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ー 子育てと東京通いで疲弊する日々も
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ー 葛藤はあったがどうにかなるもの

「都会を離れる不安は確かに大きかったです」

 そう語るのは、タレント・女優の井上晴美さん(49)。海外留学中に知り合った男性と2005年に結婚。夫のたっての希望で、長男の出産を機に長野へと移住する。

夫は子育てを田舎ですることが理想でした。私自身は、まだまだ東京で暮らすと思っていましたし、子育ても東京でと考えていた。

 都会での子育ては、便利なものに頼れるのでメリットが大きいですよね。私はアートが好きなので、本当は美術館や博物館、水族館などすぐに電車で行ける環境がよかったんです」

 引っ越し先は東京とは180度違うのどかな場所。そんな環境の中での子育ては戸惑うことの連続だった。

子育てと東京通いで疲弊する日々も

「縁もゆかりもない土地でしたし、まだ子どもが小さかったので。育児の悩みなどで気持ちがつらくなったときに、誰かに相談したいと思っても、誰にも会えない。孤独を感じたこともあって、精神的にはしんどい時期でした」

 ドラマの仕事で長野と東京を往復することもあった。忙殺される日々に、追い詰められるようになったという。

「新幹線に乗れる時間帯に帰ってこられるとも限らない。車だと片道3時間くらいの運転。あまりの疲労でパーキングエリアで寝てしまったこともありました」 

 そんなハードな日々の中で、長野では自給自足の生活もしていた。災害があっても、自給自足ができれば安心な部分もあるからと、夫婦で話をして決めた。

「夫はそういう生活が好きなんです。電気やガスは普通にあったのですが、田んぼを借りてお米とか野菜を作って。農作業に使う機械も持っておらず手作業でしたが、地元の方が手伝ってくれたり、機械も貸してくれて助けてもらうこともありました」

 今思えば、それも貴重な時間だったと振り返る。

 '11年、第3子の誕生とともに、今度は出身地でもある熊本県に移住。しかし、’16年、熊本地震で被災者となる。自宅も全壊し、車やテントでの避難生活を強いられたこともあった。

「電気もガスも水道も止まってサバイバルしているようでした。そこだけ時が止まって、隔離されているような。映画を見ているような感覚でした」