上毛かるたの読み札「力あわせる二百万」が近く、「力あわせる百九十万」に変わりそうだ。群馬県の人口減少が続き、早ければ年内にも190万人を割り込む可能性があるためで、かるたの発行元である県文化振興課が準備をしている。30年ぶりの読み札変更に、関係者は「慣れ親しんできた札だが、時代の流れであり、仕方がない」と受け止めている。

現在の上毛かるたの「ち」の絵札と読み札(群馬県提供)
移り変わってきた上毛かるたの「ち」の札(群馬県提供)

 群馬県の移動人口調査によると、9月25日に発表された9月1日時点の県人口は190万1375人。8月1日時点(8月25日発表)は190万1803人で、この1カ月でおよそ400人減った。県文化振興課は「人口の変化に応じて、『力あわせる』の札を変えてきた。今回もその基準に合わせる」と説明する。昨年秋の1カ月の減少幅が900~1000人程度だったことから、早ければ年内、遅くとも来年前半には割り込むとみているといい、「いつのタイミングで札を変えるかを検討している。混乱がないようにしたい」(同課)とする。

 

 「力あわせる―」の読み札は1947年の初版では百六十万だった。その後は人口が増えるたびに10万人単位で改訂。73年に百七十万、77年に百八十万、85年に百九十万となり、93年に現在の二百万となった。一方、県人口は2004年7月の203万5477人をピークに、05年以降は減少。県の人口推計によると、29年にはおよそ180万人に落ち込むという。

 上毛かるたの県大会を開いている群馬県子ども会育成連合会の高橋清事務局長は「人口が190万人に減っても、県民生活にあまり影響はないと思う。ただ、群馬の人は上毛かるたで人口を強く意識する。これまで増加してきた『ち』の札が初めて減少に転じるので、寂しさを感じる人がいるかもしれない」と推察する。

 小中学生が火花を散らす上毛かるたの競技の世界でも、読み札変更はほとんど影響がない。県大会は毎年2月に、地区大会は1月までに開かれるが、たいていの場合、「力あわせる」が読まれた瞬間に札は取られ、二百万か百九十万かは競技の上では意味を持たないからだ。ただ、高橋事務局長は「読み札変更の決定があれば、すぐに対応を考える」と万全を期す。

 上毛かるたの読み手を務め、県大会で30年以上読んできた藤岡市の松原東さん(81)は「人口減少は社会の流れで、読み札が変わるのはやむを得ない。読み手としては『二百万』に慣れ親しんだが、子どもたちの真剣勝負を邪魔しないよう、正確に読むだけ」と話す。

 大人向けの上毛かるた日本一決定戦(KING OF JMK)を主催し、10月21日に高崎市で第8回大会を開く渡辺俊さんは「読み札変更はショックだが、日本全体で人口が減っており、仕方のないこと。上毛かるたを通じて群馬の魅力をアピールしていきたい」としている。

 上毛かるたの「ち」の札以外の読み札変更は00年、「滝は吹割 片品渓谷」について、滝の正式名称に合わせて読みを「ふきわり」から「ふきわれ」に変えている。