全国タウン情報

政令指定都市とは|ホームメイト

「政令指定都市」とは、政令で指定されている人口50万人以上の都市のこと。政令指定都市以外にも、「指定都市」「政令市」などとも呼ばれます。2022年(令和4年)現在、政令指定都市の数は20。北は札幌市(北海道)から南は熊本市(熊本県)まで存在しています。各政令指定都市は一般の市と異なり、道府県のサービスを独自に行うことが可能。道府県を挟まずにサービスが提供できるため、まちづくりや健康・福祉サービスをスピーディーに行うことができます。
「政令指定都市とは」では、政令指定都市についての基礎知識を掲載しました。全国の政令指定都市の定義・一覧、政令指定都市でできること・メリットなどをご紹介しています。

政令指定都市の定義

政令指定都市のイメージ

政令指定都市は、道府県が大都市へと権限・財源を譲り、スピーディーな行政サービス提供を目指していくという制度。大都市には人口・産業が集中するため、多様なサービス提供が必要です。しかし、一般の市と同様の行政・財政では、住民に十分なサービスが提供できません。そこで「政令指定都市」制度を設け、この問題を解決しているのです。政令指定都市に指定されると道府県と同じ扱いになり、健康や福祉などに関する業務をはじめ、道府県が行っている業務の約8割を行えるようになります。

政令指定都市のメリット

政令指定都市の主なメリットは以下の通りです。

サービスの充実

都道府県から様々な業務や新たな財源が移譲されることで、高度で専門的な行政サービスが提供できます。また特例で認められていることが多く、身近できめ細かな市民サービスの提供が可能です。

例:
児童相談所や精神保健福祉センターの設置、行政区の設置、小中学校職員の任免など
サービスの迅速化

県が行っている業務のうち、市民生活に関連する多くの業務を能率的に施行することが可能。また業務処理を行うために必要な承認・許可なども担当の国務大臣と直接できるため、処理期間が短縮され、行政サービスのスピードアップが図れます。

例:
療養手帳や母子手帳交付までの期間短縮
非常時におけるサービス

政令指定都市と東京都には、大規模災害や事故に対応する「特別高度救助隊」の配備が義務づけられています。除雪、消防、震災といった非常時には、行政区画に関係なく出動。市民の安全な暮らしを守ることに貢献しています。

例:
「特別高度救助隊」の設置や危機管理体制の実施
豊かなまちづくりができる

政令指定都市には、大都市にふさわしい財政上の特例が認められています。軽油引取税交付金や宝くじの収益金などが新たに交付されるだけではなく、地方交付税が一般市に比べて増額。これらの財源を有効に活用することで、市民生活をより充実させることができます。

例:
保健衛生、福祉、河川、道路、下水道、防災対策など地域の事情に合わせたまちづくりが可能、都市計画の決定権限

移譲される具体的な業務内容については、後述の「政令指定都市に移譲される業務」でご紹介します。

政令指定都市の一覧

政令指定都市の一覧は以下の通りです。(全20都市)※2022年(令和4年)現在

フリックによる横スライドで閲覧

2020年(令和2年)の国勢調査をもとに、人口の多い政令指定都市・人口の少ない政令指定都市を3位までランキングにしました。

人口の多い政令指定都市ランキング
横浜市(約378万人)
大阪市(約275万人)
名古屋市(約233万人)
人口の少ない政令指定都市ランキング
静岡市(約69万人)
岡山市(約72万人)
相模原市(約73万人)

また、政令指定都市と似ている都市制度として「中核市」が挙げられますが、中核市は人口20万人以上の都市。政令指定都市に次ぐ規模・能力を持っている都市で、2022年(令和4年)現在指定されているのは、宇都宮市や金沢市などの62市です。政令指定都市ほどではありませんが、中核市も道府県の業務を一部引き受けています。
なお、東京都に政令指定都市はありません。その代わり、23区の「特別区」を設置して東京都と連携しながら、各区がそれぞれ一般の市のように自治を実施。特別区は行政区では設けられない議会が置ける他、特別区と行政区では区長の選出方法が違う、業務の管轄が違うなど、様々な違いがあります。

政令指定都市の歴史

政令指定都市のイメージ

政令指定都市は、1956年(昭和31年)に制度化。最初に政令指定都市に指定された都市は、横浜市・京都市・大阪市・名古屋市・神戸市の5つの市。東京23区と合わせて、「6大都市」と呼ばれていました。1963年(昭和38年)には、北九州市が政令指定都市に認定。当時は「6大都市+北九州市」で、「7大都市」と言われました。ここから、続々と政令指定都市が認められていきます。1972年(昭和47年)に川崎市・札幌市・福岡市、1980年(昭和55年)に広島市、1989年(平成元年)に仙台市、1992年(平成4年)に千葉市が政令指定都市となりました。

政令指定都市に認められるには、「人口50万人以上」が条件ですが、実際には人口100万人になる見込みのある都市か、人口100万人以上を達成している都市が選定されます。しかし、国は1999年(平成11年)より、政府主導のもとで「市町村合併」を推進。2010年(平成22年)3月までに合併した都市を対象に人口の条件は緩和され、70万人程度でも政令指定都市に認められるようになりました。2005~2010年(平成17~22年)、さいたま市や静岡市、堺市、新潟市、浜松市、岡山市、相模原市が政令指定都市となっています。なかでも静岡市と相模原市、岡山市は指定された当時から、人口が70万人程度でした。2012年(平成24年)に熊本市も、人口約73万人で政令指定都市に指定されますが、これも熊本市が対象期間に周辺の町と合併したことが礎となっています。

政令指定都市に移譲される業務

政令指定都市には、都道府県が扱う権限の多くが移譲されています。どのような業務が移譲されているのか、一例をまとめてみました。

業務ジャンル
保健衛生
  • 市の保健所設置
  • 飲食店や旅館、公衆浴場などの営業・経営許可
  • 診療所や助産所の開設許可
  • 指定医療機関の指定
  • 地方衛生研究所の設置
福祉
  • 児童相談所の設置
  • 精神保健活動を指導、サポートする精神保健福祉センターの設置
  • 療育手帳や精神障がい者保健福祉手帳の認定、公布
  • 母子(父子)・寡婦福祉資金の貸付
  • 養護老人ホームの設置認可、監督
行政・選挙
  • 区の設置
  • 区ごとの選挙管理委員会の設置
環境
  • ばい煙発生施設、一般粉じん発生施設設置の届出
まちづくり
  • 一定希望上の公園や緑地、市街地再開発事業などの都市計画決定
  • 市内にある指定区間外の国道及び県道、市道などの道路整備
  • 土木や河川に関する業務
教育
  • 小中学校教職員の任免、給与の決定
  • 県の教職員研修

保険衛生

保険衛生のイメージ

政令指定都市では地域保健法により、「保健所」の設置が義務付けられています。保健所は、健康づくりや健康教育、生活習慣病予防、母子保健にかかわる業務を福祉部門と連携しながら推進することを目的とした施設。ほとんどの政令指定都市が一保健所制であり、本所以外には保健所支所や保健センター、区役所組織として編成された保健福祉担当部署が設置されています。さらに難病法に規定する指定医療機関の指定対象について、都道府県または政令指定都市が指定を行うことが可能。難病対策や精神保健福祉に関する業務も精神保健福祉センターや難病相談支援センターと連携し、役割分担のもと保健所が実施します。

そのほかにも政令指定都市では、診療所や助産所の開設やそれに付随する業務(変更許可、休廃止届、開設許可取消しなど)が都道府県から移譲。業務が一体化されることで、申請者は短期間かつ効率的に業務を行うことができるようになりました。

ただし、病床数や病床種別変更については、都道府県知事から勧告や措置命令、公表の求めがあった場合は従わなくてはなりません。

福祉

福祉のイメージ

政令指定都市では、精神保健福祉法によって「精神保健福祉センター」の設置が義務付けられています。精神保健福祉センターは、精神障がい者のサポートや精神保健向上を図るための施設です。精神医療に関する相談や心の健康相談をはじめ、思春期、アルコール、薬物、認知症といった専門的な相談・指導などが行われます。

療育手帳や精神障がい者保健福祉手帳も市が単独で認定・交付が可能。一般の市のように、市を経由して県が交付する必要がないため、処理時間が短くなり、住民はよりスピーディーに対応を受けることができるのです。

また、政令指定都市が行うことができる保健衛生のうち、もっとも注目したいのは「児童相談所」の設置が義務付けられていること。児童相談所は、児童に関する相談はもちろん、虐待の未然防止や対応など積極的に取り込んでいます。児童相談所を設置していることから、政令指定都市では保育園や小中学校と一括管理ができるようになり、子育てについてスムーズな相談や援助活動が可能。なお、中核市でも設置は可能ですが、人材確保や財源などの点から、義務化には至っていません。

行政・選挙

行政・選挙のイメージ

政令指定都市は「行政区」を設置。各行政区には区役所が設けられていて、市役所よりも身近な区役所で住民登録や国民年金・国民健康保険などの手続き、市民相談などができます。

また、行政区が設けられることで区ごとに選挙区が置かれ、より身近な選挙が可能です。政令指定都市では、知事の関与がなくても市独自で決定できることが数多く存在。そのため、どのような市であるか、どのようなまちづくりをされるのかは、市長の政策に大きく左右されます。自分たちで市長を選ぶことで、地域の特色を活かしたまちづくりを期待できるのです。

環境・まちづくり

環境・まちづくりのイメージ

大都市を運営するには、豊かな財源が必要。そのため、政令指定都市には財政上の特例が認められています。
まず、一般の市にはない「石油ガス譲与税」「宝くじの収益金」「軽油引取税」。これらは国・道府県から交付されます。また、「地方交付税」「地方道路譲与税」をはじめとした税も、一般の市より増額。

政令指定都市では、これらの財源を活かして、指定区間外の国道や都道府県道を整備したり、一定規模以上の公園・緑地、市街地再開発などの都市計画を決定したり、市民にとってより住みやすいまちづくりに取り組んでいます。

教育

教育のイメージ

一般の市にある小中学校と異なり、政令指定都市では小中学校教職員の任免、給与の決定が可能。また2017年(平成29年)から財源が移譲されたことで、より地域に密着した特色ある学校づくりが可能になりました。

まとめ

様々な権限が認められている政令指定都市では、福祉や健康についての手続き・サービスがスムーズかつ迅速に行われるなど、様々なメリットがあります。政令指定都市に引っ越すことになった場合は、「ホームメイト」で賃貸マンション・アパートを検索するのがおすすめ。各政令指定都市のご当地情報も手に入ります。