脚本に感じたオーラと念 映画「渇水」主演の生田斗真と企画プロデュース・白石和彌が語る<デジタル発>
水道料金の滞納が続く利用者への水道供給を止める業務を担う公務員と幼い姉妹の出会いを軸に、貧困や格差、育児放棄といった問題を映し出す映画「渇水」が道内でも公開中です。1990年に刊行された河林満(1950~2008年)による同名小説が原作ですが、浮かび上がる社会の実相はとても今日的です。主演は室蘭出身の生田斗真さん。華やかな役柄が多いイメージですが、本作では取り立てて特徴のない地方公務員・岩切を演じました。企画プロデュースは、「孤狼の血」シリーズや「死刑にいたる病」などを送り出してきた旭川出身の映画監督白石和彌さん。2人に本作への思いを聞きました。(文化部 古川有子)
いくた・とうま 1984年生まれ。2歳まで室蘭市で過ごす。11歳でジャニーズ事務所入りし、テレビやドラマなどで俳優として活躍。2010年公開の「人間失格」で映画初出演にして初主演。「僕等がいた 前篇/後篇」(12年)、「土竜の唄」シリーズ(14、16、21年)、「彼らが本気で編むときは、」(17年)、「友罪」(18年)などに出演。
しらいし・かずや 1974年、旭川生まれ。若松孝二監督に師事し、フリーの演出部として行定勲監督や犬童一心監督らの作品に参加。「ロストパラダイス・イン・トーキョー」(2010年)で長編監督デビュー。「凶悪」(13年)で多くの映画賞を受賞し脚光を浴びる。「孤狼の血 LEVEL2」(21年)では日本アカデミー賞で作品賞をはじめ13部門受賞。
映画「渇水」のあらすじ 夏の日照りが続き、市内に給水制限が発令された地方都市。水道局員の岩切は日々、同僚の木田(磯村勇斗)とともに滞納者の家庭を一軒一軒回り、水道の栓を閉める。ある日、2人だけで家に残された幼い姉妹と出会う岩切。父は蒸発したらしく、母(門脇麦)は男のところへ行ったまま帰ってこない。電気とガスはすでに止められ、水道も滞納が続いている。ここでも水を止めるのか、別の道があるのか。岩切はある行動に出る-。高橋正弥監督。1時間40分。札幌シネマフロンティア、イオンシネマ釧路で上映中。シネマアイリス(函館)、シネマ・トーラス(苫小牧)でも上映予定(6月13日現在)。
■“凡人”だからこそ接点持てる
「規則だから」と粛々と水道を止める岩切の目に生気はなく、何も見ていないよう。生田さんは「彼は感情にふたをして、命に関わる水を淡々と止めていく。日々の生活に追われ、妻は子供を連れて実家に行ったまま戻ってこないという状況への恨みや不満もあって、何のために仕事をしているのかわからないというか、思考停止気味になっている」と説明する。「彼は本当に特徴のない“最強の凡人”です。でも、撮影前に高橋監督や白石さんらと岩切のバックボーンについて話し合ったときに、みんながそれぞれ『岩切は自分だ』という部分がありました。凡人だからこそ、見る人はどこかしら彼との接点を持てるんじゃないかなと思います」
岩切のキャスティングについて白石さんは「高橋監督から、目の強い人にお願いしたいという話があった」と振り返る。...
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