国後島を祖父が語り、父が守り、僕がつなぐ 根室の高3「北方領土の日」東京で訴え

 【根室】3世代にわたって北方領土と向き合う一家が、根室市にいる。国後島出身の久保幸雄さん(87)は8歳で視力を失ったが、記憶に残る故郷の姿を語り伝えてきた。その思いに応えるように、息子の浩昭さん(55)は北方領土に関わる歴史的建築物の保存に奮闘し、根室高3年の孫の歩夢さん(17)は北方領土問題を全国に伝える活動に力を入れる。「北方領土の日」の7日、歩夢さんは東京・国立劇場で開かれる「北方領土返還要求全国大会」で演説し、祖父と父の願いを引き継ぐ決意を訴える。
 「じいちゃんから島の話を聞いたことが、全てのスタートだと思います」。歩夢さんは、こう振り返る。
 祖父の幸雄さんは家族だんらんの場で、目が見えていた幼少期に見た島の風景を思い出し、繰り返し語った。「浜にはアサリ、海にはカレイ。ホッカイシマエビも大量に取れた。それが故郷、国後島南端のケラムイだった」。幸雄さんの話を聞くたびに「いつか北方領土に行ってみたい」という歩夢さんの思いは強くなり、中学3年の時にビザなし交流で択捉島に渡った。
■訪問が原動力
 目の前には、幸雄さんから聞いていた圧倒的な自然が広がっていた。その時の感動と興奮は、歩夢さんが根室高の部活動「北方領土根室研究会」に参加し、全国各地での出前講座や動画制作などによって、若い世代に領土問題を伝えていく原動力になった。
 歩夢さんの父、浩昭さんは30年以上前から、幸雄さんが生まれた国後島のケラムイと根室を終戦直後まで結んでいた海底電信線の中継施設「陸揚(りくあげ)庫」の保存活動に力を入れてきた。陸揚庫は一昨年、北方領土関係の建築物で初めて国の登録有形文化財になった。
 浩昭さんは「電信線が父の故郷につながっていたと知ったことが、保存活動のきっかけだった。おやじから島の豊かさを聞いていたから、そう思ったのだろう」と語る。浩昭さんは幼いころ、北海道地図の国後島の位置に大きく「宝島」と書いたことを今も覚えている。父から子へ、子から孫へ。浩昭さんが保存に取り組む姿も、歩夢さんの高校での活動を後押しした。...

この記事の続きをお読みいただくには、購読申し込み、
または無料会員登録(道新ID取得)が必要です。

残り:360文字

元島民3世、ウクライナ製カメラで残す「北方領土の記憶」 3日から札幌で写真展
元島民3世、ウクライナ製カメラで残す「北方領土の記憶」 3日から札幌で写真展

関連記事

択捉島の記憶、アニメ風動画に 千島連盟根室支部が7日公開 主人公・長谷川さん「戻りたい」
択捉島の記憶、アニメ風動画に 千島連盟根室支部が7日公開 主人公・長谷川さん「戻りたい」
ロシアに親しみ「感じる」最低5%、日ロ関係悪化影響か 内閣府調査
自転車で羅臼~納沙布岬走破 根室の高校生が動画で領土啓発 2月7日公開
自転車で羅臼~納沙布岬走破 根室の高校生が動画で領土啓発 2月7日公開
領土問題「忘れないで」倶知安で交渉経過パネル展
領土問題「忘れないで」倶知安で交渉経過パネル展

トップニュース

年金受給開始時期は慎重に 繰り上げは60歳から可能、減額は一生涯 繰り下げで最大84%増でも、税金増えるかも
年金受給開始時期は慎重に 繰り上げは60歳から可能、減額は一生涯 繰り下げで最大84%増でも、税金増えるかも
 公的年金を受給できる年齢は原則65歳から。だが、60~64歳で受給する「繰り上げ」と、66歳以降...
白糠町長に棚野孝夫氏 無投票8選 道内最多選
根室市新庁舎が開庁 「未来語る拠点」門出祝う ホールに大型画面、Wi-Fiも
根室市新庁舎が開庁 「未来語る拠点」門出祝う ホールに大型画面、Wi-Fiも
福間が6連覇に王手か、加藤がタイか 9日、札幌で女流王位戦第2局
福間が6連覇に王手か、加藤がタイか 9日、札幌で女流王位戦第2局
北海道・湧別沖のパラグライダー事故 男性の死因は溺死
北海道・湧別沖のパラグライダー事故 男性の死因は溺死
阿寒湖のボート沈没、2人の死因は溺死 強風が原因か
撤去の朝鮮人追悼碑を再現 拡張現実技術のアプリ開発
撤去の朝鮮人追悼碑を再現 拡張現実技術のアプリ開発