【生産する代表的なベアリングを紹介する遠藤社長(右)と中村工場長=名張市蔵持町芝出で】

ジェイテクトプレシジョンベアリング

 三重県名張市蔵持町芝出でベアリングを生産している株式会社ジェイテクトプレシジョンベアリング(本社・大阪府和泉市)は今年4月に従来のダイベア株式会社から社名変更した。ベアリングは機械の中の軸を滑らかに回転させる部品で、「軸受け」とも呼ばれている。

 1971年から操業している名張工場では、自動車用が生産の約8割を占め、他に工作機械や二輪車、産業ロボット用など約2万品種、月産860万個を生産。同社3工場のうち、6割強の生産を担う主力工場だ。

 原材料となる鉄の棒材を切断し、焼き入れ、熱処理までの工程を協力会社で行い、同工場ではミクロン単位での研削工程、外輪と内輪の間にボールを入れる組立工程、更に検査、包装工程を経て出荷している。全自動化の進むラインは2交替制で、朝7時から深夜0時過ぎまで機械は稼働している。

 36年にベアリングを生産する大阪精密工業所として創業し、86年にダイベア株式会社に社名変更。2006年に光洋精工と豊田工機が合併して株式会社ジェイテクトになり、19年に同社はジェイテクトの完全子会社になった。

 同社の従業員は現在688人で、昨年度の年商は293億円。「社名変更を機に、当社で生産する全ての商品のブランド名をジェイテクトに統合し、グループとしての一体感を高め、シナジー効果を出していきたい」と語る同社の遠藤博之社長(60)。

 世界に誇れるモノづくり、「No.1&Only One」を掲げる同社。スマートフォンのレンズを仕上げる工作機械には、ぶれを従来の10分の1に抑える同社の超高性能なベアリングが使われているといい、「生産数量はそれほど多くないニッチな分野だが、世界ナンバーワンの精度を誇るオンリーワン商品」と話す遠藤社長。

「鬼ベアリング」海外でも知名度

 同社執行役員で名張工場長の中村聡さん(56)は「競技用のロードバイクには、当社のセラミック製のベアリングを使うことで極限のスピードに対応する低トルクと漕ぎ出しの軽さを実現している。『鬼ベアリング』として海外でも知られる当社のオンリーワン商品で、私たちはプライドを持って生産している」と胸を張る。

 名張工場には技術者を中心に310人の従業員が所属している。1階玄関のショールームの壁面には国家検定の機械保全技能士やQC(品質管理)検定取得者などの一覧が掲示されている。各自の技術力の向上と品質への意識を高めてもらうのが狙いという。

 「30年には年商400億円を目指す」と話す遠藤社長。最大ユーザーの自動車業界においては、エンジン自動車に加え電気自動車の台頭が著しいが、「電気のモータを静かにスムーズに回転させるためのボールベアリングの需要はますます拡大する見通し。また少子高齢化により生産ラインの自動化、ロボット化は加速され、その設備に使う高性能ベアリングへの期待は大きい。ますます忙しくなるが、働きやすいアットホームな会社を目指したい」と締めくくった。

2023年7月29日付848号14面から

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