北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

週刊誌で読み解く,横綱日馬富士・暴行事件の深層(真相?)

 

貴乃花くんよ! キミは,何で,そんなにトンガってんねん?

 

 

1.はじめに

日馬富士(横綱)の貴ノ岩(平幕)に対する暴行(傷害)事件が話題となっている。

真相は「裁判」の中で「公正な手続」を経て解明されるべきであり,
週刊誌情報などは所詮「二流」「ガセネタ」「噂」に過ぎないものであるから,
われわれ法律家は,そのようないい加減なマスコミ情報をもとに,
社会的事件について,自らの憶測を軽々に述べるべきではない,
という見解もありうる。

しかしながら,現在の司法裁判で客観的真実が解明されるとは限らない。
真実から大きく外れた,顎の外れるような事実認定に「煮え湯」を飲まされる,
といった数多くの経験を積んできた弁護士(私)の場合,
裁判所が「真実解明・真相究明の場」であるという理念は「幻想」だと思っている。
他方,たとえ週刊誌であっても,最近の「週刊文春」などは,
名誉毀損訴訟にも耐えられる程度の裏付け取材をしたうえで報道するといった
コンプライアンスくらいは持っているであろうし,
ライバル誌の「週刊新潮」も,同様であろう。

そこで,「週刊文春」及び「週刊新潮」が出揃ったところで,
両週刊誌が報ずる内容をを読み解いて行くと,
いろいろな背景事情・深層が見えてくるような気がする。

ちなみに,「週刊文春」は,「貴乃花の逆襲」という大見出しであり,
貴乃花親方への取材では,同人には「すでに警察の捜査が始まっており,
発言は控えるべきだと考えています。どうかご理解ください。」と語らせ,かつ,
「貴乃花親方に近い関係者」から取材したような体裁をとっているものの,
その実体は,「貴乃花」の主張の代弁であり,裏で,貴乃花が相当程度,
取材協力をしていることは明らかであろう。
他方,週刊新潮の方の記事内容は,どちらかというと,
日本相撲協会寄りの記事が目につくにもかかわらず,
よく読み込むと,モンゴル系力士が,日馬富士らを庇いつつも,結果的には,
彼らに不利な供述をもしてしまっているので
モンゴル系横綱に不利な供述部分は,概ね信用できるように思われる。

様々な情報・憶測等が飛び交うなか,日馬富士・極悪非道説から,
貴乃花・謀略説,あるいは貴乃花・「勇み足」説など,いろいろ意見はあろうが,
「弁護士として」「適正な捜査」を監視すべき立場から,以下では,
この事件において,注目・着眼すべき諸点について考えるところを述べておきたい。
(私自身としては,本ブログを担当捜査官・主任検事,及び鳥取地検の
次席検事・検事正に読んでもらいたい,と思っている。)

ちなみに,本件は,
外観的には「酩酊した横綱による行き過ぎた仕付・制裁」のように見えるが,
私個人としては,「黒幕」的存在(「正犯(日馬富士)の背後の正犯」)
なしに本件は語れない,と考えている。

 

2.事件の概略

 

 

11月12日から始まった大相撲九州場所の翌々日(14日),
「スポニチ」が,「横綱・日馬富士が,貴ノ岩(平幕)をビール瓶で殴打し,頭蓋骨骨折の傷害を負わせた」旨の暴行(傷害)事件を報じた。
(実際には,頭蓋骨骨折は「疑い」にとどまる)。

 

 

 

 

 

これが本件暴行事件であるが,その経過の概要は次のようである。

10月25日夜,大相撲秋巡業一行は,翌日の巡業予定地である鳥取市に移動したが,
同夜は,鳥取市内で,鳥取城北高校・相撲部総監督が主催して,同人がが経営する,
ちゃんこ鍋料理店「ちゃんこ石浦」での会合に,
モンゴル系の三横綱(白鵬・日馬富士・鶴竜)と,モンゴルから鳥取城北高校に相撲留学した同高相撲部OBの,「貴ノ岩」及び「照の富士」(関脇)らが参集した。
一次会は終始なごやかな雰囲気で終わったが,
二次会で,上記5名のモンゴル系力士らが,
ラウンジ「ドマーニ」に移動してから,白鵬が貴ノ岩への説教を始めた。
その最中,貴ノ岩がスマホをいじったことに因縁をつけて,
日馬富士が,「大横綱が話をしているときに何をしているなんだ!」と怒号すると,
貴ノ岩がにらみ返したため,日馬富士が激昂して,本件暴行に至ったという。
なお,日馬富士の方では,「9月下旬頃,都内で,貴ノ岩が,先輩のモンゴル出身の
元力士らと飲んでいた際,『俺は白鵬に勝った』『あなたたちの時代は終わった』
など失礼な限度があった」と聞いていた旨の供述をしたという。
スポニチでは,日馬富士が,貴ノ岩を「ビール瓶で」殴ったと報じたが,
日馬富士も,白鵬も,ビール瓶使用の事実を否定し,
日馬富士の方では,カラオケのリモコンで殴ったと弁明
(但し,日馬富士は,ビール瓶を持った事実は認めたが,水滴で滑り落ちたと弁明。)。
 暴行後,貴ノ岩は,鳥取市内の病院で,「頭部の傷口を医療用ホチキスで塞ぐ治療」
を受けた後,

広島県(大相撲秋巡業の最終地)内の病院で,
診断病名「脳震盪、左前頭部裂傷、右外耳道炎」の記載のある診断書(1通目)
が作成され,
10月29日,貴ノ岩が,貴乃花親方に連れられて,広島から鳥取に戻り,
 鳥取県警に被害届を提出した。

その後,貴ノ岩らは,九州場所を控え,福岡県田川市の宿舎に移動した。
診断書の病名は比較的軽微ではあったが,頭部外傷のため大事をとって,
貴ノ岩においては,四股(しこ)踏みなど軽い稽古にとどめていたが,
体調が悪化したため,貴乃花の指示で,改めて済生会福岡総合病院(福岡市)にて,
精密検査を受けたところ,11月5日?
「#1 脳震盪,#2左前頭部裂傷,#3右外耳道炎,
#4右中頭蓋底骨折,髄液漏の疑い」の各診断病名とともに,
「全治2週間と考えられます。
その間に状態が安定すれば,仕事に復帰が可能と思われます。」
と記載された診断書が作成された。
貴ノ岩は,11月5日から同月9日まで入院し,
九州場所も,初日(11月12日)から休場した。

ところが,11月14日スポニチによる前記「ビール瓶で殴打」「頭蓋骨骨折」
の本件暴行報道の前日13日,貴乃花親方が,相撲協会に提出した,
済生会福岡総合病院の前掲診断書の内容が,
先に鳥取県警に被害届とともに提出した診断書の内容(骨折なし)よりも重かったこと,
そして,貴乃花が,(相撲協会に内緒で)鳥取県警に被害届を提出させたことで,
鳥取県警から問い合わせを受けた相撲協会(危機管理部長・鏡山親方)が,
11月3日,貴乃花に聞き取りをした際も,
「よく分からない。」ととぼけた答えをしたことから,貴乃花への不審が生じ,
日本相撲協会が,済生会福岡総合病院の医師からヒアリングをした結果,
「#4右中頭蓋底骨折,髄液漏の疑い」の「疑い」は,「右中頭蓋底骨折」にもかかり,
「頭蓋底骨折」は疑いに止まり,負傷の程度は軽いことが確認され
(スポニチは,診断書の記載内容を誤解したのであろう。),
貴乃花が,貴ノ岩の病状を重くみせかけるために,意図的に仕組んだのではないか,
という不審の声が高まりをみせるようになった。

 

3.凶器として「ビール瓶」は使用されたのか?

私は,ビール瓶が使用された可能性が高いと考える。その根拠は次のとおり。


①「カラオケのリモコン」程度の軽量固形物を使った一撃で,『医療用ホチキス』を要するほどの裂創
を惹起するとは考えにくい。
②相当強い力が加わらない限り,頭蓋底骨折に至らず,貴ノ岩が,医師の問診で,
「ビール瓶で殴られた」と言ったからこそ,医師が,当該骨折の疑いを抱くに至った
 のではないか,と思われること。
③貴ノ岩に対し説教していたとなれば,当然,日馬富士も白鵬も立っていた可能性が
 高い。その場合,咄嗟に「凶器」として手に取りやすいのは何か?と考えれば,
 答えは自ずと明らかであろう。「カラオケのリモコン」程度の凶器であれば,
 「横綱の張り手」の威力と大差なかろう。
④「スポーツ報知」によると,元旭鷲山が,「酒席に同席した力士」から聞いた
話として,「…オレが話しているのにって激怒した。ビール瓶で1回だけ思いっきり
殴ったらしい」,同席者は「みんなビビって怖くなったって。みんなやめてくださいって
止めて、そこで血が出ちゃったから病院へ行っちゃった。」との話しは一応の具体性・
迫真性が認められる。
⑤ 貴乃花が,相撲協会に「重傷の」診断書を提出した日の翌日に,
 スポニチの「ビール瓶」報道がなされたことを考えると,スポニチの記事は,
 貴乃花のリークと考えるのが妥当であろう。となれば,「ビール瓶」の使用も,
 貴ノ岩の報告に基づいている可能性が高い。
(「鳥取市内」と「広島市内」で受診した各病院の医師の問診で,貴ノ岩がどのような
 供述をしていたか,創傷の具体的形状等の情報が揃えば,凶器の立証は容易であろう。)

以上の推論が正しいとなると,「白鵬」は虚偽供述をしていることになる。

ちなみに,週刊文春では,「元検事の落合洋司弁護士」の,
「…報道されている事故状況と初犯であることを前提にした場合,
 罰金刑になる可能性が高い。」というコメントを載せている。

そんな甘いものであろうか?

私が貴乃花親方の立場であれば,
被害者参加制度(傷害被告事件にも参加できる。)を利用して,
日馬富士の悪質性・危険性を強調・糾問・糾弾するが
「銀座」で「はしご酒」をする「お金持ちの横綱」に対し,
検察官は,「痛くも痒くもない」罰金刑を求刑するのでしょうかね?

 

4.貴乃花は「勇み足」をしたという評価になるのか?

  つづく

<追記とお詫び> 

昨晩(12.7),法医学者・医学者の先生方との忘年会の際,アノ傷口は,「カラオケのリモコン」の側面で殴打したことで出来た傷口とみて矛盾がなく,「ビール瓶」であれば,創の周囲にもっと挫滅創ができるのではないか,とのご教示をいただきましたので,本ブログは若干修正の必要がありそうです。ここに不正確な印象をもとに,ブログ記事を書き込んでしまったことにつき,取り急ぎお詫び申しあげます。

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続・週刊誌で読み解く,横綱日馬富士・暴行事件の深層(真相?)

続々・週刊誌で読み解く,横綱日馬富士・暴行事件の深層(真相?)