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ウクライナ・中東で対立回避 米、議長国権限で「補足」―アジアの安定演出も成果乏しく・APEC

配信
17日、米サンフランシスコで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で発言するバイデン米大統領(右から3人目)(EPA時事)

17日、米サンフランシスコで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議で発言するバイデン米大統領(右から3人目)(EPA時事)

  • バイデン米大統領(左)と中国の習近平国家主席=15日、米サンフランシスコ近郊(AFP時事)

 米サンフランシスコで17日に閉幕したアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の首脳宣言は、ロシアによるウクライナ侵攻や、多数の死傷者を出しているイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突に一言も触れなかった。米国は首脳間で見解が異なる両問題について、議長国の権限で公表できる議長声明で討議内容を「説明」。亀裂の表面化を避けながら、首脳宣言を補足することで精いっぱいだった。

 ◇首脳宣言ガザ明記に「反対」

 議長声明は、ウクライナ侵攻と、イスラエルの地上作戦で人道状況が極度に悪化しているパレスチナ自治区ガザ情勢という二つの危機を巡る首脳間の議論を、簡潔に総括した内容だ。

 ガザ情勢に関しては「一部の首脳は、地政学的問題を討議する会議ではないとして、首脳宣言に盛り込むことに反対した」と指摘。サウジアラビアで11日に開かれたアラブ連盟と「イスラム協力機構(OIC)」の合同首脳会議で採択された、イスラエル非難の共同声明への連帯を示した首脳もいたと明かした。

 ロイター通信によると、イスラム教徒の多いインドネシアやマレーシア、ブルネイは閉幕後、ガザでの軍事作戦の即時終了をイスラエルに求める共同声明を発表した。米国はイスラエル支持を貫いており、ガザ情勢で各国首脳が一致した見解を打ち出すことは事実上、不可能だった。

 ウクライナ侵攻に関しても、ロシアを糾弾する日米と、ロシアや同国との連携を重視する中国との隔たりは大きく、文言調整は難航した。バイデン米政権には、議長声明で取り上げる形にとどめ、議論を収める以外の道は残されていなかった。

 ◇中国との溝露呈

 バイデン大統領は15日、首脳会議開幕に先立ち中国の習近平国家主席と会談し、軍当局間の対話再開などで合意し、衝突回避を目指す姿勢を国内外に印象付けた。APEC期間中も、たびたび非難してきた中国の「経済的威圧」にほとんど触れず、友好ムードの演出に腐心した。

 ウクライナ侵攻の長期化に加え、中東危機が深まる中、バイデン政権にとって、アジア太平洋地域で中国との対立の構図が先鋭化するのは避けたい事態だった。国内経済の立て直しを最重視する習氏の思惑もあり、バイデン氏はAPECの場を利用して中国と協調ムードを演出し、アジアの安定をアピールしてみせた。

 だが、習氏との会談では、台湾問題で議論が平行線をたどるなど、根本的な溝を覆い隠すことはできなかった。バイデン政権が地域経済活性化で主導権を取り戻そうと進めてきた新経済圏構想「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」交渉も、貿易分野での実質合意が見送られた。

 首脳会議は結局、大きな成果に乏しいまま終了した。バイデン氏は17日の閉幕後、記者会見を開かずに大統領専用機に乗り込み、サンフランシスコを後にした。(サンフランシスコ時事)

最終更新:

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