<ディープに語ろう 北海道マラソン>人生の道つくった大会 最多3回優勝、五輪銀 エリック・ワイナイナさん(49)

 夏の道都・札幌を走る「北海道マラソン」(北海道新聞社、北海道陸上競技協会などでつくる組織委員会主催)が8月27日に開催されます。ランナーや沿道ボランティアなどゆかりの人たちに、大会の魅力や完走のためのコース攻略、道マラならではの楽しみ方を深く掘り下げて“ディープに”語ってもらいます。随時掲載します。

3回の優勝を振り返るエリック・ワイナイナさん=5月4日、東京都千代田区(平田康人撮影)

 エリック・ワイナイナ 1973年、ケニア出身。93年に来日し、コニカ(現コニカミノルタ)に所属。初マラソンとなった94年の北海道マラソンで初優勝を遂げた。ケニア代表として96年アトランタ五輪銅メダル。97年北海道マラソンで2度目の優勝を果たし、2000年シドニー五輪銀メダルにつなげた。03年には北海道マラソンで3度目の優勝を飾った。49歳。
 北海道はケニアに気候が似ていて、(1993年に)日本に来てからすぐに好きになりました。ケニアは暑いけど、(空気が)からっとしている。だから自分の田舎と似ているなと思って。それで、網走で合宿をしているときに、(コニカの)チームメートが北海道マラソンに出ると聞いて、コニカの監督に「私もちょっと出してくれないかな」ってお願いしました。
 監督からは「1人で40キロ走れたら出してあげる」と言われて。それで走って「どうだった?」と聞いたら「ペースがバラバラですね」と言われましたね。マラソンを走ったことがなくて、5キロずつのペースが私も分からなかったです。でも、やってみないと結果は分からないからと(94年に)一般で出場しました。

1994年大会で初優勝したエリック・ワイナイナさん

 その日は31度ですか。そんなに練習もしていなかったので「もうこんな感じなんだろうな」と受け入れて。ただ、出るんだったら優勝したいとは思っていました。(レースは)20キロ(地点)で(トップ集団から)抜け出せる気持ちだったんですよ。ただ、チームメートの先輩が招待選手で出ていたので、ちょっと遠慮していたんです(笑)。ちょっと引っ張ってあげないといけない気持ちもあって。でも、35キロぐらいで「行けるんじゃないか」と思って1人で前に出ました。
 そのまま(独走で)優勝しましたが、(チームの)先輩たちが後ろにいるので(ゴールで)手を上げると申し訳ないと思って、ゴールした瞬間は腕時計のタイムを止めました。その後にカメラマンとかに「ワイさん、手を上げてよ」と言われて上げました。「勝っちゃった」という感じでしたが、この経験がその後の(96年)アトランタオリンピックの銅メダルにつながったと思っています。

初優勝した1994年大会で、タイムを止めてゴールテープを切ったエリック・ワイナイナさん

 97年の北海道マラソンは、もう北海道が好きで、出るだけでもすごくうれしくて、それが2回目の優勝になったんじゃないかなって思います。(ゴール時は気温34度と)かなり暑かったと思うんですけど、特に支障はありませんでした。その後、(2000年の)シドニーオリンピックで銀メダルを取って、何か北海道マラソンとオリンピックのつながりは良かったです。
 北海道では毎年夏になると、網走や深川で合宿していました。結局、オリンピックも夏(の開催)だから、北海道で練習すればやっぱり強くなれるんじゃないかと思っていました。シドニー(五輪)の前も、ずっと網走で練習していました。やっぱり北海道は広くて、どこでも行けちゃうんですよ。2時間走っても全然飽きないんです。

1997年大会で、2回目の優勝を飾ったエリック・ワイナイナさん

 最後まで競った2003年もよく覚えています。負けてはいけないと思って、(41キロすぎに)スパートをかけましたね。余裕はありました。私が言われていたのは、最後のスピードがあまりなく、ゴール近くになると負けちゃうからと。早めにスパートして良かったなと思いました。最後の盛り上がり、声援もすごくて、(当時は)ゴールが中島公園で気持ち良かったですね。

2003年大会の41キロすぎ、スパートをかけたエリック・ワイナイナさん(藤井泰生撮影)

 3回の優勝は男子で最多ですか。それはうれしいですね。本当に北海道マラソンが大好きで、出て良かった。北海道で応援してくれていた皆さんのこと、今も忘れないです。八雲、深川、網走、釧路…。練習で走っている時に「ワイナイナさん、北海道マラソン頑張って」って。北海道マラソンが一番、私の道をつくってくれたんじゃないかなと思っています。つらい気持ちになったことは1回もなかったです。何か、体の力と気持ちが合って、もう本当に最高だったんです。
 夏のレースは、自分の体調を毎日の練習で合わせていければそんなに難しくないんです。毎日(の練習で)暑いという気持ちでいると、なかなか難しくなります。暑さに合わせていくこと。私は現役の時、朝練の後、フリーの午前中によく(東京の)高尾山に行って走っていました。暑いときでもジャージーを着て、体を慣らして。もちろん、無理しない程度にですが、そういうふうに自分で何かやれば、暑さにも慣れて、練習した自信も生まれるし、体調も合わせていけます。

皇居の周辺を走るエリック・ワイナイナさん=5月4日、東京都千代田区(平田康人撮影)

 今年の北海道マラソンも走る予定です。いま49歳ですが、サッカーのカズ(三浦知良)選手は50代で頑張っています。毎日の練習で、自分も気持ちが負けちゃうことはあるんですが、毎日少しずつやればたぶん大丈夫。ちょっときついから走らない、という日が多くなるとやっぱり駄目になっちゃいます。大会では、市民ランナーに応援の声をかけながら走りたいですね。楽しみです。(聞き手 平田康人)
 大会ホームページはこちら(https://www.hokkaido-marathon.com)から
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