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「神戸人形」唯一の現役作家が出版 明治期からの外国人向け土産

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更新日:2021年05月16日

  • 「神戸人形賛歌」を出版した吉田太郎さん=神戸市東灘区

  • 何らかの遊びかスポーツに興じる男性を表現した神戸人形

 外国人向けの日本土産として明治期以降、海外に広まったからくり仕掛けの「神戸人形」。日本玩具博物館(兵庫県姫路市)の所蔵品を中心に70点以上の写真と文章を収めた「神戸人形賛歌」が出版された。著者は、唯一の現役神戸人形作家・吉田太郎さん(51)=神戸市東灘区。ユーモラスな人形の魅力を余すことなく伝える。(井原尚基)

 同市中央区出身の吉田さんは、神戸・元町商店街で売られていた神戸人形に憧れながら少年時代を過ごした。京都産業大では人形劇部に所属。卒業後、京都の人形劇団を経て、神戸人形のほか人形劇用の人形も制作している。
 戦前の神戸人形には銘が入っているものが少なく、作者につながる材料が乏しい。吉田さんは2019年、作者ごとの特徴を見極めるため、同博物館で所蔵品の写真を撮り始めた。資料にするつもりだったが、思いのほかよく撮れていたため、書籍化を決めた。
 人力車に乗った男性が木魚をたたき、同乗の女性は三味線を演奏している作品に代表されるように「日本の風物をあれもこれも詰め込んだ」。スイカや舌などの赤色が人形本体の黒に映える作品が多く、「日本を代表する工芸である漆器を意識しているのではないか」と吉田さん。
 黒塗りが黒人差別と関連づけられることがあるというが、吉田さんは「モチーフは日本のおじいさん、おばあさんやお坊さんばかり」と否定する。本には「黒い色のこと」と題したコラムも掲載し「誤解を解くきっかけになれば」と願う。
 首が伸び縮みしたり料理をしたり楽器を演奏したりと、さまざまな動きの表現に目が行きがちだが、吉田さんは「時間をかけて手彫りが施された造作(ぞうさく)そのものが面白い。昔の暮らしや風俗に親しみを持てるようになる」とその魅力を語る。使い方が分からない食器や種類を特定できないスポーツなど「不可解で謎が多い」ことから、鑑賞の手引として断定を避け、推測を交えた表現を心掛けた。
 「へんてこな作品が多いので、くつろぎながらぺらぺら眺めてもらえれば」と話す。
 神戸新聞総合出版センター刊、2200円。
     ◇
 出版に合わせた企画展を日本玩具博物館で開催中。戦前の作品を中心に神戸人形約200点を展示している。8月31日まで(水曜休館)。一般600円。同博物館TEL079・232・4388

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