〈インタビュー前編〉「不適切にもほどがある!」で阿部サダヲ、宮藤官九郎と黄金コンビ再び! 磯山晶プロデューサーに聞くミュージカルや出演者秘話

「不適切にもほどがある!」場面写真(C)TBS
「不適切にもほどがある!」場面写真(C)TBS

現在、TBSで放送中の連続ドラマ「不適切にもほどがある!」。阿部サダヲ演じる昭和のダメおやじ、小川市郎が、1986年から2024年にタイムスリップし、令和では「不適切」なコンプライアンス度外視の発言を炸裂させながら、コンプラで縛られた令和の人々に考えるキッカケを与えていく作品で、脚本を宮藤官九郎が務めている。そんな本作のプロデューサーを務めるのが、同局の磯山晶さん。磯山さんといえば、これまでも阿部&宮藤と組んで「池袋ウエストゲートパーク」(2000年)、「木更津キャッツアイ」(02年)、「タイガー&ドラゴン」(05年)といったヒット作をプロデュース。19年ぶりの「黄金タッグ」は放送前から大きな話題になっていた。物語が後半に差し掛かるなか、磯山さんがインタビューに応じ、気になる舞台裏や、今後の見どころ、印象に残った出演者たちの芝居などについて語った。その模様を前後編の2回に分けて紹介する。

「不適切にもほどがある!」これまでの流れ

妻を亡くし、一人娘のスケバン女子高生、純子(河合優実)と2人で暮らす体育教師の市郎は、仕事帰りに乗ったバスが令和時代の24年にタイムスリップ。そこで訳アリのシングルマザー、犬島渚(仲里依紗)と出会った。ちょうどその頃、令和の社会学者、向坂サカエ(吉田羊)と中学生の息子、キヨシ(坂元愛登)も市郎と入れ替わるように86年にタイムスリップ。キヨシは純子に一目惚れし、サカエとキヨシは成り行きで小川家で同居するようになった。その後、令和にいた市郎は、喫茶店のトイレに貼ってある小泉今日子のデビュー40周年記念ポスターの裏側に発見した穴に入り昭和に帰還。バスとトイレはそれぞれ、昭和と令和をつなぐタイムマシンとタイムトンネルだった。時空を超えて出会った渚のことが気になる市郎は、再び令和へとタイムスリップした。

第5話(2月23日放送)で、渚から呼び出された市郎は、渚の父、犬島ゆずる(古田新太)と面会。渚の母親が、自分の一人娘の純子だと聞かされ市郎は仰天した。ゆずるは人気ディスコで黒服として働いていた若かりし日の自身(錦戸亮)の写真を見せ、純子とのなれそめや、神戸市にある実家の仕立て屋を継いだことを説明。初めてスーツを仕立てることになり、その記念として市郎を神戸に呼んで採寸したが、その次の日に起きた阪神淡路大震災で市郎と純子が犠牲になったことを話した。第6話(1日放送)で、そのことを娘にどう伝えるべきか悩んでいた市郎は、いったん昭和へ戻り、純子をバスに乗せて再び令和へとやってきた。そこで純子は、すでに大人になった自分の娘、渚とゆずると対面。渚は純子に子供は好きか尋ね、「うん、大好き」とほほ笑んだ純子を見るとうれしそうに目を潤ませた。

劇中の随所に登場する懐かしの昭和ワードや、現代とのギャップ感が毎週のようにSNSでも話題になっている「ふてほど」。物語には毎話のように「昔話しちゃダメですか?」といったテーマが設定されており、昭和と令和世代の間にある時代のギャップを、軽妙なミュージカルを挟みながら笑いを交えて描いている。

「阿部サダヲを一番光らせるのは宮藤官九郎脚本」

――第5話を機にドラマの印象が変わり、とくに市郎が泣いても笑っても視聴者の心が動かされることが増えてきた印象ですが、市郎を演じる上で阿部さんにリクエストしたことや、阿部さんとの会話で印象に残っていることをお聞かせください

「阿部さんの主演はずいぶん前から決まっていたのですが、事務所からご本人に通達がいくまでタイムラグがあるので、こちらから『聞きました?』と聞くことはありませんでした。いつだったか(阿部さんから)『お話聞きました。頑張ります!』とLINEが来たので、『意識低い系のおじさんの役です』と伝えたら、自分の笑い顔のスタンプが送られてきたのが印象的でした。すぐに理解されたな、と思いました」

「不適切にもほどがある!」第1話 小川市郎(阿部サダヲ)と娘の純子(河合優実) (C)TBS

――第一報のコメントの中で「阿部サダヲさんという役者を一番光らせるのは、宮藤官九郎脚本だと心から思う」とありましたが、これまでの放送でとくに実感したシーンがあれば教えてください

「とくにこれというのはないのですが、乱暴な言葉を阿部さんがどういうふうに言うのか、(宮藤が)すごく想像した上で書いているんだなと思いました。台本を読むと『ブスゴリラ』といった罵声のさじ加減が、私自身よりも(宮藤と阿部の)2人のほうが分かり合っているなと思って、私は文字面を読むと『こんなことひどいこと言って面白いのかな?』というところが第1話にありましたが、(2人は)あうんの呼吸なんだろうなと。(2019年に放送されたNHK大河ドラマの)『いだてん(〜東京オリムピック噺〜)』のまーちゃん(ダブル主演を務めた阿部が演じた田畑政治)みたいなおじさんが令和で頑張る話にしようと話していましたが、さらに進化させている感じがして、2人の中では暗黙の了解があるんだなと思いながら見ています。

あと、語尾とかすごく細かいことなのですが、阿部さんはこう言うだろうなと想像して書いているなというところがたくさんあって、カギ括弧の中はほぼ変えずにしゃべっているので、シナリオ本が出たらぜひそこを確認してほしいと思います」

――先ほど「ブスゴリラ」といったコメントなどありましたが、ほかに「さすがにこれは不適切じゃないかな」と思ったセリフはありましたか?

「固有名詞がたくさん出てくるので、基本的に宮藤さんは気にしながら書いていると思いますが、『マイナスイメージを生むようなイジリはやめよう』という話はしました。不適切だと思ったセリフはたくさんありすぎて(笑)。第1話で(市郎が野球部に入部したキヨシに)『キンタマついてるのか!』と言いながらノックする場面では、台本上は『カキーン』と書いてあり、バットで打つ音をそのセリフに被せることで聞こえていないという設定になっていましたが、そんなうまい具合にノックはできないですし、(その直後にサカエが、キヨシに対する市郎のパワハラでクレームを入れに学校にやってくる)校長室のシーンになると、それらの(不適切な)セリフを全部言っちゃってました(笑)。その上でサカエさんが全部否定してくれるので、やはりそうやって否定する人がいて成立するように書いてるんだなと思いました」

「不適切にもほどがある!」第1話 生徒たちから「地獄のオガワ」と恐れられている野球部顧問の小川市郎(阿部サダヲ) (C)TBS

――展開が変わる第5話以降の話を作るうえで、宮藤さんとどの程度、物語の展開を決めていたのでしょう。そこはもう宮藤さんにお任せしていたのでしょうか?

「まず、1986年から2024年にタイムスリップする中年のおじさんの話にしようと決めた時に、2024年にそのおじさんは生きているのかどうかという話になり、亡くなっている設定としたうえで、娘(純子)と一緒に亡くなっていることにしようと決めました。結局、現代に行く時点で(市郎が未来の)自分に会うのかというのが問題だったので、最初の段階で2024年には生きていない人の話、というのは決めていました。純子は26歳で若くして死んじゃうけどいいのかなという話はしていて、でもそういうことを最終回にやると重たくなってしまうので、『もう早いうちにやっちゃいましょう』と宮藤さんが言ったので、話し合いをして第5話に入れました」

放送後、SNSでは毎週のように話題に

――毎週のようにSNSで話題になり、ひとつのムーブメントになっていますが、磯山さんに届いている反響をお聞かせください

「オンエア直後から感想をいただいていますので、皆さんに見て頂いているという手応えは感じていますし、宮藤さんも阿部さんもすごくたくさんの感想をもらうと言っていました。また、少しだけ出演されたゲストの方も『今週仕事に行ったらみんなからその話をされた』と言っていましたので、反響ってこういう風に大きくなるんだなという印象です」

――よく職場で(「ふてほど」が)話題になっているといった話を聞きますが、そのような反響を受けての現場の雰囲気やエピソードを教えてください

「役者さんもスタッフさんも自分のプライベートでそういう話題になったとか、久しぶりに親と会話したといったスタッフもいて、現場ではそういうなかで皆さんが集まって話をしてから撮影に入る感じなので、基本的にはとても明るくて、相乗効果と言いますか、注目されているからより面白く頑張ろうと意味でプラスになっている気がします」

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