SEKAI NO OWARI デビュー10周年 ーセカオワの歌詞の本質的な魅力

SEKAI NO OWARI デビュー10周年 ーセカオワの歌詞の本質的な魅力
森朋之
森朋之

2020年2月、デビュー10周年を迎えたSEKAI NO OWARI。メンバー自身の手でライブハウス“clubEARTH”を作るところから始まり、メジャーデビュー以降はエンターテインメント性に溢れたサウンド、深い精神性と“生”の本質を射抜く歌詞によって支持を拡大。国民的な人気を得るとともに、“End of the World”名義で海外での活動も積極的に行っている。ここでは改めてセカオワの歌詞の世界をフィーチャー。その奥深い魅力を紹介したい。



「幻の命」(2010年)

出典元:YouTube(LastrumMusic)

インディーズ時代の最初のシングルにして、アルバム「EARTH」のリード曲。当時は“世界の終わり”というバンド名表記だったが、バンド名のインパクト、そして何よりも、この楽曲が持っている普遍的な魅力によって、セカオワの存在は一気に広まっていった。儚くも消え去ってしまった命に思いを馳せ、この世界で生きる自分たちの存在を照らし出すような歌詞は、まさに彼らの原点だ。初めてセカオワに取材させてもらったとき、Nakajinが「このバンドはFukaseの言葉を伝えるために存在している」という趣旨の話をしてくれことは、いまも強く心に残っている。


「RPG」(2013年)

出典元:YouTube(SEKAI NO OWARI)

メジャー4作目のシングルとしてリリースされた「RPG」(アニメ映画『クレヨンしんちゃん バカうまっ!B級グルメサバイバル!!』の主題歌)は、セカオワの知名度をさらに上げ、本格的なブレイクに導いた記念碑的な楽曲だ。「怖いものなんてない 僕らはもう一人じゃない」というサビの歌詞を書いたのは、Saori。共同生活を送りながらも、意見の違いからぶつかることもあったという状況のなか、自らに言い聞かせるように綴られたこのフレーズは、老若男女のリスナーの心に響き、ロングセールスを記録した。


「銀河街の悪夢」(2014年)

シングル「スノーマジックファンタジー」のカップリング曲、アルバム「Tree」にも収録された「銀河街の悪夢」は、Fukaseが精神を病んでいた時期の様子を赤裸々に綴った楽曲。薬を飲み、深い眠りにつき、何もできないまま1日が終わる。希望が見えない日々を描写し、最後に「強くなれ僕の同志よ」と歌われるこの曲は、セカオワの全楽曲のなかでも最も生々しい、ドキュメントタッチのナンバーだ。ただシリアスなではなく、Nakajinの素朴なメロディ。ファンタジックな音響によって、ポップに仕上げているところもこのバンドらしい。

「サザンカ」(2018年)

出典元:YouTube(SEKAI NO OWARI)

「2018年平昌オリンピック・パラリンピック」NHK放送テーマソングとしても話題を集めたシングル曲。努力が実を結ぶとは限らないし、すべての人が夢を掴めるわけではない。でも、立ち上がることができれば、人生という名の物語は続いていくーーこれほどまでに強い説得力を持った応援歌が他にあるだろうか、と思う。<いつだって物語の主人公は笑われる方だ/人を笑う方じゃない>という歌詞を、ライブ会場(富士急ハイランド・コニファーフォレスト)で一緒に声を合わせて歌っている親子連れの姿も印象的だった。



「LOVE SONG 」(2019年)

出典元:YouTube(SEKAI NO OWARI)

アルバム「Eye」(2019年)の1曲目を飾った「LOVE SONG」は、Fukaseの鋭い言語感覚、人間の本当の姿を映し出す視点がストレートに示された楽曲だ。大人は汚いと感じている子供たちに向けられている歌詞は、“大人はずるい、子供は純粋”などというプロトタイプとは真逆で、「いつだって時間はそう/諦めを教えてくれる」というフレーズによってリスナーの思考を刺激する。その根底にあるのは、Fukaseが持ち続けている子供たちに対する真っ直ぐな愛情ではないだろうか。まるで小説「ライ麦畑でつかまえて」の主人公のようだと、この曲を聴くたびに思う。


「umbrella」「Dropout」(2020年) 

出典元:YouTube(SEKAI NO OWARI)

10周年イヤーにリリースされた両A面シングル。ドラマ『竜の道 二つの顔の復讐者』主題歌」に起用された「「umbrella」は力強さと繊細さを共存させてバンドサウンドとともに叙情的なメロディが響く。「この雨がこのままずっと降れば/願ってはいけない そんな事は分かってる だけど」というラインからは、優しさと依存が表裏一体となった人間関係の本質が感じられ、どうしても心を揺さぶられてしまう。「Dropout」はEDM系のトラックとアコギの音色が溶け合うメロウかつダンサブルな楽曲。Fukaseが歩んできた道とこの先の未来、そのなかで変わり続ける情景を綴った英語詞のナンバーだ。


森朋之
森朋之

最新の記事

    share to facebook share to facebook share to facebook share

    Ctrl + C でコピー