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西原玲奈調教助手

デビューから重賞で活躍する現在までの特徴は常に相手なりの堅実な走り。18戦走って掲示板外は2度だけというアドマイヤラクティ(牡5、栗東・梅田智厩舎)だが、それでも陣営なりのジレンマはあった様子。今回は2・3歳時からの背中を知り、梅田厩舎の看板馬でもあるショウナンマイティに日々跨っている西原玲奈調教助手に、G1の舞台に辿り着くまでの道程を語っていただいた。

もどかしさもあった条件馬時代

-:抜群の安定感がある馬ですが、今回は強敵が揃うこの舞台。手応えのほどを教えてください。まず、以前の状態、新馬の頃はどういう馬だったか、ということからお願いします。

西原玲奈調教助手:初めて乗った時から、背中のバネというか乗り味が抜群で、角馬場での軽いキャンター、ハッキングの状態から他の馬とは違うなというような感じだったんですけれど、とりあえずユルくて、持ち乗りさんとも「多分、4歳、5歳になってからスゴく良くなって、オープンに行くんだろうね」という話はしてたんです。

-:角馬場だけでもわかる弾み具合というのは。わかりやすく言うと、どんな感じなんでしょう。普通に速く走らせた時にフットワークが良くて、柔らかくて、乗り心地が良くてというのはわかりやすいんですけれど、ハッキングとかスゴく小さい動きの中で感じるバネというのは?

西:何て言ったら良いだろうなあ。フワフワのソファーで跳ねているような……。本当に気持ち良いですね。

-:新馬戦は2着で、2戦目の未勝利で勝ち上がって、ポンポンと行くのかなと思ったら、そこからちょっと足踏みをしましたよね。驚くのはダイヤモンドSから13戦さかのぼって、全部3着以内に来ているという。

西:逆に言うと、勝てる力はありながらも、不器用さであったりだとか、モタモタすることで勝てなかった。堅実さよりも正直、もどかしい気持ちの方が強かったですね。

-:最初からある程度は仕上がりに時間が掛かると感じていたので、良い意味で経験を積んで、徐々にステップアップしていったという感じですか。

西:今となれば。でも、正直、そういう馬の中には勝ち切れずに3着とかに来ている内に脚元を痛めたりとか。やっぱり勝てる内に勝っておかないと、という感じは私たちの中にはありますので。今となれば、良い風に取ればそうですけどね。

-:当時はもどかしさもあって?

西:ヤキモキしましたね。

-:この馬の分岐点になるレースがあるとしたら、どのレースでしたか?素質は元々買っていたけれども、現実にオープンとか重賞レベルの力があると感じたのは、実際のレースを見て、コレはイケるなと思わないと?

西:ということもないかなって。成績を見てもわかるように急激にポンポンポンと連勝した訳じゃなく、3着に来て、次に勝って……、という感じで、徐々に階段を昇っている訳だから、分岐という感じはそんなにはないかなあ。レース振りが余程変わった訳じゃなくて……。ひとつ言うならば前回の左回りで、ズブさを全く見せずに快勝したというのは「オッ!」というのがありましたよね。



看板馬ショウナンマイティと比べて


-:東京のダイヤモンドSは同じ左回りの金鯱賞と比べて、どう違ったかを教えて下さい。

西:他の馬も初めて使う時はそうかもしれないけれど、3400って本当に未知の世界で、距離が持つのか、幾ら折り合っても血統的に無理な馬も一杯いるし、やってみないと正直、分からないというのがあったんです。その中で逆に長ければ長い方が良いのかな、というモノを見せてくれたというか。

-:俗に長距離馬とマイラーを比べた場合に体とか乗り心地というのはマイラーの方が人間にアピールをすると思うんですよ。それでステイヤーとかはあんまり良さは感じないけれども、長く走らせた時に良さがある。見栄え的にも筋肉質で、いわゆる見栄えする馬がいるけれど、ステイヤーとか長距離を走る馬って、やや痩せてるし、オットリとしているから距離が持つ面もあるじゃないですか。乗っている人が見ていても、そんなにアピール力がないのかなと思うんです。

西:この馬は追い切りがめっちゃ乗り味が良いんですよ。ショウナンマイティには私が乗っているんですけれど、道中で引っ掛かるんです。だから、引っ掛かってガツンと行けば、例えば、4コーナーでガツンと行った時は本当にスゴい動きをするんですけれど、この馬は道中、コッチがゴーサインを出すまで全くボヤ~として走ってて、直線でゴーサインを出した時の走りが“ネコ科の走り”というか、本当に独特の……。

-:簡単に言うと、マイティはパワーがある男らしい力強さとか、逆に言うと硬さもあるという動きなんだけれど、コッチはしなやかで?

西:猫のような柔らかいしなやかさですね。本当に全身を使う。答えになってないけれど……。本当に今までに乗ったことのない動きですね。追い切りの直線の動きが。

-:実際、さっき立たせて写真を撮らせていただいたんですけれど、それだけでもしなやかさが。逆に乗った時に芯があるのかなというのを感じたのですが?

西:まあ多分、私が主に乗っていた時よりも今の方が成長をしているだろうし、2歳、3歳の時と比べたら、去年の秋の時点でもだいぶシッカリしたなというのを感じましたしね。

-:ある意味、今回は 1強ムードの天皇賞になりそうじゃないですか。その中でラクティはどんな競馬をしてくれると思いますか?

西:正直、そんなに器用な馬じゃないし、1回岩田さんが乗って、前にスッと行かせた時があったんですよね。2、3番手でペースが遅くて。その時、意外にキレなかったんですよね。わざわざ後ろから、引っ張って後ろに下げる必要はないけれど、押して2、3番手に行ったところで、あの脚が使えるかというと、そこまでの器用さもない。自分のペースで走ってこそ終いの脚が使えるのかもしれないけど……。

-:じゃあ、逆に他力本願な面もあるという?

西:確実には来るけど、1度乗っているジョッキーは「ココでモタモタするから、ココら辺で仕掛けなきゃ」というのが、他の馬と違うから。まあ、岩田さんは乗っているから、そこらへんはわかってくれていると思うし。



-:逆に言うと、長距離をこなす馬というのは反応が良くないから持つとも言えますよね。スパッと反応する馬って、動き過ぎる馬というのはそんなに長く良い脚を使えないし、一瞬のキレには魅力があるけれども、距離が持つ馬の多くは。やっぱりゴールドシップなんかもそうだけれども、ゴーサインを出した時に納得をしてくれないというか、エンジンが掛かってギアが入るまでに、ちょっと時間が掛かるというのは長距離を走る馬には多くある傾向かなと。

西:でも、最近の長距離で言うと、逆にスローペースで上がり勝負という感じでスパッとキレる馬がというのもあるし。そこは結局、レースになってみないとわからないというのはありますけれど。正直、力的にゴールドシップはメッチャ強いですよね。でも、他の馬に関しては十分に戦えると思いますけどね。

-:前回は3400という日本では珍しい長距離のレースで実績を出していますよね?

西:というのは強みですしね。

西原玲奈調教助手インタビュー(後半)
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【西原 玲奈】 Rena Nishihara

競馬学校騎手課程16期生として入学。同期には小林慎一郎、嘉藤貴行らがいる。2010年3月1日より所属する梅田智之厩舎の調教助手となった。スタッフとのコミニュケーションに気を配り、少しでも馬の可能性を伸ばすために厩務員さんと密に話し合うようにしている。
モットーである「馬を大事にしたい」という思いを心がけて、調教に取り組み、ただ甘やかすだけではなく、昨日できなかったことが出来たら褒めてあげることも大事にしている。騎手時代から変わらぬ優しさを持って馬と接している。