【特集】日本の震災

長野県西部地震(1984年)

 昭和59(1984)年9月14日午前8時48分、長野県西部の王滝村付近を震源としてマグニチュード6.8の地震が発生した。震源が地表から約2キロと浅かったことから、王滝村は激烈な揺れに襲われ、震源地に近い木曽・御嶽山の南側斜面で大規模な山体崩壊が起こり、これに巻き込まれて死者・行方不明者29人という犠牲が出た。王滝村には地震計がなく、正確な揺れの程度は分からないが、生存者の証言や現場の状況から震度6程度はあったものとみられている。

 長野県西部地震の被害は、御嶽山の山体崩壊に伴う土石流と岩屑(がんせつ)流によって発生した。土石流は大量の水を含んだ土砂が一気に斜面を流れ下る現象で、地震の数日前から雨模様で御嶽山の斜面はかなり緩んでおり、地震の震動で4カ所が崩壊して大規模な土石流が発生した。岩屑流は、空気など低温の気体と岩のかけらが一体となって斜面を流れ下る現象で、「山津波」と呼ばれることもある。この時は御嶽山の8合目付近から約3600万立方メートル(東京ドーム29杯分)の土砂が地震で崩れ、およそ11キロの距離を平均時速80キロで流下した。この土石流と岩屑流で川がせき止められ、自然のダム湖ができたほか、600ヘクタールの森林が消失して山肌がむき出しとなり、御嶽山の山容を大きく変えた。

 この地震は、プレート内部のごく浅い地点での岩盤崩壊が引き金になっているとみられるが、その発生メカニズムはいまだ未解明だ。震源付近に揺れを引き起こした断層があるのは間違いないものの、地盤に蓄積されたゆがみが放出されるまでの過程がよく分からない。さらに、御嶽山の火山活動との関連性も明確にはなっておらず、謎の多い地震とされている。

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