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トランプ氏、当選後初会見 「米国第一主義」全開

社会 | 神奈川新聞 | 2017年1月13日(金) 02:00

11日、ニューヨークのトランプタワーで、当選後初めて記者会見するトランプ次期米大統領(UPI=共同)
11日、ニューヨークのトランプタワーで、当選後初めて記者会見するトランプ次期米大統領(UPI=共同)

県経済界、神経とがらせ


 就任目前のトランプ次期米大統領が当選後、初めて開いた記者会見。米国外で生産活動をすれば「国境で高い関税を支払うことになる」、「神が創造した最も偉大な雇用創出者になるだろうと本気で思っている」-。保護主義色が濃い持論を曲げることはなく、輸出関連産業をはじめ軌道修正を願う県内企業の淡い期待はくじかれた格好。「米国第一主義」全開の政治姿勢に、県内の経済関係者は神経をとがらせ、対応策を模索している。
 

高関税の実現性


 「ルールが変われば従うのみ。ただ、トランプ氏の考えは米経済に得策ではないのでは」

 そう疑問を呈したのは自動車部品メーカー大手ヨロズ(横浜市港北区)の佐藤和己副会長。米国内に雇用を回帰させる主張に「自動車各社は元々、競争力を高めるために(人件費の安い)メキシコに進出した経緯がある。米国に戻してもコスト上昇で商品価格も上昇するなど競争力がそがれ、(業績にも響き)かえって失業者を生むのでは」と首をかしげる。貿易不均衡を是正するために高関税を課すとの主張にも「国際ルールに抵触する。実現は困難では」と懐疑的。その上で、かねて進める米国内の生産拠点の充実を着実に実施し、推移を見守るという。

 就業情報システム大手のアマノ(同区)は昨年、トランプ氏がやり玉に挙げるメキシコに生産関連設備を販売する現地法人を開設した。幹部は「メキシコは米国製造業のサプライチェーン(供給網)に深く組み込まれている。現状を劇的には変えられず、無理に変えても米国の利益にはならない」と実感を込める。批判や自制を求める声にもどこ吹く風の新大統領を尻目に「一喜一憂せず、グローバルな視点で成長を目指す姿勢は変わらない」と力を込めた。

商機もほの見え


 一方でトランプ氏の“口先介入”が大手企業を揺さぶり、実際に生産の国内回帰や大型投資を引き出しているのも事実。県西部の部品メーカーは「具体的な国名や企業名を挙げ、恫喝(どうかつ)するようなやり方は考えられない」と指弾。当選後は過激な主張を軌道修正するのではと期待もしていただけに「不安が大きい」と率直に漏らした。

 トランプ氏の主張から商機を見いだす企業もある。ソフト開発大手の富士ソフト(同市中区)の山岡寛典顧問は、トランプ氏が、ハッキングなどサイバー攻撃への防御が課題と言及したことに触れ、「サイバーセキュリティー対策に注力する当社の方向性と合致している。日本国内でも対策の機運が高まるのでは」と、新大統領の発言の重みを商機に結びつけようと意欲を燃やす。

自給率アップを


 農業関連の県内関係者や企業も懸念を強める。トランプ氏はすでに、環太平洋連携協定(TPP)からの離脱を明言しており、配合飼料大手のフィード・ワン(同市神奈川区)は「日米の2国間交渉での再協議が考えられ、その場合さらに厳しい条件交渉を迫られる可能性がある」と指摘。トランプ氏の主張は「実現性も経済効果も不透明で、今年の世界経済は極めて見通しづらい」と懸念を深める。

 日本の食料自給率の低さを憂える県内の畜産関係者は「オバマ大統領とは百八十度考えの異なる人物が登場すると考えた方がいい。なりふり構わず、米国の利益を追求してきたとき、輸入に頼る日本の食料事情を突かれる可能性もある。自給率を高める国内対策の充実と、人材を含め米国と渡り合える態勢づくりが急務」と注文した。

具体策なく期待外れ

新瀧健一氏 浜銀総研・上席主任研究員




 トランプ氏の会見は「期待外れ」-。浜銀総合研究所の新瀧健一上席主任研究員は、公共投資など米国景気を押し上げる方向への言及がなく、通商政策の具体案も明示されなかったことを「就任演説以降に先送りした形」と評した。

 雇用創出の強調については「日本にとって表裏一体」。米国中産階級の所得が向上し購買力が強まれば日本企業に商機が広がる一方、海外に生産拠点を持つ企業がメキシコから米国に拠点を移す場合、人件費が割高になるなど不利益が生じるとした。

 トランプ氏は短文投稿サイト「ツイッター」でトヨタ自動車など個別企業を名指しで批判。会見でも、海外に生産拠点を移す企業に高関税を課すと表明したが、同研究員は「独裁国家でもあるまいし即座に適用されるわけではない。議会承認など手続きを踏む間に、企業側は対応策を練る時間が残されている」と冷静な見方を示す。北米自由貿易協定(NAFTA)や世界貿易機関(WTO)の脱退についても「協定見直しや議会承認が必要。任期中にできるか」。

 同氏が標的とする自動車産業が集積する県内の企業に対する影響については「保護主義を強めた場合、影響が及ぶ可能性がある」と懸念。為替相場の反応に注視が必要とした。

 
 

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