教育委員会の機能強化、文科省が報告書案を示す 協力者会議

教育委員会の機能強化、文科省が報告書案を示す 協力者会議
教育委員会の機能強化について、報告書案が示された協力者会議(YouTubeで取材)
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 教育委員会の機能強化について議論する文科省の調査研究協力者会議は6月26日、第14回会合を開き、これまでの議論を踏まえた報告書案を同省が示した。教育行政の担い手である教育委員会が適切に意思決定を行うために、構成員である教育長や教育委員に対して、「不断の研鑽(けんさん)」を求めた。また、教員の勤務環境の改善に向けて、教育委員会が学校事務職員に対して支援を行う重要性も指摘した。

教育委員会の機能強化について、報告書案が示された協力者会議(YouTubeで取材)

 報告書案では、教育委員会の在り方について、「指導等を通じて学校の教育活動を適時適切に軌道修正していくことも必要」とする一方、「各学校の積極的な取り組みを促していく姿勢が重要」と強調。教員が教育活動に専念できる環境整備も含め、教育委員会がさまざまな施策を通して、「令和の日本型教育」の実現に向けて後押しする必要があるとした。

 そのためには、まず教育長が「学校運営について常に問題意識を持ち、学校への支援に向けたリーダーシップを発揮していく必要がある」と指摘。ICTを活用した新たな学びや不登校児童生徒など、学校現場において、多様化・複雑化する課題に対応していくため、学校教育以外の動向も把握し、教育行政に適切に反映させる柔軟性や常に自己研鑽(けんさん)する姿勢が必要とした。

 加えて、自治体に対して、「幅広い人材の中から、将来的に教育長の職を担える人材を中長期的に育成していくこと」を求めた。求められる知見やリーダーシップを育む手段としては、人事異動を通して、職員に教育行政に関する経験を積ませるほか、教職大学院での学び直しの機会を積極的に提供することが考えられるとした。

 教育委員についても、「教育委員会の意思決定に対する責任を有する者」と表現。教育行政に対するチェック機能を果たす観点から、教育長と同じく「不断の研鑽(けんさん)」に努め、資質・能力を向上させることを求めた。

 また、選出にあたっては、女性や保護者も含め、多様な人材を選任することを求めた。さらに、教育以外の分野の専門家を委員に選ぶことで、より的確な意思決定につながるとした。その上で、自治体に対しては委員に求められる役割を確実に説明することに加え、教育課題や施策に関する全国的な動向を委員が把握・理解するための勉強会や教職員との意見交換の場を確保することを求めた。

 教員が教育活動に専念できる環境整備の面からは、学校事務職員による組織力の強化に言及し、支援する重要性を記した。チームとしての学校の総合力、教育力を最大限に発揮するためには、校長のリーダーシップの下、教員や支援スタッフが自らの専門性を十分に発揮できる体制を整備することが重要とした上で、学校事務職員について、「非常に重要な固有の役割を担っている」と強調。校内の業務改善を提案し、実行することで教員の負担軽減につながるとした。加えて、学校経営に積極的に参画することで、副校長や教頭と共に校長を補佐する役割が期待されているとし、教育委員会に対して支援に取り組むことを求めた。

 さらに、教育委員会が教員の負担軽減や事務処理の効率化を検討する際は、学校現場の実情をよく知る学校事務職員の知見を取り入れることで、より実効的な対応につながるとした。文科省としても、各自治体における学校事務職員に関わる取り組みについて、事例を収集し、周知を図る必要があるとまとめた。

 報告書案に対し、吉田信解委員(埼玉県本庄市長、全国市長会社会文教委員会委員長)は「財政面で厳しいとか、人材がそろわず困っているといった具体的な記述が少ないのではないか」と疑問を呈し、その上で、「地方行政の充実に向けて、アグレッシブに予算が必要だという記述が入ってもいいのではないか」と述べた。

 また、岩本悠委員(地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事、島根県教育魅力化特命官)は、教育委員会で勤務する人のウェルビーイングの面から発言。「教育委員会の中にいる人はなかなか光が当たらない。教員も行政の職員も教育委員会への異動に対し、ネガティブになりやすい傾向が一般的にあると思う。やりがいや意欲の向上を図る方向性は重要。魅力を発信していくツールが必要ではないか」とした。

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