ずし

    さばの姿ずし

    県内全域の食習慣として根づき、冠婚葬祭や神事に欠かせない「皿鉢(さわち・さはち...

  • つがに汁

    つがに汁

    高知県を代表する郷土料理のひとつに「つがに汁」がある。つがにとは、四万十川や仁...

お問合せ先

大臣官房新事業・食品産業部外食・食文化課食文化室

代表:03-3502-8111(内線3085)
ダイヤルイン:03-3502-5516