「○」に「も」のトレードマークで知られ、神戸市を中心にチェーン展開するラーメン店「神戸の中華そば もっこす」関連会社の男性社長が、不適切経理の指摘を受けた社内調査後に解任された。問題発覚のきっかけは「繁忙の割に売り上げが少ない」という社内の声だった。
関係者によると、麺やスープを加工する「もっこす食品」(神戸市灘区)の元社長は遅くとも4年前から、神戸市内にある直営店の売り上げなどを過少に報告した疑いがあり、差額が不明になっていたという。
もっこすは1977年に神戸で創業。屋号は創業者の出身地・熊本の方言で「頑固者」を意味する「肥後もっこす」に由来する。濃厚な豚足しょうゆスープと硬めの細ストレート麺は固定ファンも多く、「神戸っ子のソウルフード」に挙げられることもある。
関係者によると、元社長はもっこす食品が直営する「工場店」(神戸市灘区)で、日々の売上額と、釣り銭を含む店舗の残金などを日報に手書きしていた。昨年、実際より少なく記入され続けていたとみられることが内部の指摘で発覚したという。
例えば、販売したラーメンの杯数を書く「売麺」欄に、別の従業員が書き込んでいた100杯台の数字を40杯少ない60杯台に書き換え、その分、売上額も3万円を差し引いて書き直していたとみられる跡が見つかったといい、差額分の現金も行方不明になっていたという。
関係者の話では、昨年になって「繁忙の割に売り上げが少ない」と疑問視する声が社内から上がり始めた。会社側は本人に聞き取りをした他、工場の製麺記録とも照合するなどして事実関係を調べたとされる。
折しも、新型コロナウイルス禍が外食産業を直撃し、従業員のボーナスも削減されていた。店舗運営会社「もっこすフーズ」の労働組合は昨年12月27日付で、過去2年間未払いだった残業代を請求するとした内容の申立書を会社側に提出。その中で、もっこす食品元社長の不適切経理も「従業員の半数以上が知っている」として早急な事実の社内公表と解任を強く求めた。組合側は同日、ストライキを起こして石屋川店(灘区)を1日休業。その後、1月になって元社長は解任された。
関係者によると、日報に記載された売り上げや残金と、実際額との差額は日報が残る18年8月から21年7月の間だけで計約2千万円に上る。会社は税務署に売り上げの修正申告を行った。
もっこす食品は取材に「経理上のミスで意図的なものではないと考えている。脱税もしていない」と答えた。元社長の解任後、もっこす食品の社長を兼務するもっこすフーズの社長は「元社長は解任後も会社に在籍しているが、取材に答えられる状況ではない」としている。
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