特集 スポーツクローズアップ2009

尊敬集めた「愛ちゃん」

 女子テニスの杉山愛が9月、体力的、精神的な限界を理由に現役引退を表明した。世界ランキングトップ10入りや、ギネス記録に認定された歴代最多の四大大会連続出場記録(62回)など、大きな足跡を残した34歳の決断は、一つの時代が終わった印象を強くした。
 引退表明後、現役最後の大会として出場した東レテニス。ダブルスでペアを組んできたダニエラ・ハンチュコバ(スロバキア)ら国内外の多くの選手が涙を流す姿が、杉山の存在感の大きさを表しているようだった。競技への真摯(しんし)な姿勢が尊敬を集め、その人間性は誰からも好かれた。アテネ五輪でダブルスを組み、4位入賞した浅越しのぶさんは「杉山さんはコミュニケーションをすごく取る選手で、やりやすかった。引っ張っていく力を強く感じた」と話す。杉山に続いてラケットを置いた森上亜希子も、偉大な先輩の影響を口にする。「愛ちゃんがトップにいて引っ張ってくれ、道しるべをつくった。わたしたちもやればできると思ってプレーしてきた」
 流ちょうな英語で外国選手とも理解を深め、親しみやすさに報道陣からの人気も高かった。「いつも応援され、メディアに関して困ったことはなかった」と杉山。第一線で活躍し続けられた理由の一つには、前向きで、周囲を味方に付けてしまうキャラクターの力もあったかもしれない。
 引退後はプロ野球の始球式やファッション誌のイベントなどに引っ張りだこ。「今までできなかったことにチャレンジして、また大きな夢を見つけられたら」。後進の指導やテニス界への貢献にも意欲を示す第二の人生も注目を集めそうだ。(2009/12/04)

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