新型コロナウイルスの感染症法上の分類が「5類」に引き下げられ、日常生活が「コロナ前」に戻り始めた2023年。出版界では京極夏彦(小樽市出身)さんの「百鬼夜行」シリーズ17年ぶりとなる新作長編「鵼(ぬえ)の碑(いしぶみ)」など、「シリーズもの」「続編」に人気が集まりました。また、全国的に書店が減少する中、個性的な品ぞろえの「独立系」と呼ばれる小さな書店が存在感をみせています。旭川市出身のライター永江朗さんの目に、出版界のこの1年はどう映ったのでしょうか。(東京報道 能正明)
■大人向けの本はパッとしなかった?
出版取次大手の日本出版販売(日販)が発表した年間ベストセラー(2022年11月22日~23年11月21日)によると、総合1位は小杉拓也著「小学生がたった1日で19×19までかんぺきに暗算できる本」(ダイヤモンド社、22年12月発行)、2位は鈴木のりたけ著「大ピンチずかん」(小学館、22年2月発行)。いずれも大人も楽しめる内容ですが、子ども向けです。永江さんは「子ども向けの本のマーケットは限られているのに、それでも総合の上位を占めるということは、一般向けの本がパッとしなかった表れ」と指摘します。
総合5位は村上春樹著「街とその不確かな壁」(新潮社、23年4月発行)。長編小説では「騎士団長殺し」(全2巻)以来6年ぶりの作品で、1980年に文芸誌に発表した中編小説が基になっています。上半期(2022年11月22日~23年5月20日)だけならトップでした。
部門別に見ると「単行本フィクション」では5位に東野圭吾さんの「ラプラスの魔女」シリーズ「魔女と過ごした七日間」(KADOKAWA、23年3月発行)、7位に国民的ベストセラーの黒柳徹子著「窓ぎわのトットちゃん」42年ぶり続編「続 窓ぎわのトットちゃん」(講談社、23年10月発行)が入っています。「鵼の碑」は「新書フィクション」でトップでした。シリーズもの、続編に人気が集まったのは「本を買って失敗したくない、リスクを取りたくないという心理が働いていることもあるのではないでしょうか」。...
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