Jアラートの音はなぜあんなに不快なのか 分析してみた 隅々まで設計された音の秘密(2/2 ページ)
10月4日朝に北朝鮮から弾道ミサイルが発射され、政府がJアラートで警戒を促した。Twitterでは「Jアラートの音怖い」「ドキッとしてしまう」「気持ち悪い」といった反応が見られた。このような警戒音は緊張感などを演出するためかなり作りこまれたデザインになっている。
緊急地震速報・緊急速報メール ハイテンポで急激な音程の変化
地震発生時に携帯電話などから再生される緊急速報メールもかなりびっくりする音だろう。
こちらは200〜1400Hzあたりを一気に駆け上がるように急激に音を変化させている。テンポも緊張時の心拍数に近い速さ。そのうえ「ノコギリ波」という比較的派手な音が出る波形になっている。
聞こえやすく刺激的な音が、かなり緊張している際の心拍数と同程度のテンポで鳴るのが緊急地震速報の警戒音だ。
不快な音ではないはずの避難警報
緊急地震速報と同じくよく聞く警報が津波警報の発令時や避難情報を伝える際に携帯電話などから再生される警戒音だ。
こちらは今までの警戒音とかなり性質が異なる。音は「ソレソシレー」で、不協和音でも何でもない「Gメジャー」のコードだ。数あるコードの中でも特に安定感のある落ち着いた和音といえるだろう。
モーツァルトの「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」冒頭(ソレソレ・ソレソシレー)と完全に同じ音の運びでもあり、警戒する要素が見当たらない。音色もベルなので危険な音ではない。
もちろん、突然大音量で鳴ればびっくりはする。これは落ち着いて避難するように促すための警報だからと言えそうだ。
NHKの緊急地震速報 名作曲家による考えつくされた警戒音
NHKが使っている「緊急地震速報チャイム」は、今回挙げた警戒音の中でもかなり不快感・不安感が強い音だろう。
この音は東京大学名誉教授であり、映画「ゴジラ」の楽曲を手掛けた伊福部昭さんのおいでもある伊福部達さんが作ったものだ。2020年にはグッドデザイン賞も受賞している。
この音は「ソドミシ♭レ#」という和音と半音上の「ソ#ド#ファシミ」という和音を、短時間に駆けあがるように鳴らしたもの。
制作時には(1)危険を知らせ即座に行動したくなる音(2)従来の警報音や家電などの音と似ていないこと(3)全員に聞き取りやすい音であること──が求められた。
和音を整理すると「ドミソ」というかなり安定したCメジャーのコードにシ♭とレ#を加えた形「C7(9#)」といえる。特にミとレ#は不協和音になる。
基礎となるCメジャーは安心感、シ♭とレ#が緊張感を演出して「適度な緊張感」を作っている。そしてそれを半音ずらして繰り返せば完成だ。
このように、各警戒音は人間を不安にする要素や警戒させる要素、逆に不安感を和らげる要素を組み合わせたうえで聞きやすくなるように作られている。「不快だから音を変えてほしい」と思う人もいるかもしれないが、創意工夫を「不快」と切り捨てず、即座に命を守る行動ができるよう活用しよう。
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