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原沢久喜 強さの秘密

リオデジャネイロ柔道競技(五輪)男子100kg超級にて銀メダルを獲得し、2019年に開催された柔道グランドスラム・デュッセルドルフと全日本選抜柔道体重別選手権大会を制して、2019世界柔道選手権東京大会の代表選手に選ばれた原沢久喜。
2017年にスランプに陥るも、復帰後の試合からどんどん結果を取り戻し、東京五輪(柔道)に出場が決まれば2連続五輪(柔道)出場となる期待の選手だ。一心不乱に柔道に打ち込むストイックな姿勢で、2019世界柔道選手権東京大会で優勝を狙う。

※2019年9月2日現在

原沢 はらさわ  久喜  ひさよし

原沢久喜
生年月日
1992年7月3日
所 属
百五銀行
出身道場
大西道場
出身大学
日本大学
2017年
  • 柔道グランプリ・デュッセルドルフ 100kg超級 2位
  • 全日本選抜柔道体重別選手権大会 100kg超級 3位
2018年
  • 柔道グランドスラム・デュッセルドルフ 100kg超級 2位
  • 全日本選抜柔道体重別選手権大会 100kg超級 2位
  • 全日本柔道選手権大会 優勝
  • バクー世界柔道選手権大会 100kg超級 3位
2019年
  • 柔道グランドスラム・パリ 100kg超級 2位
  • 柔道グランドスラム・デュッセルドルフ 100kg超級 優勝
  • 全日本選抜柔道体重別選手権大会 100kg超級 優勝
  • 東京世界柔道選手権大会 100kg超級 2位

原沢久喜 とは

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2019年全日本選抜柔道体重別選手権大会 表彰式

日本重量級の第一人者として一番に名前が挙がるのが、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)銀メダリストの原沢久喜だ。世間一般で言うところの「エリート選手」ではない。原沢は小さい頃から才能にあふれていたわけではなく、地道に少しずつ強くなってきた選手である。

山口県早鞆高校に入学時、原沢は173cmで66kg級という平凡な体格の柔道選手だった。そこから急ピッチで階級を上げていく。2年に上がると81kg級に、2年の後半には90kg級に、そして3年になると100kg級にまで上げたのだ。体重の増加とともに身長も190cmまで伸びている。体を大きくするために原沢は食事の量や回数を増やして、苦しくてもとにかく食べたと言う。

当時、早鞆高校の柔道部員はわずか7名だった。決して恵まれた環境ではなかったが、顧問の中村充也先生の指導により、原沢は基礎をしっかりと身に付けていく。

高校3年生のときには、全国高等学校総合体育大会(インターハイ)柔道競技大会で3位に輝いた。続く全日本ジュニア柔道体重別選手権大会でも準優勝を飾る。こうして実績は残したものの、優勝の壁は厚いと原沢は痛感した。

2019年全日本選抜柔道体重別選手権大会

日本大学に入学すると、柔道により真剣に取り組むようになる。その甲斐もあり、2年生のときには、全日本学生柔道体重別選手権大会で優勝。さらに講道館杯全日本柔道体重別選手権大会でも頂点に立つ。

ただし、大学3年のときの全日本柔道選手権大会では、決勝で穴井隆将に「指導」ひとつの差で惜敗する。

2015年からは日本中央競馬会の実業団チームに入った。原沢は実業団1年目でありながら、素晴らしい活躍を果たす。3度目の全日本柔道選手権大会では、苦手にしていたライバルの王子谷剛志旭化成)を準決勝で破り、決勝でも2014年の世界柔道選手権大会・銀メダリストの七戸龍九州電力)から、小外刈りによる「有効」を奪い日本一に輝く。

その後も、柔道グランドスラム・チュメニ、柔道グランドスラム・パリなどを破竹の勢いで制覇した。結局、原沢は2014年から2016年まで国際大会7連勝を達成。そして、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)代表の座もつかんだのである。

リオデジャネイロ柔道競技(五輪)では決勝まで勝ち進み、重量級の絶対王者であるテディ・リネール(フランス)と戦った。絶対王者を今一歩のところまで追いつめたが、「指導」ひとつの差で惜敗。それでも銀メダルは輝かしいキャリアである。

2019年全日本選抜柔道体重別選手権大会

100kg超級では名実ともにトップに立った原沢だが、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)後はまるで別人になったかのように失速してしまう。

2017年の柔道グランプリ・デュッセルドルフ全日本選抜柔道体重別選手権大会で影浦心(日本中央競馬会)に連敗。全日本柔道選手権大会では、百瀬優(旭化成)に絞め落とされるという屈辱的な負け方をした。

それでも、これまでの実績から同年のブダペスト世界柔道選手権大会の代表には選ばれた。しかし、2回戦で格下の選手に優勢負けしてしまう。原沢は絶不調に陥ってしまったのだ。

その後、原沢は柔道を離れて、休むことになる。医師にオーバートレーニング症候群の診断をされたからだ。

オーバートレーニング症候群とは、過剰なトレーニングやストレスなどが原因となり、疲労が慢性的に続く病気のことである。原沢のストイックさ、常に自分を追い込んで練習する真面目さが裏目に出たと言えるだろう。重量級エースの故障は、日本柔道界に大きな衝撃を与えることになった。

原沢が復帰したのは、2018年の柔道グランドスラム・デュッセルドルフだ。病み上がりながらも決勝まで駒を進める。決勝は、消極的な試合により王子谷と両者反則負けにはなったが、決勝まで残ったので、まずまずの復帰戦と言える。

同年の全日本柔道選手権大会は苦労しながらも、3年ぶり2度目の優勝を果たす。バクー世界柔道選手権大会では3位となり、原沢は復調の兆しを見せた。

そして2019年、原沢はさらに調子を戻している。柔道グランドスラム・デュッセルドルフ全日本選抜柔道体重別選手権大会を制して、2019世界柔道選手権東京大会の代表選手に選ばれたのだ。このまま勝ち進めば、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)に続き東京五輪(柔道)にも日本代表として出場できるだろう。

2019年全日本選抜柔道体重別選手権大会

原沢は東京五輪(柔道)に覚悟を持って臨んでいる。その覚悟は2018年に所属していた日本中央競馬会を辞めたことからも分かるだろう。退職した理由を「退路を断って覚悟を決め、東京五輪(柔道)までは柔道だけに集中したい」と、自分なりの言葉で語った。

日本中央競馬会にいれば、会社はバックアップ体制を整えてくれただろうし、仕事においても融通を利かせてくれたことだろう。それなのに、原沢はあえて自分を追いこむために茨の道を選んだのだ。金メダルにかけるすさまじい覚悟である。

約1年、所属なし。いわゆる「フリー」という立場で柔道に取り組んだ。その間は、貯蓄を切り崩す生活だったと言う。そんなところに、三重県に拠点を置く百五銀行が全面的なサポートに名乗りを上げ、嘱託社員契約が結ばれることになった。力強い援軍を得た原沢は、これで東京五輪(柔道)に向け、全力を尽くせる体制は整ったと言えるだろう。

2019年全日本選抜柔道体重別選手権大会

原沢が東京五輪(柔道)で金メダルを目指すならば、絶対に警戒しなくてはならない選手がテディ・リネールだ。前述したように、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)の決勝で原沢を破っている。204cmという大柄の選手で、組み手の巧さ、強さが際立っている。実際にリオデジャネイロ柔道競技(五輪)の決勝でも、テディ・リネールは原沢に組ませる隙を与えなかった。

2017年末から長期の休養に入っていたが、最近になり復活した。2019世界柔道選手権東京大会に出場するかは不明であるが、東京五輪(柔道)を目指すことは表明している。原沢としては、リオデジャネイロ柔道競技(五輪)決勝のリベンジを果たしたいところだろう。

また、近年の100kg超級では選手層の変革が起きている。100kg級の実力者が何人も、100kg超級に階級を上げてきているのだ。元来の100kg超級選手に比べると動きが早く、スタミナも豊富。パワーでも遜色なく、かなりやっかいな存在となっている。

例えば、ルカシュ・クルパレク(チェコ)、ヘンク・フロル(オランダ)である。ルカシュ・クルパレクはリオデジャネイロ柔道競技(五輪)の100kg級で金メダルを獲っている実力者。そして、ヘンク・フロルはロンドン柔道競技(五輪)の100kg級で銅メダルを獲っているベテラン選手だ。

この2人は手強いので、東京五輪(柔道)や、これからの国際大会で戦う場合は要注意である。しかし原沢は、100kg超級としては大きくも小さくもないが、大きい選手とガップリと組み合って戦える上、小さい選手に動きで翻弄されることもそうはない。しっかりと組み合うことさえできれば、原沢の内股や大内刈は、誰が相手でも一発で仕留める威力を持つだろう。

待ち受けるライバルたちを倒して、原沢は悲願の金メダルを手にすることができるのだろうか。所属していた実業団チームを辞めてまでして、一心不乱に柔道に打ちこむストイックな姿は一際まぶしい。少年の頃から原沢が地道に積み上げてきた努力が大きな実を結ぶ瞬間を、日本中が待っている。

※ 掲載内容は2019年6月30日までの実績とインタビューからの情報になります。

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リオデジャネイロ柔道競技(五輪)男子100kg超級にて銀メダルを獲得し、一度スランプに陥るも、2018年から再び好成績を残してきました。五輪(柔道)2連続出場を目指し、持ち前のストイックな柔道で2019世界柔道選手権東京大会に挑む、原沢選手の活躍に期待しましょう。

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