尹政権、統一省改革を推進 「北朝鮮支援省」から転換―韓国
【ソウル時事】韓国の尹錫悦政権が、南北関係を所管する統一省の改革を進めている。尹大統領は、北朝鮮への融和姿勢を取った文在寅前政権を念頭に、統一省がこれまで「北朝鮮支援省」の役割を果たしてきたと指摘し、転換を指示。対北朝鮮「強硬派」を同省トップに据え、交流や協力より人権問題などに重点を置いて取り組む方針を示している。
尹氏は7月28日、野党の反対を押し切る形で、統一相に金暎浩・誠信女子大教授を任命した。国際政治学者の金氏は、自身のユーチューブチャンネルで北朝鮮に対する過激な発言をしてきた強硬派。国際情勢に即した対北朝鮮政策を目指し、6月には、「米国通」外交官出身の文勝鉉・駐タイ大使が次官に就任している。
金氏は就任に際し「価値と原則に基づいて統一・対北朝鮮政策を推し進めていくことが、朝鮮半島問題を最も正しく解決し、統一を早める近道だ」と表明。冷却している南北関係を踏まえ組織改編に着手する考えを明らかにした。
韓国メディアによると、統一省は「交流協力局」や「南北会談本部」といった南北交流・協力に関する部署を一つに統合する計画。職員の15%に当たる80人以上の人員削減に取り組み、8月下旬にも改編が完了する見込みという。
一方で、拉致被害者や朝鮮戦争時の国軍捕虜を担当する統一相直轄の組織を新設。北朝鮮の人権問題への取り組みや、情報分析に重点を置く。尹政権は、普遍的価値である人権を掲げ北朝鮮に圧力を加える構えで、7月に尹氏は、「南北朝鮮の全ての住民が人間らしく生きることができる統一にならなければいけない」と述べている。
南北関係の特殊性に立脚し、協力や交流を進めてきた統一省の「存在意義が変わってくる」(韓国政府関係者)との指摘も出ている。革新系の京郷新聞は社説で「『対北朝鮮圧迫省』への変貌を始めた」と皮肉った。