アカマツ
Pinus densiflora Sieb. et Zucc.
マツ科 裸子 常緑高木
分布 北海道〜九州
高さ 30m(直径1.5m)
花の時期 4〜5月

幹は赤茶色で、真っすぐに立つ。葉は、長さ7〜10cmあり、針のようで枝の先にたくさん集まってついているが、よく見ると2本が1組になって、根もとでくっついて、そこに小さな茶色の部分がある。この部分は枝で、とくに短枝という。本当は、葉は枝にたくさんつくのではなくて、短枝に2本ついているのである。アカマツには、葉をつける短枝と、体を支えるふつうの枝である長枝の2つの枝がある。マツのなかまはみなこのような枝をもっている。春4月、枝の先から、10cmくらいの新芽が急にのび、その根もとにたくさんの雄花、新芽の先に2〜3個の雌花がつく。雄花は、茶色でイモムシのようで、長さ1cmくらい、雌花は卵形で赤く、長さ1cmくらい。雌花は次の年の秋に松かさとなって、なかから長さ4〜5mmで、長い翼をもった種子が出てくる。

海岸よりも、内陸で多く見られる。少しかわいた里山には、ふつうであるが、最近
ものすごい勢いで枯れており、まったく見られなくなった地方もある。中国地方の山の大部分にはアカマツの林が茂っていたが、現在は、枯れ木が果てしなく続いていたり、もはや、アカマツ林ではなくて、別な種類の林となったところも多い。

日本では、北海道をのぞく各地で、明治の中ごろから何回もアカマツとクロマツがたくさん、しかも、短い期間に、枯れてしまうことがおきてきた。その原因は長いあいだ分からなかったが、1970年ころから、研究者たちの非常な努力で明らかとなった。それは、日本に昔からすんでいた昆虫であるマツノマダラカミキリと、アメリカから新しくやってきた、長さが1mmより小さいミミズのような体のマツノザイセンチュウの共同作戦であった。センチュウは直接にマツを枯らし、カミキリは枯れたマツに卵をうむ。マツの幹のなかで成長した幼虫は、成虫になるとき、体にセンチュウをたくさんつけて幹から飛び出し、新しいマツにうつる。こうして、センチュウを新しいマツに運ぶのである。この被害からマツを守るには、今のところ農薬しかない。

1本より、アカマツ林として見られることが多い。たいていは、人が植えた人工の林である。それは、太い幹が材木として利用価値が高いからである。材にマツヤニがあって腐りにくいので、水のなかに打ちこむ土木用の杭や、電車の線路を支えるまくら木、木の船などに使われた。しかし、これらの利用はコンクリートやほかのものに変わり、アカマツ材の利用はかえりみられなくなってきた。アカマツの材は焼きものを焼くマキとして、すぐれているが、それに使われる量は少ない。

アカマツはクロマツと共に、日本人の生活に昔から深く関係しており、マツは風景をつくる樹木として大切にされてきた。しかし、大昔、縄文時代の日本は、深い広葉樹の森でおおわれ、マツが生育できなかったという。アカマツの自然林は、日本人が広葉樹の森を破壊するようになってマツが育つ場所ができてから急にふえてきたのである。

アカマツの変わった利用に、花粉のだんごがある。韓国では、花粉を蜂蜜で練って、だんごにする。結婚のお祝いの席で、大きな皿の上にきれいに山になるように盛りつけて飾られる。このだんごは健康によく、夏負けを防ぐ。松葉酒というのもある。アカマツの葉を砂糖と水を入れたビンにつめこみ、発酵させる。3〜4年おくとうまくなるという。

学名のPinusは、山を意味するケルト語がもとになり、ラテン語ではマツをさすよ
うになった。densifloraは、「密に花がつく」の意味。和名の松は、どうしてつけられたか、その理由は分からない。クロマツがある。クロマツは幹が黒く、葉が大きいので、雄松といい、アカマツは幹が赤く、葉がやさしいので、雌松という。どちらも、短枝に2本の葉がつき、二葉松という。これに対する、5枚の葉の五葉松には、高山に生えるハイマツ、盆栽になるゴヨウマツ、松の「実」が食べられるチョウセンゴヨウなどがある。