ゆでた鍋から直接アツアツのうどんを引っ張って、特製ダレにつけていただく、ひっぱりうどん。冬になると登場回数が増えるんだ。
なにせ楽で、簡単でうまいッ。「料理は面倒で」という人に特におすすめです。
地元のかたにうかがうと、
納豆に醤油を混ぜて、うどんをからめるのが昔ながらのやり方。そこに缶詰のサバの水煮、生卵、ネギなんかを入れるのが今じゃ定番になっているね。納豆は昔だと、それぞれの家でもよく作られていたんだよ。
と、教えてもらいました。
「缶詰×納豆」という手軽さ、うれしいですねえ。山形のひっぱりうどん好き数名に取材して、タレの構成要素をいろいろと教えてもらいました。簡単な作り方を以下にまとめてみましたよ。
ひっぱりうどんのレシピ
<ひっぱりうどん つけダレ (1人分)>
- 納豆 1パック
- サバの水煮 100g
- 生卵 1つ
- 長ネギ 少々
- めんつゆ(3倍希釈タイプ) 大さじ1/2
小鉢に入れたら、あとは全体をよーく混ぜるだけ! めんつゆではなく、納豆の付属ダレをそのまま使ってもOKです。
ポイント
- 納豆はお好みでOKですが、小粒、またはひきわりが麺にからみやすかったです。
- タレは醤油派、めんつゆ派と分かれるようですが、めんつゆのほうが甘みがあって食べやすくなるように思います。または、だし醤油でも。
使われるうどんなんですが、基本は細めの乾麺が使われるよう。稲庭うどんっぽいタイプですね。ただ、ここは厳密じゃなくていいようです。
地元で売られている、ひっぱりうどんの専用麺には「太麺タイプ」もありました。量も含めて、好みでいっちゃいましょう!
納豆とサバ水煮の相性、良いもんだなあ……初めて知りました。クセのあるもの同士がえらく仲良しになる。そしてうま味、まろやかに。
そうそう、「卵は入れない」という人もわりに多かったです。
そのへんはね、もう好みでいいんですよ。基本納豆とサバがあれば! やる人によってさらにカツオ節入れたり、キムチ入れたり、チーズ入れたりと、みんな自由に楽しんでいます。
うちはうどんじゃなく、そうめんでやることもありますよ。
とは地元の方々の声。このフリーな感じ、いかにも“郷土メシ”って感じで好きだなあ。トッピングについては後でまとめますね!
もともとなんで生まれたの?
山形県の中でも、内陸地方でよく食べられているひっぱりうどん。
村山市というところの戸沢地区が発祥の地という説があります。このあたりは炭焼きが盛んだった地。日中は炭釜のそばから基本離れられないため、手間のかからない料理のニーズが高かったようなんですね。そんな中でひっぱりうどんが生まれ、広まっていったと伝わります。
寒さ厳しい東北の冬場、うどんをゆでていちいち盛っちゃいられない。冷めないうちに「鍋のままゆで汁ごと」食卓に置いて、アツアツをすすり合ったのではないか……と想像しました。それにこれ、人数分のどんぶり洗うより楽ですもんね。
こんなアレンジも楽しい
乾麺じゃなく、さらに手軽に冷凍うどんを使ってみました。
具材は紹介したレシピのとおりなんですが、ここではめんつゆじゃなく、納豆の付属のタレで味つけ。よーく混ぜて、うどんをあたためて……
ぶっかけにしてもうまかったです! もはや「ひっぱり」じゃないのですが、手軽に一食すませたいときにピッタリ。我が家で定番化してます。
魚と大豆、どっちのタンパク質もとれるのもいいよなあ。ネギのほか、オクラとかミョウガとか入れてもいいし。うどんをゆでる前に豆苗をサッとゆで、刻んで混ぜてもうまかったです。
あ、そうそう。トッピングなんですが
- 一味
- 七味唐辛子
- たくあんをきざんだの
- のり
- 青のり
- 天かす
- バター
- チーズ
- キムチ
といったところが挙がりました。とろろ、大根おろしなんかもよさそうだ。
サバ水煮缶が売り切れのときは
そして最近、サバ水煮缶は大評判。スーパーなどでえらく品薄ですよね。私も撮影用に探すのけっこう大変だったんです。なので、他の魚缶でも試してみましたよ。おすすめが次に紹介する2つ!
ツナ缶×めんつゆ
地元の方から「ツナ缶でやることも多いよー」と聞き、早速試してみたらサッパリ軽くて、いいもんですな。ゴマを加えてもおいしい。ツナ缶はオイル漬けを軽く油を切って使いました。カロリーを考える人は水煮缶で。
イワシ醤油煮の缶詰
「もともと味つけしてある缶詰ならさらに楽では」という考えもあり、イワシの醤油煮でやったらこれがヒット。実に合います! コクがあってサバよりも食べやすい感じ。お子さんウケも良さそう。
山形のひっぱりうどん、ぜひアレンジも含めて試してみてください。トッピングをいろいろそろえて、鍋感覚で楽しむのもおすすめですよー。
企画・文・撮影:白央篤司(はくおう あつし)
「暮らしと食」、郷土料理やローカルフードがメインテーマのフードライター。CREA WEB、Hot Pepper、サイゾーウーマン、hitotemaなどで連載中。主な著書に『にっぽんのおにぎり』『ジャパめし』『自炊力』『たまごかけご飯だって、立派な自炊です。』など。家では炊事全般と土日の洗濯、猫2匹の世話を担当。