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シリーズ「私の生き方」(1)

 同じ日本の国に生まれながら、国籍が違うことだけで、いわれなき差別を受け続けてきた在日韓国・朝鮮の人たち。現実に目をつぶり、日本人として生きれば問題はないという人も増えてきています。しかし、自分の存在を明らかにしなければ、自分の歩む道は拓けなかったという「高槻むくげの会」事務局長の金博明(キム・パンミョン)さん(38歳)。過去の歴史を学び、差別に声を上げ、差別と向き合ってこそ、日本人との共生の道があるといいます。在日三世・金さんの生き方は、在日韓国・朝鮮人が日本人とともにイキイキと暮らせる社会づくりを目指す「高槻むくげの会」の歩みでもあります。

日本が僕の生まれ故郷なんや 高槻むくげの会 事務局長 金博明さん

 大阪・京都のベッドタウン、高槻市。市内、文教地区にあたる高槻市立第一中学校の古い空き教室を利用して「高槻むくげの会(李敬宰会長)」がある。会員数、約300人。その名前どおり、民族の花「無窮花(むくげ)」のように、発足以来、地道な歩みの30年だ。
 アジメ(おばさん)たちの識字教室「アジメ学校」やオモニ(母親)のため学習会「オモニの会」をはじめ、市内4カ所で学校の勉強を見たり、一緒に遊んだりする「地域子ども会」を運営。他にも、日本の子どもと一緒にチャンゴや朝鮮語を学ぶ「民族文化講座」や「こども日本語教室」、「高校生の会」を開くなど、次代を担う子どもたちとその親たちも引き込んでの意識運動をコツコツと続ける一方で、根強い民族差別に対して全国でも先頭に立って声を上げてきた会である。
 事務局長・金博明さんの言葉をかりれば、「むくげの会の発足は、少年たちの目覚め」だった。高槻市の成合地区には『タチソ』と呼ばれる「高槻地下倉庫」が今も存在する。戦争中、強制連行された朝鮮人労働者を使って造らせた地下軍事工場だ。
 1960年代後半、その成合地区にあった朝鮮人集落では、きびしい差別や生活困難から、非行に走る中学生が多く、ある中学教師が彼らを集めて歴史や人権などについての民族教育を行った。そのなかで「このままではいけない」と本名を名乗り、立ち上がった卒業生らが起こした会である。

自分の立場を隠して生きたくない

金博明さん 金博明さんの人生の再スタートも、大学入学を機に本名を名乗ることから始まった。
「生まれたのは、滋賀県の小さな朝鮮人部落。当時は、近くにブタ小屋があり、道路の舗装もされない部落には、近づくとニンニクのにおいが漂い、朝鮮語が飛び交い、友だちを連れてくることもできなかった。仕事をしない父親も、集まるたびにケンカをする親戚も、部落そのものもイヤでたまりませんでした」
 周りは承知のうえとはいえ、小学校に入った時点で、子どもながらに「韓国人という立場は隠さなあかん」という意識が強く、名前も日本名を使ってきた。学校では、家の話題にはいっさいふれない子。勉強もできない、太っていたことで駆けっこも遅く、劣等感のかたまりだったと話す。
 高校の頃から強まったのが「この地域からなんとかして抜け出したい」という思いだ。それを内に秘め、耐えるようになっていく。もう自分の立場を隠して生きたくなかった。外国人に対する差別問題に関心をもち、自分なりに闘っていかなければという思いも強まった。
 三重大学に入って、初めて使った本名。日本には在日韓国・朝鮮人がいっぱいいることを、そして、自分の存在をみんなに知ってほしかった。
「でも、大学で驚かされたのが、学生たちが過去の歴史をまったく知らないことでした。金という名前でも、みんなは日本人と思ってしまう。在日が全国に100万人近くもいて、生きづらいために名前を変えていることさえ知りませんでした」
 外国人登録法で義務づけられた指紋押捺の拒否運動が1982年から起こり、大学でもサークルをつくって取り組みを続けた。そうした活動で「民族差別と闘う連絡協議会」とかかわるようになり、「むくげの会」と出会うことになった。大学卒業後の1985年に、高槻市の多文化共生国際理解教育事業の職員として就職でき、現在は市の教育事業と並行して、同会の活動を続けている。

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