オオヒヨドリバナ

オオヒヨドリバナ(キク科)[大鵯花]

名は、広義のヒヨドリバナのうち、キクバヒヨドリより大型であることからついたもの。ヒヨドリバナの名は、ヒヨドリの鳴く頃に咲くからというが、何か素直に納得がいかないものがある。ヒヨドリの鳴く季節にはほかにもたくさんの種類の花が咲いているだろうに、なぜこの花なのか。ほかに、葉をヒヨドリの翼に見立てたという説、花がらを乾かして火口(ほくち)に使ったので火熾し花(ひおこしばな)の転という説がある。
ヒヨドリバナ属は極めて変異が大きく、また交雑も多いので分類は難しい。かつて単にヒヨドリバナといわれていたものは、現在では葉が3裂する2倍体のキクバヒヨドリ(有性生殖)と倍数体(3倍体)のオオヒヨドリバナ(無性生殖)に分けられている。なお、普通に見られるものは倍数体のオオヒヨドリバナのほうで、ヒヨドリバナ(倍数体)ともいう。

秋のやや乾いた野山に普通に生育し、上部で盛んに分枝して高さ1-2mになる多年草。フジバカマのような香気はほとんどない。茎に縮れた短毛があってざらつく。根茎は短い。
葉は薄く、長さ1-2cmの柄があって対生し、普通は分裂しない。葉身は長さ10-18cm、幅3-8cmの卵状長楕円形~楕円形で縁に鋭い鋸歯があり、先は短くとがり基部はくさび形で急に狭くなって柄となる。両面に縮れた短毛を散生し、裏面に腺点がある。葉形は変化が大きい。しばしば葉に黄色い斑紋が入るものがあり、キンモンヒヨドリとかキモンヒヨドリとよばれることもあるが、単にジェミニウイルスの一種に感染した病変株。
頭花は中部から上の枝先にややまばらな散房状につく。頭花は5個の両性の筒状花からなり、総苞は長さ5-6mmの円柱形。外片は乾膜質で外側ほど短い。花床は平たく、浅い小穴がある。花冠は白色でまれに紫色を帯び、5歯がある。雌しべは1個で花柱は2裂して花冠から長く飛び出る。
痩果は長さ3mmの5角柱で切頭、腺点と毛がある。冠毛は1列、同長で白色。

キクバヒヨドリは2倍体で葉がふつう3裂するが、その裂け方にはさまさま変異がある。
よく似たサワヒヨドリは分枝せずにまっすぐ茎を立たせ、葉は無柄。またヨツバヒヨドリは葉が4輪生することで区別する。環境省レッドリスト準絶滅危惧(NT)のフジバカマは茎の下部は無毛で葉が3深裂する。
花期:8-10月
分布:北・本・四・九
撮影:2017.7.28 神奈川県横須賀市
オオヒヨドリバナ-2
花が紅紫色を帯びるもの。 1999.9.11 青森県新郷村

オオヒヨドリバナ-3
2019.7.5 川崎市多摩区

オオヒヨドリバナ-4
頭花は5個の筒状花からなる。長い2個の花柱が伸びる。 2019.7.5 川崎市多摩区

オオヒヨドリバナの葉
ジェミニウイルスの一種に感染した株の葉。キンモンヒヨドリとよばれる。 2018.5.31 川崎市多摩区

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