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2024.02.21

雲の種類は10種類!高さなどの特徴やめったに見られない珍しい雲もご紹介!

旅先などでふと空を見上げると、珍しい雲に出会うことがありますよね。
そのとき、雲の種類や名前が分かったらいいなと思うことはありませんか?
積雲、積乱雲、乱層雲…。全部で何種類あるのでしょうか。

この記事では雲の名前や特徴を、高さ、天気、発生しやすい季節など、種類ごとに分かりやすく解説します!

記事配信:じゃらんニュース

雲の種類は10種類

(画像制作:じゃらん)
(画像制作:じゃらん)

刻一刻と形を変える雲。ひとつとして同じものはありませんが、すべての雲は、10種類のうちのどれかに分類することができます。これを「十種雲形」と呼んでいます。

まずは、10種類の雲をすべて見ていきましょう!ざっと高度が高い方から並べています。正式名と、よく呼ばれる通称を記しています。

巻雲(けんうん):すじぐも

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

高さ:5000~13000m【上層雲】
降水:なし

もっとも高いところに現れる雲のひとつ。ハケでさっと描いたような形をしているのが特徴です。

いかにも秋晴れといった雰囲気の雲ですね。でも、空気が澄んで晴れた日なら、季節や時間帯に関係なく現れます。糸のような形は、落下しながら風に流されているため。

高度が高いので、雲ができるところの気温はマイナス40℃以下。雲を形作っている水滴は、氷(氷晶)の状態です。

太陽の位置が低い時間帯は、太陽光が下部に反射して、明るく光って見えます。氷晶は水よりも光をよく反射するのです。

巻積雲(けんせきうん):うろこぐも、いわしぐも

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

高さ:5000~13000m【上層雲】
降水:なし

小さなかたまり状の雲が、同じぐらいの高さに並んで見える雲です。規則正しく並んだときの姿は、「うろこぐも」「いわしぐも」という呼び名がぴったり。

初夏から秋にかけてよく見られるため、うろこぐも・いわしぐもは秋の季語にもなっています。

後述の高積雲(ひつじぐも)と見分けがつきにくいのですが、高度が高く、一つ一つが小さいのが特徴。地上から見た見かけの幅が1度以下(腕を伸ばして指1本に隠れる程度)であれば巻積雲と考えて大丈夫です。

巻層雲(けんそううん):うすぐも

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

高さ:5000~13000m【上層雲】
降水:なし

うすぐもの名のとおり、空全体にうすく広がる雲。太陽や月のまわりに「かさ」をつくるのはこの雲です。

空全体が白くなったように見えますが、太陽の光はよく通すので、地上の明るさは晴れた日とほとんど変わりません。

低気圧や温暖前線が近づくと現れることが多く、天候が悪化する前兆とされます。ただ、この雲そのものが雨を降らすことはありません。

高積雲(こうせきうん):ひつじぐも

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

高さ:2000~7000m【中層雲】
降水:なし

小さなかたまり状の雲が集まって、羊の群れのように見えることから「ひつじぐも」とも呼ばれる雲です。古くからの呼び方では叢雲(むらくも)とも。

季節に関係なく現れますが、春から秋にかけてよく見られます。氷・水滴の密度が高いのでくっきりと白く、空とのコントラストが鮮明な雲です。

上の巻積雲(うろこぐも)との違いは、高度と大きさ。地上からの見かけ上の幅が1~5度ぐらいで、こちらの方が大きく見えます。

高層雲(こうそううん):おぼろぐも

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

高さ:2000~7000m【中層雲】
降水:ときどき

「高層」と名が付いても、高度は中ぐらい。空全体を広く覆う、モヤッとした雲です。

上述の巻層雲(うすぐも)との違いは、こちらは太陽の光をあまり通さないこと。太陽の位置がぼんやり分かる程度です。「おぼろぐも」という呼び名がピッタリ。

雲の中は、多くの場合、氷ではなく水滴。ときおり雨を降らせます。この高層雲がどんどん発達すると乱層雲になることもあり、その場合は本格的な雨に変わっていきます。

乱層雲(らんそううん):あまぐも

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

高さ:2000~7000m【中層雲】上下に広がることも
降水:あり(雨・雪)

雨を降らせる雲です。「乱」が付くのは雨を降らせることを意味しています。濃い灰色で重苦しく、太陽の光をさえぎって地上は暗くなります。

温暖前線や低気圧の接近によって湿った空気がつくる雲で、風の流れによって刻一刻と形を変えていきます。下の方にちぎれ雲がしばしば発生するのも特徴です。

層積雲(そうせきうん):うねぐも、くもりぐも

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

高さ:地上~2000m【下層雲】
降水:ときどき

いわゆるくもり空。これといって特徴のない、形をどんどん変える暗い色の雲です。「うねぐも」とは、畑の畝(うね)のこと。

形が変わるのは、高度が低く、地上の風や地形の影響を受けやすいため。大きなかたまりが群れになりますが、高積雲(ひつじぐも)のようには雲のエッジがはっきりせず、ちぎれたようにぼんやりすることが多いです。

この雲の切れ間から太陽の光が差し込むと、絵画のような「天使のはしご」が見られることがあります。

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

層雲(そううん):きりぐも

(写真:じゃらん)
(写真:じゃらん)

高さ:地上~1000m【下層雲】
降水:まれに霧雨

地上近くに細かな水滴が漂っている雲です。発生のメカニズム的には霧(きり)とほぼ同じ。その定義の違いは、地表から少し離れていると層雲、地表に達すると霧です。

湿気を多量に含んだ空気が地表付近で急に冷やされることで現れます。谷や盆地を覆うこともあり、それを高いところから眺めると「雲海」にもなります。

写真は島根県・津和野城。山頂のお城の下が雲海状態の層雲で、さらにその下の盆地の町なみは、別の霧に包まれているのが見えますね。

積雲(せきうん):わたぐも

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

高さ:500~2000m【下層雲】
降水:ときどき

白くふわふわとした、綿菓子のような雲です。上部に向かってはモコモコと発達しますが、下部(雲底)の高さがそろうのが特徴。

太陽に温められた地面が上昇気流を作り、ある一定の高度で冷えて雲になります。その高さ(対流凝結高度)はその時の気象条件によって同じなので、雲底がそろうのです。

水滴の密度が濃いため、太陽光を通しにくく、雲の下部は濃い灰色に見えます。

この積雲がくっついたりして大きく成長すると「雄大積雲(ゆうだいせきうん)」となり、積乱雲にそっくりになってきます。その違いや見分け方は後述します!

(写真提供:写真AC)
(写真提供:写真AC)

積乱雲(せきらんうん):にゅうどうぐも

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

高さ:地表~12000m
降水:あり(ひょう、あられも)

もっともよく名前を聞く雲ではないでしょうか。蒸し暑い夏の午後に激しい雨を降らせる、別名“入道雲”です。かみなりぐもとも。

上層、中層、下層のいずれにも分類されず、地表近くから上にむくむくと発達していきます。ときには高度1万mを超えることも。ただし、1万mあたり(対流圏と中間圏の境界)に達すると、まるで天井にぶつかったように平らになって、横に広がります。

積乱雲の内部では上昇流と下降流が入り乱れていて、空気や水滴がこすれ合い、電気がたまっています。これが放電したものが雷です。

上述の「雄大積雲」との違いは、内部に雷が生まれているかどうか。でも、大きさや見た目だけでは分かりにくいですよね。「てっぺんが平たくなっていたら積乱雲」「丸くモコモコしていたら雄大積雲」と覚えていれば大丈夫です。

名前からわかる雲の特徴

10種類の雲を見てきましたが、巻、層、積…。「似たような名前ばかりで覚えられない!」と感じた人も多いのではないでしょうか。

十種雲形は、名前の付け方に法則性があって、
●高さ
●形(=発達のしかた)
●雨を降らせるか

という3つの要素で分類されています。つまり名前を覚えていなくても、見ればざっくりどんな雲かが分かるようになっています。

(表制作:じゃらん)
(表制作:じゃらん)

巻/高が高さ、層/積が形、が雨を降らせることを表します。
例えば、
巻層雲=上層で、大気が安定しているときの雲(Cirrostratus シーロストラタス、記号Cs)
巻積雲=上層で、大気が乱れているときの雲(Cirrocumulus シーロキュムラス、Cc)
高層雲=中層で、大気が安定しているときの雲(Altostratus アルトストラタス、As)
といったような法則になっています。

えーっと…じゃあ層積雲(くもりぐも)は?
層(大気の安定)+積(大気の乱れ)って矛盾してますよね?

層には「低層の雲」という意味もあります。層積雲は、積雲(わたぐも)がたくさん集まって、低いところでひとつの層になり、横に広がっていった雲…と考えると分かりやすいですね。

その積雲が上にもどんどん大きくなり、さらに雷を内包して、雨を降らせる(乱)ところまでいっちゃうと「積乱雲」になる…というわけです。

見れたらラッキー!珍しい雲の種類

十種雲形は、一番大まかな分類。雲の性質や形状から、もっと細かい分類があります。種(15種)、変種(9種)、副変種(11種)などです。

そんな細かい分類の中には、見つけられたらラッキー!な、珍しい雲がたくさんあります。

珍しいとはいっても、気を付けて空を観察していれば、私たちの身近でもわりと見かけることのできる雲ばかりですよ。

レンズ雲

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

まるで巨大なUFOみたい!レンズを横から見たときのように、中央が厚く両端が薄い形状から、レンズ雲と呼ばれています。

この雲が生まれる条件は、上空の強い風。風が山など何かにぶつかることで上昇気流となり、局地的に雲が生まれ、輪郭のはっきりした雲になります。風が作った芸術なので、どんどん姿を変えますが、しばらく同じところに出続けます。

高い山の山頂付近でできることも多く、その場合は「笠雲」と呼ばれています。

穴あき雲

(写真提供:写真AC)
(写真提供:写真AC)

巻積雲(うろこぐも)や高積雲(ひつじぐも)に、ぽっかりと穴があいた雲です。写真のものはまるで足あとみたいですね。

穴の中に、細い尾っぽが風にたなびく「尾流雲(びりゅううん)」が生まれるのが特徴。

この雲ができる原因は、雲の中の、水蒸気から氷への変化。マイナス数十度でも凍らずに空中を漂っていた「過冷却」の小さな水の粒が、目に見えないほどの小さなホコリにぶつかるなど、なんらかのショックで突然凍り始めます。

ひとつが凍り始めると、周りの水蒸気とどんどん合体し、氷晶として成長します(雪の赤ちゃんです)。水蒸気を吸い寄せたぶんだけ、空気が乾燥してぽっかりと穴があき、大きくなった氷晶は、尾流雲になって落下しながら風に流されていくのです。

生まれた雪は地上まで降ってくるの?というと、気温などにもよりますが、ほとんどが空中で蒸発してしまいます。

ケルビン・ヘルムホルツ不安定性による波雲(フルクトゥス)

(写真提供:池田圭一)
(写真提供:池田圭一)

まるで浮世絵に描かれた波みたい!この雲に出会えたら不気味な姿に驚くはず。すごく珍しそうに思えますが、この写真、都内で撮影されたものです。

「ケルビン・ヘルムホルツ不安定性」とは流体力学の用語で、すごーく簡単に言うと、「密度の違う上の層と下の層が動いたときに、一瞬だけ生まれる形」といったものです。

密度の濃い雲と、その上を流れる風が巻き起こす不思議な現象。実はわりとよく見かける現象らしいのですが、形が美しいのはほんの1~2分だけ。見かけたらすかさずスマホでパチリ!

写真のクレジットに「池田圭一」と入っているものは、すべて東京都内で撮影されたもの。気を付けて観察していれば、身近でこれだけの珍しい雲に出会えるのですね!

日本では偏西風の影響で、例えば関西エリアで特定の雲が見られたら、6時間~半日後には同じ雲が関東エリアで見られることも多いのだとか。
雲が見せる不思議な姿は、私たちにとって、もっとも身近な自然現象といえそうです。

【記事監修】池田圭一
理系のフリーランス・ライター/エディター 。天文や宇宙、大気光学、気象、生物、化石鉱物などサイエンスに詳しく、IT分野の執筆も手掛ける。著書多数。
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【参考文献】
池田圭一『図説 空と雲の不思議 きれいな空・すごい雲を科学する』秀和システム、2017年

※この記事は2024年2月21日時点での情報です。休業日や営業時間など掲載情報は変更の可能性があります。
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ミキティ山田  ミキティ山田

旬な話題を求めて、いろいろな場所を取材・撮影する調査員。分厚い牛乳瓶メガネに隠したキュートな眼差しでネタをゲッチュー。得意技は自転車をかついで階段を登ること。ただしメガネのせいでよく転びます。