甲子園球場、節目の100年 歴史と伝統引き継ぐ
高校野球の「聖地」とされ、プロ野球阪神の本拠地でもある阪神甲子園球場は、今年で開場100年を迎える。数々のドラマを生んだ舞台の記念すべき年に、球場内の甲子園歴史館などではイベントを開催中。米大リーグ・レッドソックスの本拠地であるフェンウェイ・パーク、カブスのリグリー・フィールドとともに世界でも古い歴史を誇る野球場は、ファンの特別な場所となっている。
1934年の日米野球。関係者に伝わる話によると、グラウンドに立ったヤンキースのベーブ・ルースは思わず「トゥー・ラージ(なんて広いんだ)!」とため息をついたという。すり鉢状で本塁から外野フェンスまでが遠く、5万人を収容するスタンドなど威容を誇る球場は、本場のスーパースターの度肝を抜いた。選手だけではなく観戦客に強烈な印象を与える球場であることは、今も変わらない。
24年8月1日、鉄筋コンクリート造りで50段のスタンドを持ち、鉄製の大鉄傘(だいてっさん)で覆われた内野席などを備えた「甲子園大運動場」として誕生。こけら落としとして阪神電車沿線150の小学校から2500人が集まり、陸上競技大会が行われた。同13日から、第10回全国中等学校優勝野球大会(現在の全国高校野球選手権大会)を実施。翌25年、名古屋・八事(やごと)の山本球場で前年行った第1回大会から会場を移し、全国選抜中等学校野球大会(現在の選抜高校野球大会)が開催された。
甲子園球場はその後、各競技の晴れ舞台となる。戦前、馬術やスキーのジャンプ、サッカーなど全国規模の大会を実施。野球だけではなく、「ダンス甲子園」「和菓子甲子園」など、高校生が主役となり日本一を決定する全国大会の権威付けの意味合いでも例えられるようになった。
2022年、ナイター照明を発光ダイオード(LED)化。昨夏、100周年記念事業の一環として、現在は内野席を覆う銀傘をアルプススタンドまで拡大する構想を発表した。省エネや、年々激しくなる炎天下での熱中症対策にも配慮。人に優しいスタジアムとして、進化し続けている。球場長の向井格郎氏は、「先人たちが築いてきた歴史と伝統を引き継ぎながら、挑戦の精神を忘れずに、次の100年に向けて歩みたい」としている。