• X
  • facebook
  • hatena-bookmark
  • コメント

和平機運は霧消 ユダヤ人入植者の襲撃増加―パレスチナ「民衆蜂起」望む声・オスロ合意30年

配信
【図解】パレスチナ自治区・ハワラ

【図解】パレスチナ自治区・ハワラ

  • ユダヤ人入植者の投石などから身を守るために鉄網を張ったベランダで娘と過ごすユセフさん=5日、ヨルダン川西岸北部ハワラ

 【エルサレム時事】イスラエルとパレスチナ解放機構(PLO)が1993年9月、パレスチナの暫定自治を認めるオスロ合意に調印してから13日で30年。パレスチナ国家を認める「2国家共存」実現への道が開かれたが、聖地エルサレムの帰属など中核的問題を巡る和平交渉は難航し、2014年に暗礁に乗り上げた。占領地ヨルダン川西岸ではユダヤ人入植者による襲撃が急増。パレスチナでは新興武装勢力が生まれている。和平機運が霧消する中、暴力の連鎖は拡大する一方だ。

イスラエルと会談し混乱 抗議受け外相更迭―リビア

 ◇極右政治家が助長

 「ずっと標的にされてきたが、こんな規模は初めてだ」。西岸北部ハワラで生まれ育ったユセフさん(44)は、ユダヤ人入植者数百人が2月にこの集落を襲った事件を振り返った。

 襲撃は、ハワラで入植者2人が銃殺されたことへの報復だった。無差別に家屋や車に火を放ち、ユセフさんもトラックなどを失った。6歳の息子のおねしょが始まり、外出を怖がるようになった。「せめて子供らしく遊ばせてあげたい」と語る妻のラワンさん(33)も脳裏に刻み込まれた恐怖に苦しんでいる。

 国連は8月、入植者によるパレスチナ人や集落への襲撃が23年1月から半年間で591件あったと報告。集計し始めた06年以降最多となった昨年を大きく上回るペースで増えている。

 背景には、イスラエルで昨年12月、対パレスチナで強硬姿勢を取る極右政党と連立を組むネタニヤフ政権が発足したことがある。極右政党党首のスモトリッチ財務相はハワラを「壊滅させる必要がある」などと発言。入植者の過激化を助長しているとみられている。

 ◇自治政府に不信

 パレスチナ側による攻撃も増加している。イスラエル軍によると、8月21日時点で34人が死亡。昨年の死者数を既に超えた。

 元イスラエル軍作戦総局トップのイスラエル・ジブ氏は「パレスチナ自治政府が信用を失い、人生に絶望した20代のパレスチナ人がテロ組織に参加することなく独自に行動を起こしている」と指摘。「攻撃の阻止は困難だ」と述べる。

 さらに西岸では、ガザ地区を実効支配し自治政府に対抗するイスラム組織ハマス以外の新興武装勢力も活動を活発化させる。こうした状況に「歯止めをかける」(ネタニヤフ首相)として、イスラエル軍は7月、00年代の第2次インティファーダ(対イスラエル民衆蜂起)以降、最大規模の地上部隊を西岸に展開した。10人以上が死亡した。

 パレスチナでは、和平を実現できず、汚職がはびこる自治政府やハマスなど既存組織への不信感が高まっている。西岸とガザで行われた世論調査では、7割が新興武装勢力の誕生を歓迎する。過半数が新たな「民衆蜂起」を望むなど衝突激化への緊張が高まっている。

最終更新:

関連記事

こんな記事も

国際用語

国際

ページの先頭へ
時事通信の商品・サービス ラインナップ