妊娠中期の健診

『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』(サイオ出版)より転載。
今回は妊娠中期の健診について解説します。

 

立岡弓子
滋賀医科大学医学部看護学科教授

 

 

妊娠中期の検診とは

妊娠中期は胎盤が完成し、胎児の発育環境としての母体は安定するが、腹部の増大に伴うマイナートラブルや切迫症状などの異常が出現しやすい時期でもある。妊娠16週〜23週までは、4週間に1回の健診、妊娠24週〜35週までは、2週間に1回の健診となる(母子保健法第13条)。

 

memo:妊娠中期

妊娠16週0日〜妊娠27週6日

 

妊娠初期と同様に、健診ごとに体重測定血圧測定尿定性(タンパク定性・糖定性)を実施する。

 

 

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計測診

1子宮底長

目的

妊娠15週を過ぎると、腹壁から子宮体部を触知できるようになり、子宮底の位置が妊娠週数により上昇する(表1)。子宮底長を測定し、胎児の発育状況や羊水量を査定する。

 

表1 妊娠中期の子宮底長の実測値

妊娠中期の子宮底長の実測値

 

方法

妊婦に仰臥位で両膝を伸ばしてもらった状態で、恥骨結合上縁から子宮底最高部までの距離を、臍を通る腹壁のカーブに沿って測る(図1図2)。

 

図1 子宮底長の計測

子宮底長の計測

 

図2 子宮底長の計測方法

子宮底長の計測方法

 

2腹囲

目的

胎児の成長を推定し、羊水量の異常を早期発見するために行う。

 

方法

仰臥位により、臍の高さで腹部の周囲の長さを測る(図3)。

 

図3 腹囲の計測

腹囲の計測

 

 

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聴診

目的

超音波ドップラー法によって胎児心音、臍帯雑音、子宮雑音を聴取することで、胎児の健康状態をアセスメントする(図4表2)。

 

図4 超音波ドップラー法

超音波ドップラー法

 

表2 聴取音の種類

聴取音の種類

 

意義

・聴取できる部位により、胎位・胎向・胎勢を診断できる。
・胎児数を診断できる。
・臍帯巻絡による胎児の健康状態を診断できる。
・胎児仮死の早期発見ができる。

 

手順

1妊婦の体位は、仰臥位とし、両膝を伸展させて腹壁を緊張させる。

2聴取部位は、胎児心音の最強度点とする。

 

 

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視診

目的

妊娠に伴って生じる母体の変化が、生理的変化であるのかどうか、正常な変化であるかどうかを判断する。

 

乳房の変化の観察

エストロゲンプロゲステロン、プロラクチンの作用により、乳腺組織の肥大が生じ、脂肪組織も増加することで、妊娠週数が進むにつれて、乳房は大きくなり緊満がみられるようになる。

 

妊娠中期には、乳房表層の皮下に、静脈血管が透けてみえるようになる。乳頭乳輪部の色も茶色に着色しやすいが、個人差がある。乳輪部には、モントゴメリー腺(Montgomery glands)という皮脂腺がみられる(図5)。

 

図5 モントゴメリー腺

モントゴメリー腺
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妊娠線の観察

妊娠線は妊娠中期に生じやすく、皮膚に赤みを帯びた線(新妊娠線)ができる(図6)。部位としては、腹壁・乳房・大腿部である。

 

図6 新妊娠線

新妊娠線

 

約50%の妊婦にみられるが、分娩終了とともに白色化する。これを旧妊娠線という(図7)。経産婦の場合には、新・旧妊娠線がみられる。

 

図7 旧妊娠線

旧妊娠線

痒感を伴うため、クリームを塗布したりマッサージを行うことで、不快感が緩和される。

 

 

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触診

1腹部(レオポルドの触診法)

目的

母体の腹壁に直接触れることで、子宮の収縮状態・子宮底の位置・胎児の数・胎位・胎向・先進部・下降度を診断する。

 

手順

第1段

1妊婦の右側に立ち、指先をすぼめて、弓状になるようにする(図8)。

 

図8 腹部の触診第1段

腹部の触診第1段

2中指と小指で子宮底を軽く押さえて、境界を確認する。

3子宮底部分から、子宮底全体を触診する。

 

CHECK

子宮底の位置と高さ、胎児部分

 

第2段

1第1段で子宮底部を触知した手を両側の側腹部にあてる。

2子宮体部を左右交互に軽く圧しながら触知する(図9)。

 

図9 腹部の触診第2段

腹部の触診第2段

 

CHECK

子宮収縮状態、羊水量、胎向(児背、小部分の位置)、胎位、胎動

 

第3段

1右手の母指とほかの4指を開いて、恥骨結合の上縁にあてる(図10)。

 

図10 腹部の触診第3段

腹部の触診第3段

 

2骨盤入口上の胎児下降部を確認する。

 

CHECK

胎児下降部、可動性、浮球感、胎勢

 

第4段

1妊婦の足側に向いて立つ。

2両手の母指以外の4指を軽く曲げて、左右の下腹部にあてて、恥骨との間に入れる(図11)。

 

図11 腹部の触診第4段

腹部の触診第4段

3胎児下降部を左右から軽く挟んで、下降部の種類と高さを確認する。

 

CHECK

胎児下降部の種類、下降部の可動性、骨盤内進入の程度

 

2浮腫

目的

妊娠に伴う生理的変化による浮腫であるかどうかを判断する。

 

観察項目

顔面・手指・下肢脛骨稜

 

手順(下肢脛骨稜)

1妊婦を仰臥位とする。

2母指で、脛骨稜を10秒間圧迫する(図12)。

 

図12 浮腫の触診

浮腫の触診

脛骨稜を圧迫した後は、毛細血管が収縮するために皮膚がやや蒼白となり、一見すると圧痕にみえることがある。したがって、浮腫の判断となるくぼみの有無をチェックするため、必ず触知することが大切である。

 

3圧痕のくぼみの程度を判断する。

 

CHECK

1〜2秒間の圧迫で圧痕が容易に出現する場合には、低タンパク性の浮腫が考えられる。

 

 

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本連載は株式会社サイオ出版の提供により掲載しています。

 

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[出典] 『新訂版 周産期ケアマニュアル 第3版』 編著/立岡弓子/2020年3月刊行/ サイオ出版

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