新50ポンド札、ついに登場！悲劇の天才数学者への敬意がつまった新札

紙からポリマー（プラスチック）製のものへの刷新が進めれていた、イングランド銀行発行による新札シリーズ。５ポンド、10ポンド、20ポンド札に続き、最後の50ポンド札の流通が6月23日から始まった=写真。

2011年11月から旧50ポンド札の裏面に描かれたのは、ボールトン・アンド・ワット蒸気機関の開発・商品化に携わったエンジニア、ジェームズ・ワットと実業家のマシュー・ボールトン。

一方、新50ポンドの裏面の顔となったのは第二次世界大戦下、連合軍を勝利に導く働きをしながら、英国民にすらその功績を知られず、非業の死を遂げた天才数学者アラン・チューリング（Alan Turing 1912～54年）。6月23日は、そのチューリングの誕生日でもある。

1967年にイングランドおよびウェールズでホモセクシャル法が廃止されたが、チューリングのケースはこれに間に合わず、裁判の結果、チューリングは有罪となってしまう。2年の禁固刑、もしくは科学的去勢の判決が下され、入獄を逃れるためチューリングは科学的去勢を選択。しかし、女性ホルモンを投与され、身体が丸みを帯びるといった肉体的変化に苦しんだだけでなく、チューリングは精神にも変調をきたし、自死を選ぶ。1954年6月8日、遺体となって発見され、その横には青酸化合物が入った瓶とかじりかけのリンゴが転がっていたと言われる。41年の短い生涯だった。

チューリングが敵国の暗号解読に携わり、その活躍の舞台となったブレッチリーの存在を明らかにした著作「ウルトラ・シークレット」が1974年に発行され、人々は初めて政府暗号学校、そしてチューリングの偉大な功績を知るに至った。2009年にはゴードン・ブラウン元首相が政府を代表してチューリングに正式に謝罪。そして2013年、エリザベス女王により恩赦が発表され、チューリングの名誉は回復された。

なお、紙の旧50ポン札は、同じく紙の20ポンド札とともに、2022年9月30日を最後に使えなくなる。お手元にまだ旧紙幣がある場合は早めに使い切るか、ご自分の口座のある銀行で交換してもらうことをお薦めする。

チューリングに関するジャーニーの過去記事

ナチスの暗号を解読せよ！諜報基地ブレッチリー・パークを征く [Bletchley Park]

編集部制作の短編動画「悲劇の天才数学者アラン・チューリング」