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中国・アジアウォッチ シリーズ企画「転機の朝鮮半島」 (第2回)

文在寅政権が描く「朝鮮半島の新経済地図」

――南北経済共同体、北東アジア協力も視野

伊集院 敦
  首席研究員
李 燦雨
  特任研究員

2018/05/17

 韓国と北朝鮮が16日に南北軍事境界線上の板門店の韓国側施設「平和の家」で開くことで合意していた南北閣僚級会談は北朝鮮側の中止通告で無期延期された。4月27日に南北首脳が署名した「板門店宣言」の履行を確認し、南北間の対話と交流、協力のプロセスを軌道に乗せようとした韓国政府の思惑は、米韓合同軍事訓練などに対する北朝鮮の反発にぶつかった。文在寅大統領は「朝鮮半島の新経済共同体」や「朝鮮半島の新経済地図」の実現を目指すが、米朝関係がまだ正常化していない段階では北東アジアの関係国を巻き込む壮大な経済発展ビジョンの実現に向けて困難が少なくない。

「朝鮮半島の新経済地図」のイメージ図

【第2回のポイント】

① 韓国の文在寅政権は北朝鮮の核問題の解決と南北関係の発展を目指し、経済面では北朝鮮との経済協力を通じた「朝鮮半島の新経済共同体」の実現に動き出した。

② 具体的には朝鮮半島に3つの経済ベルトを構築する「朝鮮半島の新経済地図」を構想。中国の「一帯一路」構想やロシアの新東方政策などとの連携を図り、朝鮮半島から北東アジアに至る広域的な経済協力圏を形成する未来像を描いている。

③ 韓国経済は少子高齢化や途上国による追い上げなどの問題を抱えており、南北の協力で新たな成長エンジンを創出するのが狙いだ。政権には南北協力を通じて広範な支持を集め、政権基盤を固める狙いもうかがえる。

④ 構想の実現には国連などの制裁緩和が不可欠で、北朝鮮の非核化の進展が前提となる。南北関係は不安定な要素があり、協力の速度や進め方は同盟国の米国や日本との調整も課題となる。北朝鮮との協力事業は当面、政府主導にならざるを得ない。

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