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2023年我が社の環境ビジネス戦略 高俊興業 代表取締役社長 高橋 潤 氏

――昨年1年を振り返って。

昨年は全ての業務に専門知識力、対応スピード力、課題解決力といった「付加価値」を少しずつ向上させていくため、「より良く」をテーマに事業活動に取り組んだ。結果として成果もあったが、さまざまな場面で課題も浮き彫りになった。どんな仕事や部署でも「攻め」と「守り」の両面が必要であることを痛感した1年となった。

――業績や主な成果については。

創業して44年が経ち、社員の努力やさまざまな利害関係者の協力もあって、初めて売上高100億円を突破することができた。テーマごとに見ると、「循環型社会」の構築という面では、マテリアルリサイクル率は1、2%のアップにとどまっている。全体リサイクル率92%からどう向上させていくか、品質の向上と併せて考えていく必要がある。「脱炭素社会」の実現という面では、昨年4月から非化石証書付電力を購入したことで、工場や研究所で使用する電力から発生するCO2発生量がゼロになった。「デジタル社会」の実現という面では、社内では基幹システムを入れ替える準備、社外では東京の関係団体と連携して、まずは紙媒体の書類を電子化して統一化を図るデジタイゼーションを推進しているところだ。

――技術開発の進捗状況は。

高俊中央技術研究所において、プラスチックリサイクル促進の観点から一軸破砕機の有効活用を継続して取り組んでいる。労働生産性を向上させる観点では、「廃棄物選別作業を実行する作業者の能力解析技術に関する技術開発」をテーマに、大手自動車メーカーの新規事業部署、サイクラーズ、当社の3社共同で特許出願を行い、解析処理装置および解析処理方法の検討を行っている。

――人材確保・育成に向けた取り組みは。

ドライバー、エンジニア(工場作業員)については、さまざまな工夫を講じながら人員確保に向けて採用活動を行っている。新卒生については、近年のコロナ情勢を踏まえ、今年からオンラインによる会社説明会を開始した。また、社内で理念(考え方や方向性)を共有するために、改めて21年10月に「社長方針」を示した。一人ひとりの考え方は違っても、会社として向かう方向性は統一していかなければならないと思っている。いくら採用活動を強化しても、働く仕事環境や安全の確保、ハラスメントのない職場にしていかなければ定着率は上がらない。採用活動と定着への取り組みは両輪で推進していくことが不可欠だ。

――今年の展望、重点的に取り組む事項については。

売上100億円という壁を乗り越えることができたが、それによって改めて企業規模にふさわしい会社づくりをしなければならないと感じているところだ。理念経営の実践、組織体制の見直し、事業を行う上で必要な許認可の整備、さまざまな部門における戦略の実行など、試行錯誤を重ねながら、引き続き「より良く」なるよう取り組んでいきたい。一方で、生成品の品質向上を図るための選別機械導入の検討、労働生産性を向上させるための設備開発、基幹システム入れ替えによる事務効率の向上、健康経営の促進については、今後も重点的に取り組んでいく。

――廃棄物処理、資源循環業界の今後のあり方についてどのように考えるか。

世界経済や情勢が不安定な状態であり、資材の高騰や不足といった事態が生じている。一方で、「資源循環」「脱炭素(GXへの取り組み)」「デジタル(DXへの取り組み)」といった社会を実現していかなければならない。先行き不透明な状況が続くが、きちんと世の中の「変化」に対応できる業界とならなければならないと考えている。同業間においても、競い合う部分は必要だと思うが、例えばデジタル化やデータの活用、帳票書類等の標準化という部分については連携して取り組んでいかないと、他産業との差が開いて遅れを取る事態を招き、「魅力ある産業」から遠ざかってしまうことになる。「競争」と「連携」という両輪での事業活動が今後は必要であると思う。

――高俊興業の今後の方向性は。

昨年9月に当社の創業者である高橋俊美会長が他界した。本人もやり残したことが多々あったと思う。今度はわれわれが業界や社業の発展に向け、鋭意努力していかなければならない。当社の「不可能を可能にする精神」、「選別技術へのこだわり」そして「一枚岩となって事業に取り組む」という考え方は、この先も不変であると認識した上で、きちんと継承しなければならないと考えている。

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高橋潤氏