「市田柿村」の柿すだれを見学する観光客=21日、豊丘村

「市田柿村」の柿すだれを見学する観光客=21日、豊丘村

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見て食べて「柿すだれ観光」 豊丘で「市田柿村」開園

信濃毎日新聞(2016年11月22日)

 下伊那郡豊丘村神稲(くましろ)の柿農家有志が21日、飯田下伊那地方の晩秋の風物詩「柿すだれ」を間近で観賞、収穫できる観光農園「市田柿村」を開園した。定年退職後に本格的に柿栽培に取り組む3人が、観光利用がまだ少ない飯伊地方特産の干し柿「市田柿」を生かそうと企画した。代表を務める田戸儀信さん(66)は「地域活性化につながればいい」と期待を寄せている。

 「市田柿村」は、中央、南アルプスが望める河岸段丘上にある。ビニールハウス(約80平方メートル)を2棟設け、衛生面に配慮して1棟を観賞用、もう1棟を収穫用にした。ハウス内にはそれぞれ数万個の柿の実をつるして干してあり、スタッフが市田柿の由来や作り方などを説明する。収穫用ハウスでは完成品を販売するほか、まだ表面に白い粉がふいていない「半熟」の干し柿を持ち帰れるサービスもある。

 全国的に知名度の高い市田柿だが、ブランド商品としての衛生管理の厳しさや繁忙期で人手を割けないことなどから、観光面での取り組みはあまり進んでいないのが現状だ。発祥の地とされる同郡高森町では柿すだれを見たいとの問い合わせが毎シーズンあるといい、町はホームページで撮影スポットを公開。飯田市では、毎年開く干し柿づくりの体験ツアーが好評だ。ただ、期間中、常時観光客を受け入れるような専門施設はなかったという。

 「市田柿村」の開園も、旅行関係の業者からツアー客の受け入れを打診されたのがきっかけだった。理事を務める宮下広美さん(72)は「自分たちには当たり前のことが都会の人相手には商売になるんだから面白い」と話す。干し柿の観光農園は豊丘村内でも初の試みで、村も施設整備費用の一部を補助。片桐明・村産業建設課長は「観光客が来れば経済波及効果も期待でき、生産地としての地域の知名度も上がる。村としても応援したい」とする。

 開園初日の21日は中京方面から団体客約40人が来園。愛知県豊橋市から仲間4人で訪れた手塚春代さん(52)は「すだれがきれいでびっくり。『半熟』がすごくおいしかった」と満足げだった。

 今季は観光バスの団体客の受け入れが基本で、年末ごろまでに中京圏を中心として3千人ほどの来園を見込んでいる。田戸さんはこの日の団体客の様子に「皆、にこにこして帰った。ばっちりだ」と手応えを感じていた。

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